〜〇年前〜
変則的台子高校図書館廊下前
ほとけside
学校に慣れ始めたと感じて来た5月の初旬。この高校に親から行けと言われた時は随分驚いたが慣れてしまえばこっちのものだ。やはり、素行の悪さから周りには避けられ、悪口なんか言われ放題だが無視するしかない。そんな事を考えつつもやはり、悪口は気にしてしまうのは己の弱さなのだろうか。肉体的自身はあるというのに精神的面が厳かになってしまっている。それこそが弱き者の真骨頂だと自分で思う辺り本当に努力をしなければいけない。
「うわっ、ほとけだ、、、」
「あいつ、なんかキモいよな、ヤンキーの癖に女みたいな声だし服装も変だし、、、」
僕が本を読んでいるから聞こえるか聞こえないかの声で悪口を言ってくる男ども。確かに僕は女みたいな声というかショタみたいな声というかで男らしくはないかもしれないが、ヒソヒソ声で人の悪口を言うのはよっぽど女みたいだと思うのは僕だけでないはず。僕の今の服装は学校指定の制服のシャツにネクタイなしそして極めつけはダボダボの羽織を羽織っており、他とは少し違う羽織を羽織っている理由としては相手に自分の姿の全貌を見せないため。自分の弱々しい体を見せないために来ているが、まさか女みたいだと言われるとは、、、LGBTうんたらかんたらのこの時代も涙目だ。
この学校では既にいくつかの問題を起こしてしまい、悪いイメージが着いており印象最悪と僕はされているが勉強出来れば良いのだろうか何故いい子ちゃんぶらないといけないのだろうかと思っている。そんな事を考えながらふと窓から外の校舎を除くと何やら他校の奴と自校の奴が喧嘩しているようだった。今優勢をとっているのは、どうやら違う高校の10人程度の男達だった。見ているうちにどんどん奴らはここの高校の3人の生徒を虐めていった。
気付いた時には僕は窓を全開にし、飛び降りていた。近くに居た女子共が飛び降りだとか悲鳴だとかを上げていたがお構い無しだ、こんな高さから落ちて死ぬわけが無い。そんな事を考えながら僕は3階の窓から落ちつつ、目的の喧嘩現場を見下ろした。
かなり自校のやつは追い詰められているらしい。既に相手にボコボコにされ気絶しており、金やらなんやらを奪おうとしていた。僕はそんな光景を目の前にし全力ダッシュをし、止めに行っていた。無意識ってつくづく怖いな、なんて思いながらも弱き者は必ず助ける精神から彼等を助けようとしていた。
「おうおうおう、泣く子も黙るほとけさんじゃないっすか〜(笑)」
「こんな、雑魚どもを助けに来たんですか〜??」
こいつらは少し前に喧嘩を売ってきた事を理由に少しばかり痛い目を見せたはずなのだが、、、なにか僕を倒す秘策でもあるのだろうか、そんな事を考えていたがやはり考え事をしながらの戦闘はきつい。相手は10人程度なのだ無意識下の状態で勝てるだろう。そうして、僕は特になんも考えずに指揮をとっていた割と屈強な男の腹を殴り頭の骨を潰していた。どんどん自分の方にやってくる如何にも雑魚そうな男共を次々に蹴り飛ばしていくと、不意に頭を強く殴られた。反動で後ろに飛ばされたが何とか受身をとったため、大事には至らなかったが、頭の整理が追いつかない。頭の中をグワングワンと渦が取り巻き、混乱状態を避けられなかった。どうやら僕は、他校のヤツらを助けに来た援軍に殴られたらしい。仲間が居らず常に1匹狼の僕からすると、助けてくれる仲間が居るのに羨ましいとまで感じた。
「おい、お前!!助けに来たぞ!!」
「ちょ、アニキ!?スピード早すぎでしょ!?」
隣から聞こえたのは敵なのか味方なのかよく分からない2人の男の声。赤髪ポンパドールと黒と黄色のグラデーションの長髪。赤髪の方はここの高校のジャージを来ていた為、こちらの味方だろうか。そんな事を考えているとフラリと体が倒れてしまった。大方先程のパンチの当たり所が悪かったのだろう、僕は自然の身体の動きに身を任せ、意識を失っていった。失いかけの意識の中、最後に見えたのは、軽いジャブで屈強の男を倒しながら足技で雑魚どもを軽々蹴飛ばしていく長髪の男の姿だった。あんな軽い攻撃でもよろめかせる事が出来るとは、かなり驚いた事を最後に事切れた。
「お、起きたんか??」
ふと、目を覚ますと容姿がかなり整った男の顔が覗かせていた。顔は如何にも心配だという表情だった。まだズキズキと頭が痛む中、僕は身体を起こし、膝枕をしていた長髪の男と炭酸のペットボトルを何本か持ったジャージの男に聞いた。
「君達何者??」
「まぁ、まぁ、そんな警戒すんなって」
「いや〜アニキ、、、この状況だったら誰でも困惑すると思うよ?」
「ん〜じゃあ、自己紹介するか、俺は黒山悠佑。4組な。」
「んで、俺が赤治りうら、君と同じ1組。はい、これ喉乾いでるでしょ?コカコーラ。アニキの奢りだから遠慮せず飲みな。」
「あぁ、アニキって言うのは俺の事な。お前の名前は??」
「えと、僕は水島仏。その、りうら、くん?と同じ1組。コーラありがと」
コーラはまだ、フタを開けられずに水滴を滴らせている所を見ると中に変な物は入ってないようだ。安心して喉を通すとシュワシュワという感覚からか喉が潤っていく事を感じられた。久しぶりに飲んだその味は何処か懐かしい感じがした。さて、この2人に聞く事がいくつか出てきた。昔からアホみたいな面をしていると言われて来たが何も考えていない訳では無い、まず何故僕を助けたのか聞かないとだ。こんな素行が悪い不良なんかを助けるなんて常人の考えじゃないからな。
「なんで、、悠佑とりうらは僕を助けたの?助ける理由なんてないでしょ」
「は??お前もしかしなくてもバカなん??助けるのに理由なんて要らんやろ。俺が助けたいと思ったから助けただけや。」
「まぁ、そもそもりうら達がそっちの方に行った理由が、なんか飛び降りしてる人が居たからだもんね〜」
「は?そんな事で僕を助けたの?」
「いや、そんな事ってなんやねんお前。普通3階の窓から落ちた奴がおったら、助けに行くやろ。」
驚いた、彼等はなんの見返りもなしに人を助けたようだ。確かに普通の人なら助けに行く訳じゃなくとも見に行くぐらいならするだろう。しかし、今回は話が違う、違いすぎるのだ。他校の屈強な男共を前に自分の事はなりふり構わなく助けに来たのだ。普通の高校生より若干体が小さく小柄な2人は何故そんな事を聞くのだろうかという眼差しで僕の方を見てきた。
「ってか、普通あの状況で助けに来る?まず、逃げるのが先でしょ、、、」
「いやいや、りうら達の事バカにしちゃいけないよ??アニキとりうら一応ヤンキーだから★」
「ドヤ顔で言うのもあれやし、ヤンキーって自分で言うのもなんやねん、、、」
「その見た目で不良って事!?は?そんな、か弱そうな体で!?」
これは流石に驚いた。こんな、女みたいな体つきでまともに男たちの喧嘩に交えられるのだろうか。疑問詞しか頭に浮かばず困惑していると長髪の男が口を開いた。
「まぁ、確かに俺らの体は細っこくて頼りないかもしれないが、現にお前らを助けたのは俺らやで?伊達にこの体で15年近く生きてねぇんだよ。」
彼の言う通りだった。自分が1番馴染んでいるものこそ最強の武器となる。自分が1番理解しているはずだった、見た目だけで物事を判断しては足元すくわれる、そんなものも全て分かっているはずだった。
「まぁ、、確かにそうだよね。変な言い方してごめん。」
「全然ええで、ほとけの言う通りやし。」
「りうらも、許す。確かに俺らは見た目ひ弱だもん(笑)」
「ありがと、、、」
その後僕らは3人でたくさん話をした。今まで1人で他校の奴らをボコボコにしてきた話、中学の時はほぼ不良を倒してしまい敵がいなかった事、昨日の晩御飯は冷食の餃子だった事。僕の話を中心に会話を進めていき、りうちゃんとアニキの話も聞いて言った。今まで孤独だった僕にとってしっかり話を聞いてくれたのは彼らが初めてだった。会話の大切さ、友情の尊さを教えてくれた。
その後僕達はお腹が空いたという事で、りうちゃんの提案ですき家に行った。ひとつキング牛丼を頼み、3人で箸をつつく。如何にも高校生らしい光景に思わず笑みが零れてしまう。いつも食べている牛丼となんら変わりないのにアニキが奢ってくれるので人の金での飯である事。そして何より人と食事をするという幸せ。その幸せだけで僕は涙を流しそうになった。人との喧嘩や誰かを傷つける事でしか自分の価値を証明できない僕に人との正しい接し方を詳しく教えてくれたアニキ。
コメント
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初コメ?失礼します。 1話から読んできたんですけど、世界観に惹き込まれちゃいました。水くん飛び降りても、戦えるって身体強...。
かっけぇ…!いむくん、3階から飛び降りてよく無事だったな…… 軽い蹴りで、相手を倒す…あれ?軽い蹴りってなんだっけ?