コメント
1件
これは俺がバーで働いてた時の話。
店長の顔が半分だけ笑ってる。恐らく顔面麻痺というやつだ。センシティブな事だから、気にはなっていたけど聞くに聞けなかった。周りのスタッフも聞いた事は無かったらしい。
そんなある日。閉店後にスタッフ達で飲んでから帰ろうとなった。
勿論、その場には店長もいて、俺はついに顔について触れたのだ。
店長はお酒が結構入ってて、みんなを怖がらせちゃうから話したくなかったけどと前置きし、話してくれた。
店長が高校生の時に、その事件は起きた。昼間のバイトから帰る道中。彼女と笑いながら電話をしていたそうだ。
すると、目の前に何かが落ちてきた。
それはグシャっと鈍い音を出すと同時に、液体が顔半分にかかったという。
飛び降り自殺の落下地点に遭遇したのだ。
あまりのショックな出来事に、笑いながら電話をしてた、その時の笑顔が、返り血を浴びた顔半分だけ、顔面麻痺して残ったという。
__怖すぎる。あまりの恐ろしい話に場は凍りつき、お酒でテンションが上がってる店長を尻目に女子達は早々に帰って行った。
残ってる俺を含めた、数名の野郎共ですら、言葉数が減っていた。
「ありゃあ、しらけちゃったなぁ。嘘なんだけどなぁ。」
いや、嘘かーーい!
なんだか、ホッとした。
でも、次の言葉でまた凍りついた。
「うん、怖がらせないように、話改変したー」
え?
「おれ、当時彼女いなくて、電話なんかしてないんだよね」
「飛び降りてきた人、女の人なんだけどさ。地面と衝突する寸前、目があったの。昼間だったし、顔もハッキリ分かってさ。うん。笑ってたんだよねー、ニッコリさ。
その時の女の笑顔が、返り血を浴びた顔半分にこびり付いて取れないんだよ。
血はとれても、顔は戻らないんだよ。」
そう言って笑った、店長の顔半分の笑顔は、確かに別人の笑顔だった。