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麗太
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口をすすぎ終えたヴァイオレットは「二人きりの邪魔をしてはいけない」と思い、ゆっくりと歩いていた。
そんな時だった。
「にゃーん……」
「……猫?」
どこからか、弱々しい猫の鳴き声が聞こえる。
ヴァイオレットは鳴き声のする方へ、足を進める。
するとそこには、一人の少年が木登りをしていた。
「待ってろ……今、助けてやるから……」
少年が手を伸ばしている先……そこには木に登って降りられなくなったのか、一匹の猫がいた。
「もう少し……あと、ちょっと……!」
そう言って、手を伸ばした時。少年は足を滑らせた。
「わっ……!」
「危ない……!」
反射的に駆け出すヴァイオレット。
元忍びと言うだけあり、瞬きをする間もない速さだ。
「い……ったく、ない……?」
「おケガはありませんか?」
「へ?」
少年を受け止めたヴァイオレット。それはまるで、お姫様を抱っこするように凛々しく、かっこよかった。
「か、かっこいい……」
少年も思わず頬を赤く染めてしまうほど、男前な助けかただ。
「猫を助けようとしてたんですよね?」
少年を下ろしながら、ヴァイオレットはたずねる。
そこで正気に戻ったのだろう。『ハッ!』とした少年は、慌てて頷く。
「そ、そうなんだ! 猫が木に登って、降りられなくなってて……」
「なるほど、少々お待ちください。私が捕まえてきます」
「いや、ここは男のぼ……俺が……!」
少年が言い終える前に、ヴァイオレットは無駄のない動きで木を登る……いや、駆け上がる。
そうしてあっという間に、猫の元へとたどり着いたのだ。
「大丈夫、もう怖くないですよ」
そしてそのまま、猫を抱えて降りてきた。
ただ呆然と見ていた少年は、再び『ハッ!』としながらヴァイオレットに駆け寄る。
「お前すごいな! あの動き、どうやったらできるんだ!?」
「……昔、毎日のように山の中を駆け回ってたので」
もちろん昔とは、前世のことだ。
しかし習慣とは恐ろしい……生まれ変わった今でも、隙があれば忍びとして鍛錬してしまうのだから。
「ぼ……俺もマネしたら、できるかな!?」
「無理だと思います」
キッパリと言い切るヴァイオレットに、少年は見るからにしょんぼりとする。
少し可哀想だと思ったヴァイオレットは、咳払いをしながら猫を渡す。
「ゴホン……私の場合、特殊な訓練を受けていたので。……まずは毎日走ったりして、体力をつけるのはどうでしょう?」
「なるほど!」
キラキラと目を輝かせる少年を横目に、ヴァイオレットは我に返る。時間をかけすぎてしまった、と。
「主人が待ってるので、失礼します」
「あっ、待って!」
「なんですか?」
「名前! ……聞いてもいい?」
一秒でも早くミリアリアの元へ帰りたいヴァイオレットは、振り返らずに答える。
「……ヴァイオレットです」
そう言って、消えるように去る。
「『ヴァイオレット』……そうか、僕の名は……って、居ない!?」
消えたヴァイオレットに、少年は残念そうに猫を抱く。
「また会えるといいな……」
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そうして顔合わせが終わる頃、アシュレイは突然「紹介したい子がいる」と、ミリアリアとヴァイオレットに告げる。
アシュレイが呼ぶと、おずおずとした態度で一人の少年が現れる。
その瞬間――――ヴァイオレットの顔つきが変わった。
「紹介が遅れてしまいました、弟のリディアムです」
「弟の、リディアムです……」
それは先程、猫を助けようとした少年……。
そしてこの物語……『マジLOVE♡ふぉーえばー』でヴァイオレットと共に悪役である、『リディアム・ミルドレッド』だった。