テラーノベル
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一方、ファントムと戦っているみんなは苦戦を強いられていた。
ファントムの使うゴムは、より一層、攻略しづらさに拍車がかかっている。
飛んでくるゴムを壊そうとすると弾け、床に落ちたゴムは水のように変化する。液状のゴムはベタベタとした粘着性のものに変わり、捕まると動けなくなってしまう。
当たらないように注意しつつ動き回るのだけれど、ファントムが目黒と戦いながら仕込んだであろう魔術式が部屋のあちこちに施され、地雷のように隠れている。そのせいで、魔術式に触れると爆発したりゴムが飛んで来たりと、一瞬たりとも気が抜けない。
かといって、こちらの攻撃はファントムがゴムの皮を被る事で全て防がれてしまい、相性のいい岩本と宮舘をもってしても、決定打が何も与えられないでいる。
💙「くっそ、戦いづれえ」
🖤「弱点になる舘さんと岩本くんに集中して攻撃されるから……」
🧡「下手に踏めんし、動くの怖いねん」
みんな、傷が増えてきていて、更に体力が奪われていることで肩が上下している。
このまま長引くとこちらが不利だ。何とか、強い攻撃を入れられれば違うというのに。
そうしていると。部屋のあちこちから、パンッ、パンッと何かが弾けて壊れるような音が鳴った。それらは部屋の中を駆け巡るように十数回鳴り、突然のことに皆が身構える。
💚「ふぅ。魔術式はこれで全部、消えたかな」
今の状況に似つかわしくない、優しい声。
一斉にドアの方を見ると、ニコッと笑った阿部が手をひらひらと振っている。
🖤「阿部ちゃん!」
🧡「無事やったんやな!」
💚「ラウとふっかのおかげでね」
🤍「間に合って良かったよー」
💜「これでようやく、SnowMan揃ったな!」
この部屋に入ってくる直前、ラウールが室内にある魔術式を見つけて、部屋の外から攻略法を探っていた。以前から組み込まれていたものではなく、急場で設置されたらしい魔術式はスタンプのように表面に浮いているだけだった。
阿部の電波ならば干渉できるというラウールの見立てだったので、部屋に電波を張り巡らせて魔術式を打ち砕いたということだ。
つまり、あとはファントムに意識を集中させるだけでいい。これで形勢逆転だと、ファントムを見据えている。
すると。
「ハッハッハッ! いやはや、お見事ですね」
仰々しくゆっくりと拍手をするファントム。
「あなた方を見誤っていたようです」
🧡「今更なに言うてんねん!」
💙「後悔したって遅いっての」
「後悔? いえ。最高の気分ですよ。自らの手で、最高の舞台を用意してくれたのですからね。逃しませんよ」
出現する大量のゴム人形。それは一斉に、阿部だけを標的にしているかのように向かってくる。それを防ぐのは、阿部の前に出た宮舘の氷と渡辺の花びらの結界。
💙「やらせるかよ」
❤️「もう、阿部には触れさせない」
その間に向井が岩を出現させてファントムの動きを制限し、そこに岩本が、炎を纏った拳で殴り掛かる。更に瞬時に現れた佐久間が、岩本を攻撃しようとしているゴムを蹴りつけて軌道を変えた。
ゆり組より前に深澤と目黒がいて、ゴム人形の破壊と拘束、更にはファントムへの攻撃まで担っている。
いくらファントムが強いといっても、全員での猛攻に少しずつこちらが優勢になってきているような気がする。
🤍「でも、あと一歩、決め手がないね」
💚「ごめん……俺、もう戦えるような状態じゃなくて……」
🤍「阿部ちゃんはずっと頑張ってたんだからさ、こういう時くらい、みんなを頼っていいんだよ」
💚「ラウ……そうだね。戦わなくても、何か力になれる事があるかもしれない……ファントムがずっと異能を使い続けてる事が、腑に落ちないんだ。あれだけの異能、あれだけの力、もうオーバーロードしててもおかしくないよ」
🤍「確かに。僕ら、あいつが作ったっぽい大量のゴム人形にも襲われたし……」
💚「ファントムに力を供給してるものがあるのかも……」
よく、ファントムを観察する。
何かがある筈だ。そうでなければ、もうとっくに異能を使いすぎている。
💚「あ。そういえば、ずっとあの杖を持ち続けてる」
🤍「杖? ……あれだね。ちょっと待って」
ラウールはゴーグルをかけた。
💚「あれ、それって」
🤍「そ。夕星の時に作ったゴーグルだよ。あの時のを応用して、マテリアの流れみたいなものを見えるようにしたんだ」
ズームしてファントムが持っている紳士杖に焦点を当てる。数秒、じっと見続けるとぼんやりとだがマテリアの流れが見えた。それは、杖とファントムの心臓を繋ぐように流れている。
🤍「見えた。やっぱり杖とマテリアが繋がってる。壊して供給がなくなれば、僕らにも勝ち目がある!」
💚「狙うところはある?」
🤍「杖についてる宝石。あれが多分、供給源だよ」
阿部は立ち上がると、真っすぐにファントムを見据えた。その目が輝くけれど、それはいつもの緑ではなかい。緑と碧と翠。異なる三色の緑が溶け合うように、仄かに輝きを放つ。
次の瞬間、脳に電気が走ったような感覚がメンバー全員にもたらされる。
💚「みんな、聞いて。ファントムの弱点は杖の宝石。あれを壊せばファントムはもう異能を使えなくなる。康二の重力を使って杖をファントムから引き離して、ふっかの鋼で壊してほしい。他のみんなはファントムに悟られないようにお願い」
そこまで言うと、阿部の体から力が抜けて倒れそうになり、ラウールが慌てて抱き締め、そのまま座り込んだ。
🤍「阿部ちゃん、無茶しすぎだよ。今のって、前に川の中で使ったやつでしょ。条件、揃ってないのに……」
💚「でも、通信手段がない今だと、これしか伝える方法がなくて……」
🤍「わかってるよ。だからもう、休んでて。みんななら大丈夫だから」
座った状態でラウールに抱きかかえられている阿部。少し熱っぽい。体の限界と、異能の限界を迎えようとしているのだろう。
もうこれ以上は無理をさせられない。
阿部からの通信に、全員が気合いを入れ直す。何としてでも、向井と深澤に作戦を遂行してもらわなければならない。
顔を見合わせて頷き合い、ラウールと阿部を渡辺の花びらの結界に任せて、他の者たちで一斉にファントムへ向かっていく。
ファントムの目の前に現れた佐久間は、攻撃された箇所を粒子化させて攻撃を避け、その隙に佐久間の後ろから炎を纏った拳を打ち付ける岩本。宮舘の冷気に触れたゴムが片っ端から凍り付き、目黒が蔓でファントムの体を拘束する。
準備は整った。
🧡「いくで!」
向井が手を前に出すと、ファントムの紳士杖が離れて浮き上がり。
🧡「ふっかさん!」
💜「トドメだ!!」
深澤の前に作り出した小さな鋼の弾丸。指で弾くと同時に鋼弾が一直線に飛び、杖に嵌め込まれた宝石を正確に撃ち抜いた。甲高い音と共に宝石に亀裂が走り、次の瞬間、粉々に砕け散る。
そして。
「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
紳士杖から抜け出していく黒い靄。
マテリアの供給源を奪われたファントムの体が風船のようにブクブクと膨れ上がっていく。
🩷「な、なんだ?!」
💙「きっも!!」
❤️「翔太、オブラート」
🧡「んな場合やないって!」
段々と変貌していったファントムは、触手がいくつも絡み合って人間の形をしているような異形の姿になった。
「グアアアアアア!」
それは最早、人ではなくモンスターで、腕や足となった触手をブンブンと見境なく振り回している。
振り回される触手に吹き飛ばされて床や壁に叩きつけられていくみんな。
💜「うっ!」
🩷「がぁっ!」
これまで消耗しているせいで、上手くかわす事もできていない。
その内の一本の触手が動くことのできない阿部の方に向かうと、守るように抱きしめているラウールの体を弾き飛ばし、阿部の首に巻き付いた。
💚「うぅっ」
引っ張られた事で阿部の体が、モンスターになったファントムの許へと向かう。
🖤「阿部ちゃん!!」
「グギ……逃ガさ、ナイ……」
モンスターになったファントムの目の前で、触手に首を絞められながら宙に浮いている阿部。
逃れようとバタバタと足を動かしているが、緩む事はない。咄嗟に手で触手を掴んで少しだけ空間ができているけれど、それもいつまでもつか。
💛「くそっ! こんなになっても阿部に執着すんのかよ」
岩本が炎を出そうとすると、ファントムの触手の先が尖って一斉に阿部へと向けられる。
💚「く、うっ」
「グハハッ! コれで、ヨウやクあノちカラが……!」
勝利を確信したようなファントム。
暴れたファントムの触手が天井を壊して、月明かりが差し込んでいる。
「あらあら。おいたが過ぎますわよ」
聞こえてきたのは、鈴の音のような透き通る女の声。可愛らしく妖艶な、忘れられない声。そして、鼻腔を擽るのは甘いバニラの香り。
月の光に照らし出されて露になったその姿。ファントムと阿部の目の前に立っているのは、ワンピースを翻した―――。
🖤「……芙蓉……!」
「ごきげんよう、皆さま。またお会いできて大変うれしゅうございます」
まさか、ここで芙蓉が登場するなど思ってもみなかった。
🖤「お前また、阿部ちゃんに!?」
「あらあら、そのように睨まないでくださいませ」
うふふ、と美麗な笑みを浮かべて芙蓉は阿部を拘束している触手に触れた。瞬間、するりと解けて阿部の体が落ちてくるのを芙蓉が抱き留める。
ゴホッゴホッと咳き込んでいる阿部。
阿部を見、それから芙蓉はファントムを真っ直ぐに見据える。
「これは良くありませんわね。わたくし、これでも怒っているのですよ? ……やり過ぎましたわね」
「オ゛、オ゛オ゛オ゛オ゛マエ゛!! ソいツヲわタセ!!!」
「お断りですわ」
全ての触手が芙蓉と阿部に向かうけれど、それらは磁石で反発するかのように一定の距離から進まなかった。
理由は、芙蓉の隣に立っている宮舘から溢れた冷気が触手を凍らせて動きを止めているから。
💚「だて、さま……?」
❤️「阿部。もう少しだからそこで待ってて」
「では、涼太様。よろしいですわね」
❤️「どうぞ」
「緊急事態ですもの。省略いたしますわね」
芙蓉が阿部の肩を抱きながら、逆の手を宮舘の肩に添えると、芙蓉を照らしている月に向かってキラキラとした光が一気に登っていき、月に月下美人の花が描き出される。
「さあ。涼太様の願い、叶えましょう」
月の中で月下美人の花が一際煌めくと、今まで芙蓉を照らしていた月の光がファントムを照らし、月の光に当たったファントムの姿が塵になっていく。
「ガア゛ア゛あ゛ア゛ア゛ア゛!!!」
断末魔の叫びを上げるファントム。痛みからか床に蹲り、月の光から逃れるように這っていくけれど、数秒でその姿は全て消え去った。
ファントムが消え去ると月に浮かんでいた月下美人も消え去り、月の光に交じっていた煌めきもなくなった。
「……終わりましたわね。涼太様、ご協力、感謝いたしますわ」
❤️「いいえ」
胸に右手を当ててエレガントな動きで頭を下げる宮舘に、芙蓉も空いている左手でカーテシーを披露する。
🩷「えっ、どうなってんの……?」
💙「涼太、お前なんで」
❤️「まあまあ、落ち着いてよ、みんな。阿部、こっちに」
芙蓉に肩を抱えられたまま何が起こったか理解できていなさそうな阿部を宮舘が呼ぶ。阿部は宮舘を見、更に芙蓉を見ると芙蓉はニコッと美麗な笑みを浮かべているだけで、戸惑いながらも宮舘にもたれかかる。
阿部が芙蓉から離れたことで、皆が痛む体を気にすることなく阿部と宮舘の方に駆け寄って来た。
「そのように警戒しないでくださいませ。今日の目的は達成されましたから」
🤍「目的って、ファントムの消滅……?」
💙「何であんたが」
「わたくし、あの方が亮平様や皆様にした事が赦せなかったのです」
💛「それって……ファントムが何をしたのか知ってたってこと……?」
「うふふ。ご想像にお任せ致しますわ……ああ、もうすぐ月が消えてしまいますわね。わたくし、これでお暇させていただきますわ。またどこかでお逢い致しましょう」
深くお辞儀をし、月が雲に隠れるのと共に芙蓉の姿も消えていった。
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敵味方… でも戦いは終わったのですね。 続き待ってます♪
ほむぺ⋆*
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めかぶぷりん
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