テラーノベル
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きっかけは 些細なことだった。
大学の課題。
グループを組んで、レポートを作る。
今回もジョセフとシーザーは一緒。
いつものように、ジョセフが案を出し、シーザーがまとめる。
ある程構想も練り終わり、シーザーがまとめ始めようとする。
「ま、いつもみたいにどうせ評価いいからさ、適当にパパーっと終わらせようぜ。」
シーザーの手が止まる。
「……適当、だと?貴様、今確かに適当、と言ったのか?」
「だってよー、別に人生かかってるわけじゃあねぇじゃん?」
その言い方が、シーザーのいちばん触れてはいけないところに触れた。
「貴様はいつもそうだ。なんでも物事を軽く考えて。」
「は?なんだよ、その言い方。俺は楽しみながらやってるだけだろ。」
シーザーが顔を上げる。
珍しく、はっきり怒っている。
「楽しむのと投げ出すのは全く別だ。君は__」
「俺を見下してんの?シーザー。」
空気が凍る。
周りの生徒たちが、気まずそうに離れていく。
シーザーは一瞬黙って、言葉を選ぶけれど、上手く選べなかった。
「……真剣になれない人間は信用出来ないな。」
その一言で、ジョセフの顔から、いつもの軽さが消える。
「…そーですか。じゃあひとりで完璧にやれば?優等生サン」
ジョセフは立ち去ってしまった。
数日、ふたりは会っていない。
ジョセフは友達と騒ぐけど、どこか上の空。
シーザーは、課題を完璧に仕上げる。
でも、ページを閉じる度に隣が相手いるのが目に入ってしまう。
提出日。
教室の前で、ばったり会ってしまった。
一瞬目が合ったが、先にジョセフが逸らし、先に教室に入ってしまった。
シーザーは息を深く吸って、ジョセフに言った。
「……すまなかった。あの時は言い過ぎた。」
ジョセフは足を止め、驚いたようにシーザーの方を振り返った。
「君が何も考えていないわけじゃあないのは、本当は分かっている。あのときはただ…ついカッとなってしまって…」
少し間があいてから、ジョセフが低い声で言う。
「…俺も。ちゃんとやる気がないみたいに言って…悪かった。」
沈黙。
でも、今回はあのときより距離が近い感じがする。
ジョセフがポツっと言う。
「…なぁ、俺、全部は無理だけどさ。」
少し間があいた。
「なんだ?」
「その……一緒にやるなら、俺ももっとしっかりやるわ。」
シーザーは少し目を見開いて、小さく笑う。
「……それだけで充分だ。」
並んで教室に入る。
何事もなかったみたいに。
でも違う。
この喧嘩で、わかったことがある。
ジョセフは、軽く見られるのが嫌。
シーザーは、真剣に向き合わないのが嫌。
だからぶつかる。
だけど、だからこそ、決して離れたりはしない。
まるで天秤のように、上手くバランスを保っていたのだ。
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