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第四十七章
裏切りの果て
―禍の鳥居―
「あら? 神官さま。お久しぶりですわね」
「赫夜さま。お元気そうで何よりです」
にこやかに微笑み、一礼する羅刹。
その穏やかな表情からは、何を考えているのかまるで読み取れず、不気味さだけが漂っていた。
「まさか、こちら側の人間だったなんて……気づきませんでしたわ」
「敵を欺くには、まず味方から――と申しますから。では、失礼します」
「……仲間とやらじゃなかったのか?」
刀骨が鋭い視線を向ける。
「僕の全ては邪神さまのものです。仲間なんて、最初からいませんよ」
そう言い残し、羅刹は静かに一礼すると、その場を後にした。
「ちっ……気に食わねぇ野郎だ……」
遠ざかる背中を睨みつけながら、刀骨は不快そうに眉をひそめる。
「そう……僕には邪神さまだけ……あの時から……」
羅刹は胸元をぎゅっと握りしめ、小さく深呼吸をした。
胸の奥に芽生えてしまった、新たな感情。
それを認めまいとするように、静かに心の奥へ押し込めるのだった。
◇ ◇ ◇
その頃――。
詞葉の傷は決して浅くはなかった。
それでも本人が「大丈夫です」と言い張ったこともあり、一行は先へ進むことにした。
「ねぇ、蒼紫。こっちで合ってる?」
煉華が振り返りながら問いかける。
「ええ……あの人が残していった荷物の中にあった地図によれば、この道で間違いないはずよ」
蒼紫は地図へ視線を落としながら静かに答えた。
木々が生い茂る細い山道を、四人は慎重に歩いていく。
辺りは不気味なほど静まり返り、鳥のさえずりすら聞こえない。
「なんか……嫌な静けさね」
琥珀が辺りを見回しながら呟く。
「気を抜かないでください。いつ魔獣が現れてもおかしくありません」
詞葉は小さく深呼吸しながら錫杖を握り直した。
「無理、しないでね?」
琥珀が小さく声を掛ける。
「ありがとうございます。でも、まだ戦えます」
その言葉に三人は何も返さなかった。
無理をしていることくらい、誰の目にも明らかだったからだ。
沈黙のまま歩き続ける四人。
やがて木々の切れ間から、朽ちかけた大きな鳥居が姿を現した。
「……神社?」
煉華が思わず足を止める。
長い年月を経た鳥居には無数のひびが入り、境内には黒い瘴気がゆらゆらと漂っていた。
「地図だと……ここを抜ければ目的地のはずよ」
蒼紫の言葉に、一同は静かに顔を見合わせる。
誰も口にはしなかった。
だが、この先に待つものが決して穏やかではないことだけは、全員が感じ取っていた。
コメント
1件
羅刹の裏切り、胸が痛いです……「僕には邪神さまだけ」って言葉の裏に隠れた揺らぎ、すごく気になります。詞葉が無理してるのも読んでて切なくなる。朽ちた鳥居と黒い瘴気の描写が重くて、この先の展開が怖いけど気になる……! 続き、ちゃんと受け取りますね🌙