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「そりゃあ、そう思いまさぁね。それが、あの会長がお世話んなった人のね、遺品の中に残っとったんです。その兵士の、手記の続きがです」


まだ、話が繋がらない。


「戦争……魔族領に攻めるのは、その後に何度もありました。その都度その兵士は、なんとか生き残ったみたいですなぁ。生きて帰る度に、その凄惨な状況なんかを記したんですな」

「どこに魔王さまという証拠が?」


話が見えない。


「逃げた少年の容姿と、その数十年後に見た、魔族の軍を率いる総大将の姿とが、しっかり当てはまったんだそうな。見間違えるはずがないと、書かれとりました」

「あなたも読んだんですか?」


「ええ。もちろん。これでもギルドの、長老組の一人だもんで」

レモンドは調子づいてきたのか、時々振り返っては私に目線を合わせてくる。


「そう……。それで、その容姿とは?」

これが魔王さまと一致していなければ、話にならない。


「灰の髪と瞳。鍛えられた褐色の体。その魔力も統率力も、これまでの魔族とは群を抜いて凄まじかった。てのが、手記の内容でさぁね。いつ魔王を見ても分かるようにと、あっしらは丸暗記させられたもんで」



そのひと言ひと言に、血の気が引いた。

その容姿の魔族は、魔王城には他に居ない。

それに……凄まじい魔力を持つその御身は、魔族の中でただ、ひとりしかいない。


「……聖女様? どうです? 魔王で間違いないでしょう。ってもねぇ、あっしらは見たことねぇですから。そういう繋がりが、発見されたってぇだけですがね」

「ええ、そうね」


何と答えれば、いいのか分からない。

魔王さまが……戦争孤児。

ずっと――ずっと辛い想いをされてきたなんて。



「それで、聖女様のご主人、ってぇのは失礼ですな。魔王さんのお姿とおんなじですかぃ?」

「……そうね。似ているわ」


村は……村の人たちは……虐殺されたという。

その中で、ただひとり生き残った?

逃げて……それからどうしたの?


「到着、っと。聖女様、ホテルに着きました。今日はほんとに、申し訳ねぇことを――ってぇ、聖女様! なんで泣いておられるんで……」


――いやだ、涙を流してたなんて。


「見るな。お姉様が降りたら、振り返らずに行け」

「すっ、すんませんです!」


……本当に?

魔王さま――。

聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~

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