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誰も知らない、高嶺の花の裏側4
第2話 〚教室、いつもより静かな午後〛
昼休みが終わり、教室に戻った澪と海翔。
ドアを開けた瞬間、クラスの空気が一瞬だけふわっと揺れた。
けれど、以前みたいな大騒ぎや視線はもうない。
噂が完全に落ち着いた今、
クラスメイト達はただ「あ、2人帰ってきた」くらいの反応だった。
それが、澪には少しだけ安心だった。
海翔は席に着く前に、
隣の席の悠真・瑠斗・陽翔に軽く腕を叩かれた。
「海翔〜、なんか図書室からいい感じで戻ってきたな!」
「昼休み、2人だけだったんでしょ?いいね〜!」
「……で、本当に手とか繋いでないよな?」
陽翔はニヤニヤしながら突っ込んでくる。
「……繋いでないって」
海翔は呆れたように言うが、
耳がほんの少し赤くなっているのを悠真は見逃さない。
(あ、こいつ本当に澪好きの顔になってる……)
3人は目を合わせて、無言で “はいはい、そういうやつね” とニヤついた。
一方その頃――澪は女子陣に囲まれていた。
えま、しおり、みさと、りあの4人。
「ねぇねぇ澪!今日も海翔君と図書室?」
「尊いんだけど。図書室デートなの?」
「付き合ってても落ち着いてる感じがさらにいい……!」
澪は耳まで赤くなりながら小さな声で答えた。
「そ、そんなんじゃないよ……ただ本読んでただけ……」
「はい出た〜!ただの“リアル彼氏と昼休み過ごしただけ”のセリフ!」
えまがニコニコでからかう。
「……でも楽しそうだったよね?」
しおりが小さく微笑んで言った。
澪は目をそらしながらも、ほんの少し笑った。
「……うん。楽しかった。」
その言葉に、女子全員が一瞬で嬉しそうな顔になった。
午後の授業が始まる。
静かな空気。冬の光が窓から差し込む。
海翔は前を向きながら“今日の澪、いつもより嬉しそうだったな”と思い、
澪は横顔を見ないようにしながら“海翔の言い方、堂々としててかっこよかった”と思っていた。
噂が消えて、当たり前のように隣にいる。
その“普通”が、2人にとっては少し特別な午後だった。
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