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なんかアニキっぽい面影が…
放課後。六人は軽音部の部室に向かった。音楽室は吹奏楽部が、視聴覚室は書道部、体育館は運動部、コンピューター室はパソコン部が使用している。六茫高校は軽音部が有名なわけでもないので、一階にある教材室兼軽音部室として使用している。所狭しと並べられた楽器たちは、みな寂しそうにしていた。
「失礼しまーす…」
引き戸を開けると、中で一人の先輩がアコースティックギターを弾いていた。真っ黒な髪の毛を後ろで束ね、その目は黄緑色だった。セーラー服の上に大きな黒いパーカーを着ていて、魔女を連想させた。
「あ、新入生?」
先輩は顔を上げ、ギターを弾くのをやめた。中性的な掠れた声が真っ暗な空間に反響する。こさめは思わず先輩を見つめていた。
「あれ?もしもし?」
先輩がこさめの目の前で手をパチンと合わせた。ハッと我に帰る。
「うわあ!!」
「お、戻ってきたw」
先輩は愉快そうに笑った。
「あ、えっと、入部希望で…」
LANが後ろから言った。すると先輩は憐れむように笑った。
「あー…うれしいんやけど、うち非公認なんよ…入部するのはかまわへんし嬉しいよ?でも、いつ死ぬかわからへんから…それだけわかってくれたら大丈夫やけど…」
そう言って先輩は髪をかき上げた。そう言って先輩は髪をかき上げた。その仕草はどこか大人びていて、部屋の薄暗さを一層際立たせた。彼の眼差しには、一瞬だけ過去の苦労が垣間見えたように感じられた。
「非公認でも構いません。俺たち音楽やりたいので。」
いるまが言った。他の五人も頷いた。先輩は少し考えた後、にっこりとわらった。
「そっか…なら歓迎するわ。うちの名前は…」
先輩はそこで言葉を止めた。こさめが首を傾げる。
「先輩?どうしたんですか?」
先輩の目から光が消えた。目の奥で何かが揺れた気がした。
「なんやと思う??」
急に先輩の目に光が宿り、大声で言った。
「ひぃ!?えっと……?」
ずいっと顔を近づけられ、一瞬恐怖を感じる。その性別を隠した顔は、こさめの恐怖心と今好奇心を掻き立てた。
「ふふっ、いいリアクションやなぁw。うちはレイフェル。」
「れ、レイフェル…?」
すちが言った。他の五人も驚いていた。…この人、厨二病…?
「冗談やで!wそんな名前な訳ないやん!嘘嘘。黒羽やで。二年B組の。よろしくな。」
そう言って黒羽は笑った。その笑顔には、彼、いや彼女…?の持つ優しさといたずら心が同居しているようだった。
「まぁうちらも初めましてやし、自己紹介でもするか!」
黒羽は壁に立てかけてあった長机と椅子を出して、六人を座らせた。そして棚の奥からワインボトルを取り出した。
「これ、な〜んだ!」
透明なワインボトルの中には、真っ赤な液体が入っていた。それを黒羽はLANの顔の前に差し出した。LANはギョッとしたような表情を見せた後、しばらく硬直していた。
「え…なんだろう………」
それから黒羽の方をチラリと見ると、顔を真っ青にして言った。
「血……!?」
みことが小さく「ひぃっ!」と悲鳴を上げた。黒羽は豪快に笑うと、ワインボトルを開けた。
「んなわけあるかいな!ただのオレンジジュースやで!?」
「オレンジジュースってそんな色でしたっけ…?」
すちが不思議そうに尋ねると、黒羽はビーカーに注ぎ始めた。
「ブラッドオレンジジュースって言うんよ。家からもって来ててん。」
こさめは肩の力を抜き、ほっと息をついた。
「びっくりさせないでくださいよ、先輩!」
「ごめんな!面白そうやったから、つい。」
黒羽は笑いながらジュースを皆に配った。
「さ、じゃあ改めて自己紹介やな。うちから始めるわ。名前は我孫子黒羽、二年生や。好きなものは音楽と…まあこういう悪戯やな。男か女かはさておき、これからよろしくな!」
六人は順番に自己紹介を始めた。まずはLANが口を開いた。
「俺は百代蘭、一年生です。好きなものは音楽……ギター希望です。これからよろしくお願いします」
次に、こさめが続けた。
「雨乃こさめです!こさめって呼んでください。好きなものは雨とサメです!ボーカル希望です!」
いるまが前に出て一礼した。
「柴野いるま、一年です。好きなものは音楽と…くま…ベース担当です。」
暇72が少し照れくさそうに手を挙げた。
「平野那津、一年生です。ギター担当で、好きなものは…えっと、ゲームです。」
すちが笑顔で続けた。
「高緑すち、一年生です。シンセサイザーかボーカル希望です。好きなものは料理と抹茶です」
最後に、みことが元気よく名乗った。
「皇(すめらぎ)みことです!一年生で、ドラム希望です。ばかって言われます…好きなものはスイーツとかです!」
黒羽は六人の自己紹介を聞き終えると、満足げに頷いた。
「みんな、ええ感じやな。これから一緒に楽しい音楽作っていこうな!」