エリアの奥に進むと、ひときわ高級感を醸し出す立派なホテルが目に飛び込んでくる。
私達が結婚式を挙げるグレースホテルだ。
タイのグレースホテルは最近誕生したらしく、アジアのリゾート地の雰囲気を壊さないよう、白を基調に細部までこだわったとても美しい外観に仕上げられていた。
日本のグレースホテルもかなりゴージャスな感じだけど、こちらもまた違った雰囲気でとても素敵だ。
水の上に張り出すように併設されたチャペルも、全面ガラス張りで、海を見渡しながらのロマンチックな結婚式を演出する造りになっている。
「私、ここで結婚式を挙げるんだ……」
白で統一された清楚なイメージのチャペル。
パンフレットじゃなく、実際目にしても、何だかまだ実感が沸かない。
もちろん、ちゃんとわかってるんだけど、タイに来てから見る物全てがあまりに素敵過ぎて、まるで夢の中にいるみたいだった。
私達は先にチェックインを済ませ、グレースホテルのスイートルームで荷物をほどいた。
「雪都、疲れた? お腹空いてない?」
「ううん、大丈夫。ママも大丈夫?」
「ありがとう、大丈夫だよ。後で美味しいもの食べようね」
雪都の優しさにホッとする。
とにかく、みんな体調を崩さずにここまで来れて良かった。
「少し休んだら下に降りてみんなを迎えよう。雪都のお友達も来るし、楽しみだな」
「パパ本当? わ~い」
明日の式に備え、すでに前日である今日から、九条家、一堂家、そして友人が数名、有難いことに弥生と理久先生まで集まってくれる予定になっていた。
来てくれた人から順番にご挨拶をするため、少し休憩してから、私達は下のロビーに降りた。
まず最初に着いたのは……
「彩葉先生、おめでとうございます。こんな素敵な場所にお招き頂いて嬉しいです」
「彩葉、おめでとう! 会えて嬉しいよ~」
理久先生と弥生。
「2人とも来てくれてありがとう。遠いところまでわざわざごめんね」
「そんなこと気にしないでよ。こちらこそタイに来れただけでも嬉しいのに、グレースホテルに泊まれるなんて幸せ過ぎるんだけど~本当に海が綺麗~」
ロビーの大きなガラス窓から見える景色を見渡しながら、弥生が可愛く言った。
とっても元気な明るい笑顔、本当に嬉しいよ。
「理久先生ったらね。まるで自分の結婚式みたいに緊張しちゃって、笑うよね~」
「や、止めて下さいよ。ズルいです、弥生先生だって、どうしよう緊張する~! って言ってましたよね?」
「あ~それ言う? 理久先生の方がずっとソワソワしてたくせに」
2人で言い合う姿、久しぶりだな。
なんだか懐かしくて、見ていて自然に笑顔になる。
2人と、こんなやり取りができるようになって……すごくホッとした。
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