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篠原愛紀
#独占欲
驚いた様子の彼女の瞳。
俺は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに逃げ場を断つように想いをぶつけた。
「……俺、ずっと主任を追いかけ続けたいっす。隣のチームに行っても、その先、どこへ行っても……」
冷たい夜風が、酒と高揚感で火照った顔を突き刺すように冷やしていった。
「……部下としてじゃなくて、一人の男として、いつか隣に立つ資格をください!」
「…………」
沈黙が降りる。 主任は、すぐには答えなかった。
ただ、夜風に揺れる髪を指先で耳にかけ、驚きとも、悲しみともつかない表情で俺を見つめていた。
彼女が顔を伏せた一瞬、彼女の中の何かが確かに揺らいだ気がした。
完璧な上司の顔の裏側に潜む、一人の女性としての「戸惑い」が露わになった気がした。俺は、その揺らぎに、自分でも気づかないうちに希望を抱いてしまった。
しかし。 彼女が再び顔を上げ、ゆっくりと口を開いたとき、その声は残酷なほど穏やかだった。
「……王子谷。ごめんなさい。私の人生、今は仕事と、子供のことで……100番目まで、もう席が埋まっているのよ」
「……101番目も、無理ってことっすか? 今の俺じゃ、まだ……っ」
俺は縋り付くように言った。 けれど主任は、残酷なほど優しい微笑みを浮かべて、静かに首を振った。
「……違うのよ。101番目も、空いていないわ。最初から誰の席もないのよ」
俺の言葉を、彼女は柔らかな拒絶で、完璧に遮った。どんなに数字を上げても、その聖域に一歩も踏み込むことはできないのだと、俺は即座に理解した。