テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
『別世界』日本編3
過去編 『粗雑な人間と忌避感』
目を覚ますとそこはいつも見慣れた部屋。
いつもながらにパソコンを触っている最中に寝てしまっていたらしい。
机の上で腰を曲げて寝たせいで体が非常に痛む。
そんな重い腰をあげ朝ごはんを作ろうとして思い出す。
兄上はもうここにいない。
もう何も、気にする事など無いのだ。
今日は普段と違うことをしてみようか。
…久しぶりに喫茶店に入ろう。
大学は今日は一限だけだ。
お腹も空く頃だろうし、うちの大学の近くには最近出来たカフェがある。
もし二限目から暇なのであればロシアも誘ってみるか。
あいつはこう言うの来るのだろうか?
目線を上にやり何事にも興味無さそうに応答するあいつが?
いや、今までは学内の話くらいしかした事ないし、正直ロシアのことなど全く分からない。
今食事に誘い、相手の事をさらに知ることが出来れば今後の学校生活がさらに有意義なものになるのでは…
思考を巡らせている最中であったが、もう既にスマホの画面はメッセージアプリを開いていた。
“今日の二限目以降って暇ですか?”
朝の一仕事を終わらせたように私はため息をつき、前日同様登校準備を始めた。
電車の中で小説を開いていると。
ティロリン♪
と静かな空間に響き渡るには充分過ぎるほどの音が電車内に鳴り響く。
通知の切り忘れで周りの人々に迷惑をかけてしまった。
まずったな…
やってしまったことは仕方がない。
誰からの連絡かも確認せず、先に通知を切る。
メッセージアプリを開くとロシアから返信が来たようであった。
“暇だ。どうした?”
“良ければお昼ご飯をカフェでご一緒にどうかと思いまして”
“カフェ…?いいが、どうして急に”
“せっかく新しい友人が出来たのに、内面や思想を知ろうとしないのは勿体無いではありませんか”
“それはそうだな。そうだ、お前に紹介しようと思ってたヤツがいるんだ。そいつも連れて来て良いか?”
“えぇ、もちろん大丈夫です”
連れて来る人がどのようなタイプなのか分からないが、ロシアが連れて来るなら多分大丈夫であろう。
そう思っていたのだが…
「初めまして〜!日本君だよね?ロシアから聞いたよー!よろしくね!」
「コイツが友人のイタリアだ」
「初めまして、日本です。よろしく」
ロシアが連れて来た人間は、思っていた数十倍は脳天気な奴だった。
いや本当に意外な一面が見れた。
まさかこの様な何も考えて無さそうな友人が居たとは…。
「ねぇ何頼む?せっかくお洒落なカフェに来たんだからまずは食事を頼まないと!ちなみに僕はカルボナーラ」
「おま…この前一緒にファミレス行った時もカルボナーラ食ってただろ…」
「カルボナーラは僕の相棒だからね。必ず週3で食べてるよ」
「中々食の好みが偏ってるのですね…」
居心地が悪い。
ロシアには気を使わなくて良かった。
それは私と同類だったからだ。
だがイタリア、こいつは私とは違う。
同類どころか真逆だ。
「あー……日本?どうしたボーっとして。何が食いたい?」
ロシアに話しかけられハッと我帰る。
「私は…そうですね、クロワッサンとドリンクのセットで」
「おぉ!それも美味しそうだね、僕クロワッサンも大好きなんだよね〜!」
「お前食事なら何でも好きだろ」
「失礼しちゃうな、僕は美食家だよ!美味しいやつだけ食べてるもん!」
「そーかよ」
あまりに稚拙な態度に思わず顔を顰める。
イタリアへの嫌悪感を抱いたと共に、今朝まで感じていたロシアへの親近が冷めていくのが分かった。
「ロシアは決めましたか?」
「そうだな…俺はこのオムレツにしようかな」
「じゃあもう注文しちゃうね!」
そう言ってチャイムを鳴らした。
そんなイタリアの姿を見て、私は早く帰りたいとしか思わなかった。
「は〜!!お腹いっぱい!」
食事を終えた私たちはこの後はどうするかと話していた。
「私はそろそろ行きますかね…」
「え!?もう終わりなの!?みんなでどっか他に行ったりしないの!?」
「日本。この後何かあるのか?」
「………まぁ、ちょっと。」
言い淀む私を見て、ロシアはなにか察したような表情を見せた。
「じゃあ仕方ないね…あ、そうだ!メール交換しよ!」
「構いませんが…」
「よし!これでおっけー。また遊ぼうね!」
「すまない、今日は誘ってくれてありがとうな」
「いえ、これからもよろしくお願いします」
そうしてまだ夕暮れにも満たない空の下、私は家に帰った。
………今日は疲れた。
帰って早々私は布団に潜り込み、今まで入れていた力の全てを抜く。
はっきり言ってカフェに誘うべきでは無かったかも知れないと後悔している。
そんな事を考えているとき、ティロリン♪と軽快な音が鳴り響いた。
誰かからメールでもら来たのだろうか。
それを返事する気も起きず、私はそのまま眠りについた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!