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3 - 第3話

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170

2026年01月20日

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stpl 紫赤 様

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血の気が引くほど静かな夜だった。

カーテンの隙間から入る街灯の光が、机の上の乱雑さをぼんやり照らしている。僕は袖を引き下ろし、手首を隠す。もう癖みたいなものだ。やめたいのに、心が追いつかない。

「……っ」

浅い呼吸。指先が震える。

その瞬間――

「ねぇ」

ドアが開いた。ノックもなく、勢いよく。

「え……?」

振り向いた先に立っていたのは、こったんだった。

背が高くて、整った顔立ち。いつも落ち着いていて、声は低くて優しいのに、どこか色気がある人。

「何してた」

短い言葉なのに、逃げ場を塞がれる。

「べ、別に……」

誤魔化そうとしたけど、視線が合った瞬間、全部見抜かれた気がした。

彼はため息をついて、ゆっくり近づいてくる。

「……袖、上げろ」

「やだ」

反射的に拒否した僕の手首を、彼は強くも乱暴でもなく、ただ確かに掴んだ。

「無理にしない。でも、隠すな」

袖の中の痕を見て、彼は眉をひそめた。怒りじゃない。悲しそうな顔。

「一人で抱えるなって、何度言わせる」

「……迷惑、かけたくない」

「馬鹿」

低くて、でも優しい声。

次の瞬間、抱きしめられた。

「こえくんが傷つくのが、俺は一番嫌だ」

胸に顔を埋めると、彼の体温が伝わってきて、張り詰めていた何かが崩れた。

「……怖かった」

ぽつりと零した言葉を、彼は聞き逃さなかった。

「もう大丈夫。俺がいる」

大きな手が、背中を撫でる。ゆっくり、落ち着かせるみたいに。

その手つきが、だんだんと意味を帯びていく。

「……触っていい?」

耳元で囁かれて、心臓が跳ねた。

「だ、だめって言ったら……?」

「やめる」

即答。

だから、僕は小さく頷いた。

彼の指が、髪に触れて、頬をなぞる。キスは深くない。確かめるみたいに、何度も。

「可愛い顔、するな」

「……恥ずかしい」

囁きと、呼吸と、熱。

服の上からでも分かるくらい、彼の存在はえっちで、優しい。

全部が「大丈夫だ」って言ってくれている気がして、僕は彼に縋った。

しばらくして、落ち着いたあと。

ベッドの上で、僕は彼の胸に顔を埋めていた。

「……後悔、してない?」

「してない」

即答されて、少し安心する。

「こえくんが自分を傷つけるくらいなら、俺に頼れ」

頭を撫でられて、目が熱くなる。

「……うん」

「約束な」

指切りみたいに、小指を絡められた。

彼の体温は、まだ残っている。

さっきまでの衝動は、少し遠くなっていた。

全部が解決したわけじゃない。

でも、一人じゃない。

それだけで、今夜は――眠れそうだった。

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