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「あの、驚かないで聞いてほしいんですけど……」
「うん」
「……」
「電話してます。」
「うわぁぁぁあ!」
「えええ!?」
「驚かないでって言ったじゃないですか……」
「いや無理だよ、それ恋人でやるやつ……」
「友達でもやるよ」
「もう露骨過ぎて……オレに言ってくれても……」
「わたしに言ってくれても……」
「ボクに言ってくれても……」
「オレ盗聴器仕掛けて聞いてるんですよ。他愛もない話ばっかだけど、それが妙にリアリティあって、もう……」
「え、弟子くん探偵向いてるよ」
「ストーカーでしょ」
「あ、オレの知る限り毎日ですよ、毎日。あ、別に四六時中聞いてるわけではなくて、電話の時だけです。オレは百合に興味あるだけで姉には興味ないんで」
「どうなってるんだろうこの世界は」
「流石に付き合ってる、よね……」
「これで付き合ってないとか嘘だろ。エイプリルフールにしか付けないくらい分かりやすい嘘だわ」
「絵名、どうして教えてくれないんだろう……」
「そういえば絵名のアカウントちょっと荒れてたよね。まふゆが恋人なんじゃないかって」
「ははその通りだよ。敗北者め」
「電話までしてるんだよ、うちのえななん」
「あのさぁ……」
「もう誰も踏み込めない領域にいますよね」
「あ、恋人と言えば、ポッキーゲームしてたよ」
「Pokky game?」
「弟くん、理解出来なさすぎて英語が流暢になっちゃったじゃん」
「Yes,pokky.」
「Wow…」
「あれは正直言って、ボクもグッと来ちゃったよ」
「やってる最中も良かったけど、終わった後の空気感も初々しくて好きだったな」
「ちょっと待って下さい。動画ないんですか?」
「それどころじゃなかったんだよ。ポッキーゲームを私達の前でしてくれると思う? 付き合ってることを隠している二人が、私達の前で……」
「つまりボク達は隠れて覗いてたのさ。あと、普通にポッキーゲームしてるところ撮るのはマナー的に駄目だと思った」
「なるほど、確かに、二人だけの思い出を拡散しちゃ駄目か……。あ、そうだ、二人の関係が家族に認められましたよ」
「まふえなが遂に家族公認に……」
「え、まさか漫画置くとか言ってたやつじゃないよね。絵名が付き合ったって話してたことを盗み聞きしたとかだよね?」
「いや、漫画置いたら、誰の漫画だって家族会議が始まって。色々話し合ってたら、まふゆさんならいいよみたいな流れになって、実質というか実際家族に結婚が認められたような状態に。ついでに父親も同じ様な趣味持ってたことが発覚した」
「同じ趣味って……」
「ついでのように語ってるけど、それめちゃくちゃ凄くない?」
「まあ本棚一杯の百合漫画見せられたときは流石に引いたけどな、あと漫画誰が読んでたかカメラ仕掛けて確認してたのも」
「お父さん……」
「弟くん血を引き継ぎすぎでしょ。なんだっけ、盗聴器? 姉の部屋に?」
「そんなのはどうでもいいだろ。付き合ってることが大切なんだよ」
「会話内容聞けそう?」
「ああ駄目だ、目的のためには手段を選ばないタイプだ。ボクが止めないと……」
「いや本当に他愛なくて。まるで盗聴器が仕掛けられてるの気づいてるくらいに普通の会話っすよ。好きだよも愛してるよもない。ここまでして付き合ってないなんてないと思うんですけど……まさか……ね」
「会うと四六時中手を繋いでるし」
「注文も同じやつ」
「あ、なら大丈夫だ。付き合ってますね」
「でも好きだよも愛してるよもないんだ。ちょっと聞いてみたいのにな」
「まあ恋人だからと言って、ずっと愛を囁いてる訳でもないしね、それくらいの距離感が丁度いいかもね」
「へえ、まるで夫婦だな」
「わたし達の知らないところで結婚までしてたのかぁ」
「左手の薬指に指輪してるまふゆと絵名……?」
「うグッ」
「はっ……!」
「ちょっと、周りの人に変な目で見られるから机に倒れ込まないで」
「なあ、泣いていいか……」
「結婚指輪、エモいね……」
「あれね、ふとした瞬間にこう左手の指輪をそっと撫でるんだよね。こう、優しい表情で」
「あああ……っ!」
「そんな、そんな瞬間が生まれた暁には、わたし達はどうなってしまうのだろう」
「あはは、おもしろーい。周りの人に不審がられてるから少ししたら店出ようね」