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今日も、教室はざわついていた。
あまが風邪で休んで、三日目。
……いや、本当は違う。
あれは、僕を守るためにあまが魔力を使いすぎたせいだ。
あの日、いつものように陰口が聞こえてきて、
背中を押され、床にノートが散らばった。
それでも僕は何も言わなかった。
慣れた、と思っていた。
でも――あまは違った。
「やめろ!」
今までで一番強い声だった。
普段は穏やかで、怒ることなんてほとんどないあまが、
本気で怒っていた。
周囲の空気が一気に重くなり、風が巻き起こる。
机がきしみ、結晶が光った。
「もう、いい加減にしろ!」
その瞬間、まるで稲妻のように魔力が爆ぜ、
嫌がらせをしていた生徒たちが全員吹き飛んだ。
静まり返る教室。
あまはそのまま膝をつき、肩で息をしていた。
魔力を、限界まで使い切って。
「……あま!」
駆け寄る僕の手を、彼は笑って振り払う。
「平気だよ、僕が勝手に怒っただけだから」
でも、その笑顔があまりに弱く見えて、怖かった。
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あの時と、同じだった。
昔、幼い頃。
あまが虐められて泣いていた時、僕はただ震えていた。
けれど、泣きながら立ち向かった。
「やめてよ!」と叫んで、
手にしていた小さなランタンが砕け散り、
中から放たれた光が辺りを照らした。
あの光で、悪い奴らは逃げた。
代わりに、僕は魔力を使いすぎて、魔法使いになれなくなった。
それでも――あまは笑ってくれた。
「ありがとう、あめ。僕、君の勇気、ずっと忘れない。」
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今、僕が守る番だ。
あまが魔力を失うかもしれない。
そんなの、もう二度と嫌だ。
僕は目を閉じて、深く息を吸った。
心の奥が熱くなる。
指先から、光が走った。
かつて割れたランタンの破片が、ふわりと浮かび上がるように見えた。
懐かしい光が広がって、
それが次第に僕を包み込む。
――ドクン。
体の中に流れていた何かが変わった。
重かった空気が軽くなり、風がやさしく流れる。
教室の窓が開き、淡い光が差し込んだ。
結晶が震えるように光り、声が響く。
『認定――最高魔法使い。』
え……僕が?
信じられなかった。
でも、胸の奥で確かに感じた。
これは――あまがくれた「勇気」の形。
あの時の光が、今、僕の中で生きている。
ドアの外から足音がした。
弱々しいけど、懐かしい声。
「……やっぱり、君は、僕より強くなるって、思ってたよ」
あまが立っていた。
その目に、優しい笑みと、少しの涙。
僕は笑って答えた。
「今度は僕が守るから。」
――光は、確かに継がれた。