明那side
保健室
ふわっちを保健室に運んだ。
ふわっち。眠ってる
体育倉庫で、ふわっち…今までにないくらい怯えてた…
それもそうだ。だってよりにもよってトラウマの場所なんだから
そんな場所で無理やり女子に迫られて
苦しくなるに決まってる。
もっと俺が早く駆けつけられていれば
ふわっちは苦しい思いをしなくても良かったのに
なんて今更どうしようもない考えが渦巻く
後悔したって過去は変わらない
俺は気持ちを落ち着かせるため保健室を出た
ガラガラ
すると
「ねぇ!三枝くん!あれってほんとなの?!」
「そうそれ!私も気になってた!」
「おしえて!三枝くん!」
いきなり数人の女子に囲まれた
なんの話だ?あれ?教えて?
俺が頭にはてなを浮かべていると
女の子の一人が口を開いた
「ほら!あれだよ!不破くんの恐怖症の話!」
え
なんでそれしって、
「不破くんが女性恐怖症ってほんと?」
『 …それ、誰から聞いたの…?』
「え、○○ちゃんだけど…」
○○ちゃん…?
…!その子は
体育館倉庫でふわっちに告白をした、
ふわっちにまたがっていたあの女子だ
「で、ほんとなのー?気になるー!」
「教えて!教えてー!」
『 …なんでそれを俺に聞くの?』
どうしてピンポイントで俺に聞いてくるんだ?
「え?だって、
このこと広めてるのって三枝くんでしょ?」
『 …は?』
俺は気がついたら走っていた
噂を広めている張本人の元へ
ふわっちの噂を広めないで欲しい。
俺に罪を被さないで欲しい。
その願いでただがむしゃらに走った
、みつけた
『 はぁ、はぁ』
「どうしたの?三枝くん、そんなに息切らして」
『 とぼけないで』
「なんのこと〜?」
『 噂広めてるの君だろ、』
「え〜私知らな〜い」
なにをしらばっくれてるんだ
『 人の秘密をバラすなんて、最低だよ』
「え〜それ君が言う?w」
『 …は?』
「だって教えてくれたのはそっちじゃーん!」
なに?俺がいつ…
あ
そうだ、あの時
体育倉庫での事件の時…
“離れろ!ふわっちは女性が怖いんだ!”
俺は…
俺はこの子に”言った”
ふわっちの恐怖症のことを
確かにこの口で”言ってしまった”
彼があんなに努力して、苦しみながら
隠していた秘密を
俺は軽々しく口にした
してしまったんだ。
『 はっ…!』
思わず口を押さえる
今まで言ったことを忘れていたくらい、俺はふわっちの秘密を軽く考えてしまっていたのかもしれない
感情が昂った時に思わず言ってしまった
ふわっちを守るためだと、かこつけて…
その結果俺はふわっちの努力を壊したんだ
今になって自覚した
「ね?三枝くんから教えてもらったってこと
嘘じゃなかったでしょ?」
『 そ、れは』
「それにさー私が仮に噂を広めてたとして、
それって私に勝手に秘密をバラした三枝くんと
罪の重さは変わらなくない?」
「三枝くんに、私を責める権利あるの?w」
彼女を責める権利…
俺には…ない?、
そうだ。俺だって同じじゃないか
勝手にバラして、無意識にふわっちを傷つけた
でも、でも、
「それにぃ、三枝くんが私に言わなければ、この噂もまわってなかったかもねぇ〜?w」
「不破くんこの噂で苦しんでたな〜可哀想〜」
でも、俺はただ、ふわっちの名誉を守りたくて、
俺はふわっちの…ために、
「共犯だね!不破くんを傷つけた仲間として!」
俺は…!
ふわっちを傷つけたんだ。
帰り道
ふわっちと二人の帰り道
女の子との会話があってから
罪悪感でふわっちの方を見れない
そのせいかあまり会話が弾まず沈黙の時間が続く
謝らなきゃ
一人とはいえ他人に秘密をバラしたこと
言わなきゃ
俺の口からバラしてしまったこと
心の中ではそう思っていてもうまく言葉には出ない
だって、正直に伝えたら
ふわっちに嫌われる
嫌だ。そんなの嫌だ
俺はふわっちが全てで
ふわっちさえいればそれでいいのに…
嫌われたら何もかも終わりだ
しばらくそんなことを考えていると
ふわっちから声をかけてきた
[明那…あの、さ]
辿々しく語る姿に嫌な予感がする
[お、俺の噂のことなんだけどさ、]
まさか。そんな、
[明那…誰かに言ったりした…?]
『 っ、』
思わず顔を歪めてしまう
そんな俺の表情を見たふわっちは
とても悲しそうな顔をしていた
[え、?]
[違うよね?]
『 …』
ごめん。ごめん、
[ねぇ、明那?]
『 ごめん。』
もう取り返しがつかないかもしれない謝罪を
心の中で何度も繰り返す
『 でも、これは…!』
君を守るためだったんだ、君の名誉のために、
決して悪意を持ってやったことじゃないんだ
パシッ
伸ばした手をふわっちに振り払われる
あぁ、そうか
そんなこと彼には関係ない
結局ただの自己満で
バラしたことには変わりない。
[理解者だって、思ってたのに…]
それでも、俺は
君の1番の理解者であろうとしてたんだよ
ねぇ、ふわっち
俺は君が1番なんだ
ふわっちは走ってその場を離れていってしまった
『 は…はは、』
俺はその場にしゃがみ込む
今まで共にしてきた時間の中で
初めてされた”拒絶”
『 ご、めん。』
うまく音の出ない声が
涙と一緒に地面に落ちた
コメント
4件
毎回思うんですけどわややさんお話作るの上手すぎです!!ふわっちも明那も両方苦しんでる感じが凄く刺さります😭
捉え方の問題だよな、?ストーリー性がありすぎる