ふと目が覚めると、僕は村の診療所のベッドに横になっていた。
「ここは…」
横を見ると、ベッドに顔を伏せるようにして寝ているお母さんがいた。
「僕は、確か気を失って…」
思い出そうと顔を伏せようとした時、左腕に痛みが走った。
「痛っ」
僕は痛みに顔をゆがませ、痛みの走った左腕を見ると、魔物に切り裂かれた箇所に包帯が巻かれていた。
「僕は、あの時…、そうだ、みんなは!」
小さくそう言うと、寝ていたお母さんが目を覚ますと。
「ん、んん、あっユウ!目が覚めたのね、よかった!」
そう言うと、お母さんは僕に抱き着いてきた。
「ちょっと、痛いよ母さん」
「あっごめんごめん」
そう言ってお母さんは抱き着くのをやめもともと座っていた椅子に座りなおした。
「母さん、みんなは、みんなは無事なの?」
僕は焦るようにお母さんに聞く。
「大丈夫、みんな無事よ」
「よかった…」
僕はみんなが無事なことを聞くと安心し再びベッドに横になる。
「母さん、僕はみんなを守る英雄にはなれないのかな」
僕は戦いの時のことを思い出すとお母さんにそう言う。
「急にどうしたの?」
「あの時僕は、魔物に負けて怖くて、恐怖で戦ってる途中なのに逃げ腰になって泣きじゃくってた。でもみんなは違った。村のみんなを守るために戦って、みんなには誰かを守るための力がある。現に、みんなは力が発現して村の人たちを守った。でも僕は、勝てなくてコハルに守られて…、僕には才能も誰かを守る力も無いんだよ」
僕は泣きながら言うとお母さんが、再び僕にやさしく抱き着く。
「そんなことはないよ、ユウはお母さんをコハルちゃんをみんなを守るために必死に戦った、結果は負けちゃったけどまだまだこれから、これからどんどん強くなってみんなを守れるように強くなればいいのよ」
「母さん…」
僕は泣きながらお母さんにしがみついた。その時、僕の涙に小さな青い術式が浮かび上がり涙が氷り床に落ちて割れた。
「お母さん!これ」
そう言うと僕たちは床の割れた氷の破片を見ると僕たちは嬉しさで今度はさっきより強く抱き合うのだった。
そのころエイトは、家の前で木刀を振っていた。
「こんなんじゃだめだ。もっと強くならないと。」
その後もエイトは木刀を振り続けたが少しすると木刀を振っていた手を止め自分の左手を見る。
「あの時、確か左手から炎が出て…」
そう言うとエイトは左手を前に出し魔物と戦った時のように炎を出そうとしたその時。
「おいエイト、今度はお前が村を燃やすつもりか?」
びっくりしたエイトは声のした方を見る。そこにはがっしりとした体つきをし、オレンジ色の髪をオールバックにしたエイトの父親が立っていた。エイトの父親は王国の騎士長をしている。
「父さん!なんで、王国にいるはずじゃ」
「そりゃあ村が魔物に襲われたって聞いたら駆けつけるさ。でも一足遅かったみたいだ」
「えっ、それって」
「まさか、俺がつく頃にはお前たちが討伐したって言うじゃないか。母さんから聞いたよ、村のみんなを守るために必死に戦って術式も展開して魔物を炎で倒したってな」
そう言うと、エイトのお父さんはエイトの頭にポンッと手置くと
「よくやったな、エイト」
「うん。でも、こんなんじゃダメなんだよ、もっともっと強くならないと」
悔しそうな顔をしてうつむくエイトがそう答える。するとエイトのお父さんがこう言う。
「エイト…、よしわかった!俺がお前を、いやお前たちを鍛えてやる。そして十三歳になって王立魔術学園に入れ!」
「父さんが!?てっ、ええええええええええ!!」
エイトのお父さんの発言にびっくりするエイトだった。
一方そのころアカネは、家のお風呂で湯船につかっていた。
「私、あの時」
そう言うと、魔物と戦った時の出来事を思い出す。
「あの時確か、地面に何か浮かび上がって、そしたらすごい光って」
思い出している途中でお風呂の外から
「アカネ、いつまで入ってるの、早く上がりなさい」
「あっはーい、まっ明日またみんなと話そ!」
そう言うと、アカネは立ち上がりお風呂を後にするのだった。
そのころコハルは自分の部屋である手紙を見ていた。時は少しさかのぼり、ユウが診療所に運ばれてしばらくたった頃、ユウのお母さんにある手紙を渡された。
「コハルちゃん、これ」
「これは?」
「コハルちゃんの亡くなったお母さんから預かってた手紙よ。コハルちゃんが術式を始めて使った時に渡してほしいって言われていたの」
「お母さんから…」
そう答えるとコハルはユウのお母さんから差し出された手紙を手に取る。
時は現在に戻り、コハルは自室で渡された手紙を眺めていた。
「よし」
そう言うと、コハルは手紙の袋は明け中の手紙を取り出し手紙を読み始めた。手紙の内容を見てコハルは驚愕した。手紙にはユウとコハルそして自分たち家族の過去、さらには闇の軍勢との関係が記されていた。
「私は……」
驚愕したコハルは驚きと覚悟を胸にある誓いを自身にするのだった。
そして夜は明け、ユウの傷も完治はしてないが家に帰ってもよいということもあり自宅に戻った。そしてユウとコハル、エイト、アカネはいつものように村の門に向かった。それぞれの思いや覚悟を胸に再び四人は集まるのだった。
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