stpl 紫赤 様
誤字脱字注意
日本語おかしい
血の気が引くほど静かな夜だった。
カーテンの隙間から入る街灯の光が、机の上の乱雑さをぼんやり照らしている。僕は袖を引き下ろし、手首を隠す。もう癖みたいなものだ。やめたいのに、心が追いつかない。
「……っ」
浅い呼吸。指先が震える。
その瞬間――
「ねぇ」
ドアが開いた。ノックもなく、勢いよく。
「え……?」
振り向いた先に立っていたのは、こったんだった。
背が高くて、整った顔立ち。いつも落ち着いていて、声は低くて優しいのに、どこか色気がある人。
「何してた」
短い言葉なのに、逃げ場を塞がれる。
「べ、別に……」
誤魔化そうとしたけど、視線が合った瞬間、全部見抜かれた気がした。
彼はため息をついて、ゆっくり近づいてくる。
「……袖、上げろ」
「やだ」
反射的に拒否した僕の手首を、彼は強くも乱暴でもなく、ただ確かに掴んだ。
「無理にしない。でも、隠すな」
袖の中の痕を見て、彼は眉をひそめた。怒りじゃない。悲しそうな顔。
「一人で抱えるなって、何度言わせる」
「……迷惑、かけたくない」
「馬鹿」
低くて、でも優しい声。
次の瞬間、抱きしめられた。
「こえくんが傷つくのが、俺は一番嫌だ」
胸に顔を埋めると、彼の体温が伝わってきて、張り詰めていた何かが崩れた。
「……怖かった」
ぽつりと零した言葉を、彼は聞き逃さなかった。
「もう大丈夫。俺がいる」
大きな手が、背中を撫でる。ゆっくり、落ち着かせるみたいに。
その手つきが、だんだんと意味を帯びていく。
「……触っていい?」
耳元で囁かれて、心臓が跳ねた。
「だ、だめって言ったら……?」
「やめる」
即答。
だから、僕は小さく頷いた。
彼の指が、髪に触れて、頬をなぞる。キスは深くない。確かめるみたいに、何度も。
「可愛い顔、するな」
「……恥ずかしい」
囁きと、呼吸と、熱。
服の上からでも分かるくらい、彼の存在はえっちで、優しい。
全部が「大丈夫だ」って言ってくれている気がして、僕は彼に縋った。
*
しばらくして、落ち着いたあと。
ベッドの上で、僕は彼の胸に顔を埋めていた。
「……後悔、してない?」
「してない」
即答されて、少し安心する。
「こえくんが自分を傷つけるくらいなら、俺に頼れ」
頭を撫でられて、目が熱くなる。
「……うん」
「約束な」
指切りみたいに、小指を絡められた。
彼の体温は、まだ残っている。
さっきまでの衝動は、少し遠くなっていた。
全部が解決したわけじゃない。
でも、一人じゃない。
それだけで、今夜は――眠れそうだった。






