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化粧をしたら、まふゆの服も選んであげたいと思った。だからこうして休日にまふゆを誘い、ショッピングモールに来ているのだが……。
「うわ、本当に何でも似合うわね、腹立つ。うーん、これとこれと……これ。ちょっと着てきてよ」
「多すぎ。迷惑だよ」
「は、服二着とズボンだからセーフセーフ。ほらちょっと着てみてよ」
「今日もう違う店合わせて五着も試着してるよ。結局あれも買ってないし」
「ちーがーいーまーすー。全部見て、後からどれが良いか決めるの! お金限られてるでしょ。一番良いやつ選びたいじゃん。あ、この服可愛いし私も着たいなぁ。お揃いにしちゃう〜?」
「うん、それでいいからもう買おう」
「面倒くさがってるでしょ」
ファッションに無頓着なのは十分に理解していたけど、スタイルも顔もいいんだから、もう少し気遣ってほしい。
全部似合ってたし、どれも買っていきたいくらいだけど、まふゆのお小遣いを沢山使ってお母さんとやらにバレたらゾッとするので、できるだけ最小限に抑えていきたいところ。
「じゃあこれ着たらもう着ないから」
「え、そういうこと言われるとちょっと待って、あと二、三店舗見て回りたいから……」
「どの服も似たようなものじゃない?」
「それちょっと失礼だから、そういうことあんまり言わないでよ」
今着させるか、迷う。私は手に持っていた服の一つを眺める。ニットの服が最近欲しかったのだ。黒色で少し大人っぽいデザイン。まふゆに着させるのもいいけど、買うかどうか、二つの意味で迷ってしまう。
「絵名、それ欲しいの?」
「迷い中」
「どうせ全部同じだし、私はこの服でいいよ」
「え、ならこれ買うのやめとこうかな」
「どうして?」
「お揃いでいいの?」
「嫌なの?」
服を一度広げて、まふゆの体に合わせてみる。うん、似合う。
次は自分の体に合わせてみる。まふゆに頷いて「似合う」と言った。迷う。
「じゃあそのデニムのズボンも買ってくるから」
「え、試着は!?」
「どうせ絵名は私が色んな服を着てるところを見たいだけでしょ。次遊ぶ時に着ていくから、ほら買いに行くよ」
「はーい……」
「あと、ここに新しくパンケーキ屋さんが出来たらしいね。行く?」
「そうなの!?」
「なんだっけ、開店早々秋の味覚フェアとかやってたけど、行く?」
「行く!」
そんな店があったとは、確認不足だった。
もしかして、調べてくれていたり。予習が染み付いているのか、それとも──
考えかけて、すぐにやめた。私は、何を期待しているのだろうか。