テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「綾小路商事……」
申請者は綾小路商事の孫娘、麗香だ。
特許の内容は技術が細かすぎてどの部分が画期的なのかわからない。
「すぐ木村にこの資料を送って、特許部分が本当に先を越されているのか確認してくれ」
「はい、西園寺CEO」
すぐに連絡しますと退室した林田部長と入れ違いで入ってきたのは、第1開発部の内海部長。
「……まさか」
内海部長が持ってきた書類は特許ではなかったが、類似商品を綾小路商事が発売したという記事だった。
「……どうして……?」
綾小路商事は先日レストランで会った人たちだ。
どうしてあの人たちがこの会社の製品を真似できるの……?
「……特別共有フォルダのせいだろうな」
「そうですね。誰でも閲覧できるようになりましたから」
「でも、閲覧しかできないのに」
沙紀が持ち出せないと言うと、冬木は首を横に振った。
「部長クラス以上と、この統括室のメンバーだけは別の場所に保存できるのです。印刷はできませんが」
ということは犯人は限られているってこと……?
「冬木、沙紀をマンションに」
「かしこまりました」
「……え?」
もしかして私が疑われている?
「帰り支度をしてください」
「私じゃないです、どうして帰らされるのですか?」
眉間にシワを寄せ、手で額を押さえている彰とは目が合わない。
沙紀は冬木に促されるまま車に乗り、マンションへと戻った。
「しばらく外出はしないでください。鍵をお持ちじゃないでしょう?」
「あ、……はい」
そうだ。鍵がないから、出かけたらもうここには入れない。
「あの冬木さん、私、本当にやってないです」
「沙紀さんが犯人だなんて思っていないですよ。たまたま沙紀さんが食堂で聞いた困り事の解決策が、誰かに悪用されただけです」
必要な物があれば買ってくるので電話をくださいと言い残すと、冬木は出て行ってしまった。
……疑われている、よね。
はっきりとは言われなかったけど。
私じゃないけれど、誰でも持ち出せるデータじゃないから。
夕方、冬木が豪華弁当と明日の朝食用のベーグルを買ってきてくれたが食べる気になれず冷蔵庫にしまった。
0時過ぎまで待っていたが、その日は彰は帰って来なかった。
翌朝、冬木に食事は不要だと連絡し、昨日買ってくれたベーグルを10時頃に、お弁当を16時頃に食べた。
二人からは何も連絡はなく、帰っても来ない。
せっかく社内がいい雰囲気だったのに、もしこのまま会社の業績が回復しなかったら。
あの派手で綺麗なお嬢様と彰が隣同士で立つ姿を想像した沙紀は、ギュッと心が締め付けられたような気がした。
「おはようございます、沙紀さん」
翌日ようやく許可が出た沙紀は、冬木の迎えで出社することができた。
「……彰様?」
パソコンの前で倒れたかのような体勢で眠っている彰は、まるで徹夜明けのエンジニアのようだ。
「もう少し寝かせてあげてください。徹夜続きでしたので」
やっぱり徹夜!
冬木にブランケットを手渡された沙紀は、そっと彰の肩に掛ける。
「……沙紀?」
「すみません、起こしてしまいましたね。まだ時間は大丈夫だそうなので、もう少し」
寝てくださいと言うつもりだった沙紀は、彰に手を引っ張られフラついた。
そのままなぜか沙紀は彰の膝上に。
さらにあり得ないことに、まるで沙紀を抱き枕にするかのように抱きしめながら、彰は椅子の背もたれに身体を埋めて眠ってしまった。
「……起きるまで諦めてください」
笑いながら冬木が床に落ちたブランケットを二人に掛ける。
「そんな、このままじゃ」
「しーっ」
しーっじゃないです!
沙紀は疲れきった顔で眠る彰と、少しニヤニヤしている冬木を交互に見たあと溜息をついた。
「ひあっ」
パソコンから響く警告音に驚いた沙紀は、思わず小さな悲鳴をあげてしまった。
冬木は急いで駆けつけ、彰は沙紀を抱えたまま真剣な表情でモニタを見つめる。
黒い画面に白い文字が流れていき、およそ3分の間、止まったり動いていた画面の文字は急にピタリと動かなくなった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#暴力表現あり
ち ょ こ 。
16,511
臣桜
47,347
植まどか
791