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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
息を吸うたびに、身体の奥底から大切な魔力が引き剥がされ、代わりにドロリとした禍々しい瘴気が流れ込んでくる。
深淵の魔女が展開した異空間『万物の拒絶』は、私たちの存在そのものを否定するように、絶え間なくその生命力を削り続けていた。
「ハハハハ! どうしたの、最強の皇女たち! 先ほどまでの威勢はどこへ行ったのかしら? さあ、私の可愛い子供たちの胃袋の中で、仲良く溶けて消え失せるがいいわ!」
虚空から響き渡る魔女の嘲笑(あざけ)るような声。
それに応じるように、周囲の蠢く肉壁から、さらに数倍の大きさを誇る紫色の巨大な触手たちが、飢えた獣のように私たちへと一斉に襲いかかってきた。
「くっ……! ローゼ、マリー……下がって……っ」
アルベルトお兄様が、青白い顔で途切れ途切れに声を絞り出す。
お兄様は自身の魔力が吸い尽くされ、立っていることすら限界のはずなのに、それでもなお私の前に立ちはだかり、片膝をつきながらも必死に薄い氷の結界を張り続けていた。
その美しい銀髪は瘴気に汚れ、衣服も触手の風圧でボロボロに引き裂かれている。これほど痛々しいお兄様の姿を見るのは、前世を含めても初めてのことだった。
「ローゼマリー様……、前を、塞ぎますわ……っ」
リンもまた、全身から流れ出る血を拭うこともせず、光の魔力を吸い取られながらも、メイドとしての執念だけでナイフを構え、迫り来る触手を一本、また一本と執念深く切り落としていた。
大好きな二人。私を無能と罵り、暗闇の底へと突き落とした前世のバロア王国とは違う、私を心の底から愛し、守ってくれる、現代の私の大切な居場所。
(……嫌。絶対に、嫌よ……!)
私の胸の奥で、激しい怒りと不屈の闘志が、パチパチと音を立てて爆発した。
魔力が吸い取られ、魔法陣の構築式が空間に溶かされてしまうというのなら――。
魔力なんていう世界の既存のシステムに頼るのを、今この瞬間にやめてしまえばいい。
「お兄様、リン。……私の手を、握ってちょうだい」
「ローゼマリー……?」
「様……?」
二人が驚いたように私を振り返る。私は流れる涙を拭い、紫の瞳に絶対的な強者の炎を宿して、二人の震える手を力強く包み込んだ。
「私たちの絆は、そんな安っぽい魔力なんていう言葉だけで繋がっているんじゃないわ。私を愛してくれるお兄様の想い。私に魂を捧げてくれたリンの忠誠。……そして、二人と幸せになりたいという私の強い執念。その『魂の輝き』ごと、この空間は拒絶できるかしら!?」
私が二人の手を限界まで強く握り締めた、その瞬間だった。
ドォォォォォン!!!!!!
私たちの合わさった手の中から、これまでのどの魔法とも違う、世界の理(ルール)そのものを根底から無視した、眩いばかりの『純白と紫の精神光』が爆発的に溢れ出た。
それは、魔力ではない。私たちの魂が限界を超えて共鳴したことで生み出された、純粋な「絆の具現化(ソウル・リンク)」。
吸い取るべき魔力が存在しない、純粋な精神エネルギーの奔流。その神々しい輝きが周囲に広がった瞬間、魔女の異空間のあちこちから、ベキベキベキ、とガラスが割れるような異音が響き渡った。
『な……何ですって!? 吸い取る魔力がない!? なぜ、私の世界のルールが……バグを起こしているというの……っ!?』
魔女の余裕に満ちていた声が、初めて驚愕と恐怖に裏返った。
ねむ
74
#転生
コシ
103
耀聖(ようせい)
1,401
287
私たちの魂の光に触れた周囲の肉壁が、今度は吸い取るどころか、その圧倒的な精神の質量に耐えかねて、メリメリと音を立てて崩壊し始めたのだ。
空間の拒絶ルールそのものが内側から完全にバグを起こし、お兄様とリンを縛っていた過酷な呪詛の鎖が、一瞬にして消滅していく。
「――あ、身体が……軽い。魔力が、内側から爆発的に戻ってくる……!」
アルベルトお兄様が、ハッとして自身の両手を見つめた。お兄様の瞳に、極限の蒼い魔導師の輝きが完全に戻る。
「ローゼマリー様……、素晴らしいですわ。私、今なら世界そのものを影と光で両断できる気がいたします」
リンもすっくと立ち上がり、その両手に、これまでの比ではない神聖な光と薔薇の魔力を激しく燃え上がらせた。
魂の共鳴によって異空間の縛りを完全に無効化した私たちは、奪われていたすべての魔力を瞬時に取り戻し、むしろ戦う前以上の『完全無欠の最強状態』へと返り咲いたのだ。
「さあ、お兄様、リン。……不法占拠された悪夢の胃袋を、内側から盛大に大爆破して差し上げましょう」
私が不敵な笑みを浮かべ、右手を天へと掲げると、私の背後に、これまでの限界を遥かに超えた巨大な『紫と黄金、そして光の薔薇の翼』が堂々と顕現した。
「いくよ、ローゼマリー! ――僕たちの絆を汚した大罪、その身に刻むがいい! ――『永劫凍土・世界崩壊(カタストロフ・ゼロ)』!」
「お掃除の時間ですわ、魔女。――『聖華・百花天閃(シャイニング・オブリビオン)』!」
お兄様とリンが、同時に最大出力の超特大魔法を放つ。
さらに私も、指先から世界の理を完全に上書きする本来の最強魔法――『聖王極氷覇・無限(エターナル・ラグナロク・インフィニティ)』を解き放った。
3人の最強の力が一つに合わさった、まさに歴史上類を見ない究極の三位一体(トリニティ)の崩壊の奔流。
ズガガガガガガガガガガガァァァァァンッ!!!!!
「ギャァァァァァァァァァッッッ!? 私の、私の深淵の世界が、崩壊していくぅぅぅっ!?」
魔女の絶叫と共に、おぞましい悪夢の異空間が、私たちの放った圧倒的な光と氷の前に耐えきれず、粉々に粉砕されて光の塵へと変わっていく。
視界が再び白銀のまばゆい光に包まれ、私たちはついに、
本当の最終決戦の舞台へと引き戻されていくのだった。
コメント
1件
あーもうこれ熱すぎるだろ!! 魔力吸われて絶体絶命からの「魔力じゃなくて魂の輝きで逆転」って発想、解像度高すぎて痺れたわ。三人の絆が具現化して魔女のルールごとバグらせる展開、まさに「不屈の絆」の体現だよな🔥 次で本当の決戦って感じか、続き楽しみにしてる!