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その日から、二人の関係は冷え切ってしまった。
それは、まるでデビュー前の非常階段での、あのすれ違いを繰り返しているかのようだった。
いや、それよりもっと深く、冷たい溝だった。
蓮は奨を避け、奨はそんな蓮にどう接していいか分からず、ただ見守ることしかできない。
二人のすれ違いは、グループ全体の雰囲気を重くしていった。
練習中、蓮は奨とのダンスのタイミングが合わなくなり、何度も振付を間違える。
他のメンバーは、二人の間に漂う不穏な空気に気づき始めていた。
「奨くんと蓮くん、なんか最近変じゃない?」
「喧嘩でもしたんかな…」
心配する声が聞こえてくる。
だが、奨も蓮も、本当の理由を話すことはできなかった。
「俺たちが…グループを壊してしまう」
蓮は、一人でいるとき、心の中で何度もそう繰り返した。
奨との愛を諦めるべきなのか。
それが、JO1を守る唯一の方法なのだろうか。
ある晩、奨は蓮の部屋の前に立ち、意を決してドアをノックした。
返事はなかったが、奨は構わずドアを開けた。
部屋の隅で、蓮が膝を抱え、震えていた。
「蓮…一人で悩まないで」
奨は、蓮の隣に座り、そっと手を握った。
蓮は、払い除けようとはしなかった。
「…俺たちの愛が、JO1を壊してしまうんでしょ?」
絞り出すような蓮の声に、奨は首を横に振った。
「違う。俺たちの愛が、グループを壊すわけじゃない。壊してしまうのは…俺たちの秘密だ」
蓮は、奨の言葉の意味を理解できなかった。
「俺たちは、未来で、二人の関係を誰にも言えずに、一人で悩んでしまった。それが、グループに不協和音を生み出してしまったんだ」
奨は、蓮の瞳をまっすぐに見つめた。
「蓮、俺は、JO1を守るために過去に戻ってきた。蓮との未来も、JO1の未来も、両方守りたい。そのためには、もう一人で悩むのはやめよう。二人の関係を、もう一度、一からやり直そう」
奨は、蓮の手を強く握りしめた。
「未来を変えるんだ。俺たちの愛を、グループを壊す原因じゃなくて、最強の武器にするんだ」
蓮の瞳に、再び光が宿った。
奨は、未来を変えるために、蓮とともに、もう一度歩み始めることを決意した。