テラーノベル
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時は流れ、二人がJO1としてデビューし、少し経ったある日。
蓮が、ふと思い出したかのように、声を発した。
「なんで、奨くんは、この時代に戻ってきたんやろ?」
蓮の問いかけに、奨は静かに目を閉じた。
未来の記憶をたどる。
そこには、デビュー後、順調に活動を続けていたJO1の姿があった。
ファンからの熱い声援。
音楽番組での一位。
ドームツアー。
すべてが順調だったはずだった。
だが、ある日、それは突然起こった。
「JO1、活動休止へ」
新聞の一面を飾った、信じられない見出し。
メンバーは憔悴し、ファンは悲しみに暮れていた。
原因は、世間には公表されていない、あるスキャンダルだった。
それは、奨がリーダーとして、蓮がパフォーマンスリーダーとして、互いに支え合って乗り越えようとした、二人の関係をめぐる、大きな問題だった。
「未来のJO1は…もう、なくなってしまったんだ」
奨は、絞り出すような声で言った。
蓮は、息をのむ。
「俺たちが、この世界で愛し合っていくことが、未来では…グループを壊す原因になったんだと思う。だから…俺は、過去に戻ってきたのかもしれない…」
「JO1を…守るために…?」
蓮は、奨の言葉をゆっくりと繰り返した。
奨は、未来の記憶から、具体的な出来事を語り始めた。
二人の関係が、どうやって世間に知られ、ファンやメンバーにどれほどの衝撃を与えたか。
そして、それが原因で、グループが分裂の危機に陥ったこと。
「俺は、その運命を変えたい。蓮との未来も、JO1の未来も、両方守りたいんだ」
奨の瞳は、強い決意に満ちていた。
蓮は、そんな奨を、ただじっと見つめていた。
奨の告白を聞いた蓮は、何も言えなかった。
奨がタイムスリップしてきた理由。それは、自分との関係が、未来のJO1を壊してしまうから。
奨は、グループを守るために、過去に戻ってきた。
それは、蓮にとって、あまりにも重すぎる事実だった。
蓮は、心の中で葛藤した。
奨との愛を育みたい。
だが、その愛が、JO1を壊してしまう。
未来の蓮は、この愛に固執し、グループを危機に陥れた。
今の自分は、未来の自分と同じ過ちを繰り返してしまうのだろうか?
蓮は、奨の目を見ることができなくなった。
奨が、自分のために未来を変えようとしてくれている。
その気持ちは、とても嬉しい。
だが、それは同時に、自分たちが「JO1を壊してしまう存在」だと言われているようにも感じた。
「蓮…?」
奨が心配そうに声をかける。
蓮は、かろうじて笑顔をつくった。
「…大丈夫。俺、奨くんの気持ち、分かったから」
だが、その笑顔は、どこか寂しそうだった。
奨は、蓮の心の壁が、再び閉じていくのを感じた。
蓮は、自分との関係を、そしてJO1の未来を、どう選択すればいいのか分からず、一人で苦しむことを選んだのだった。
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