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「うん、みんな楽器弾く方法はわかるみたいやね。」
黒羽が教材室のにある大きな棚に腰掛けている。この教材室はもともと第二音楽室だったようで、天井はまぁまぁ高かった。こさめは棚の上に乗っている先輩を見上げながら言った。
「先輩、なんでそんなとこにいるんですか…?危ないと思うんですけど…」
すると黒羽は笑いながら答えた。
「こっちの方が音がよく聞こえるからな!それにウチ高いとこ好きやし」
「そうなんですね…」
こさめは呆れたように呟いた。
「先輩、手切れました」
暇72が手を上げた。確かに彼の指には切り傷があった。暇72は他五人よりもギター歴が短い。まだ手が慣れていないのだろう。黒羽は棚から飛び降りると、本棚の奥から救急箱を取り出した。
「あちゃ〜これは痛いなぁ。まぁそのうち慣れるわ!手ェ洗って来な」
そういうと暇72は手洗い場に向かって行った。
「ちょっと俺ついていきます」
いるまもベースを床に置いて走っていった。すると黒羽はニヤリと微笑みながら言った。
「あの二人ラブラブやなぁ。ええこっちゃ」
その言葉に、すちが苦笑した。
「まあ、確かに良い雰囲気だね」
すちが言うと、みことがちらりと横を見ながらつぶやいた。
「すちくん、そういうのはあんまり言わん方が…」
みことの言葉に黒羽は肩をすくめて、少し困ったように微笑んだ。
「ごめんなwつい…でもいいやん、仲良くなるのはいいことやし。可愛い後輩がイチャイチャするのくらい平気で見てられるわ!そこらへんのバカップルよりはマシや!」
黒羽がギターをチューニングしながら笑った。こさめも少し赤面しながら微笑んでいた。その様子に、黒羽は満足そうに頷き、再びギターの音色に集中した。
「先輩、好きな人とかおるんですか?」
LANが恐る恐るといった具合に尋ねる。黒羽は驚いたようにLANを見ると、不敵な笑みを浮かべた。
「おるわけないやん!ウチみたいなやつには友達も居らへん!恋人はギターだけやで?」
黒羽はギターを自慢するように抱き抱えた。LANは苦笑すると、こさめを振り返った。突然振り返られ、びっくりするが、すぐLANはみことに視線を移した。
「みことは?」
「ふぇ!?」
みことはビクりと身を震わせると、赤面して言った。
「いや、俺はそういうのは別に…」
赤面する後輩を見て、黒羽は笑いながらみことの肩を叩いた。
「まぁ、いつかは好きな人もできるわ!」
そう言って笑う黒羽が、とても今はカッコよく見えた。黒羽の言葉に、LANは少し考え込み、微笑んだ。
「先輩、ギターを弾く姿がすごくカッコイイですから、好きな人もきっとできると思いますよ。」
「ほんまか?そうやったらええなぁ。ありがとうな、LAN。お前も多分できるで!」
黒羽は笑顔で言った。こさめと他の部員もそのやり取りを微笑ましく見守っていた。空気が和やかで、みんなの間に新たな親しみが芽生えたような気がした。
「お、チア組帰ってきた!どれどれ、なっちゃん、傷口見してみ」
「チア組ってなんすか先輩w」
いるまと暇72が洗面所から帰ってきた。暇72は泣きそうな顔をしながら黒羽に絆創膏を貼ってもらっていた。
「ん〜、なんとなくなぁ。いるくんとなっちゃん、見た目とかは治安悪そうやん?だから治安悪い組ってウチがさっきつけたんやけど。でも二人とも可愛いとこあるからさぁ。『治安悪い』を略して『チア組』。略すと可愛いやろ?」
いるまが肩をすくめる。絆創膏を貼り終わった暇72は、再びギターを手にした。
「俺ら治安悪いっすか…?w」
暇72は笑いながら言った。黒羽はクツリと喉を鳴らした。見た目だけやで、と言って、楽しそうに本棚に登り出した。
「見た目だけやで、とりあえず。実際はすごくいい子たちやなって思ってるから、安心してな。」
黒羽がウインクをしながら言うと、LANは苦笑しながら言った。
「それならいいんですけど…」
「そやろ、そやろ!ウチの中では、みんな仲良しやしな。」
黒羽が言いながら、自分のギターを手に取った。こさめとみこともその言葉に安心し、再び楽器の調整に戻った。部室の空気が、また一層和やかになった。
「あ、もうすぐ下校時間や」
黒羽が時計を見ながら言った。
「みんな帰る?」
「あ、帰ります」
LANが答えると、黒羽は少し残念そうに眉をひそめた。
「えぇ〜、新入生歓迎コンパ開きたかったのに…」
「?なんですかそれ」
みことが首をかしげると、黒羽はミステリアスに微笑みながら、自分のギターを軽く弾いた。音色が部室に響き渡り、どこか幻想的な雰囲気を醸し出す。
「新入生、歓迎!コンパ!!」
ジャーンと、黒羽はギターを豪快にかき鳴らし、部室の空気が一瞬で盛り上がった。
「来るぅ?」
黒羽が期待を込めて声をかけると、LANが楽しげに笑いながら答えた。
「あ〜、じゃあ行きますw」
「じゃあこさめも行こ」
こさめも笑顔で答え、みことを振り返った。
「みこちゃんどうする?」
「え〜、俺も…行こっかな!」
「じゃあおれも行く」
「じゃあみんな行くか?」
「行こう行こう!」
「じゃあおれもいこ」
「じゃあみんな行くか?」
「行こう行こう」
黒羽はギターで学校のチャイムのメロディーを弾きながら、皆の反応を楽しそうに見守っていた。