テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
花火大会から1週間後
大飛 「優太、入るぞー。」
優太 「…はーい。」
大飛 「…よ。」
優太 「よ。」
俺はベッドの上で少し体を起こした。
大飛はいつもより大きいカバンを持っていた。
優太 「何その荷物…。」
大飛 「テスト期間。」
優太 「…あー。」
大飛 「家だと集中できないんだよ。」
優太 「へぇ…。」
大飛 「だからここで勉強する。」
優太 「…病室で?」
大飛 「静かだし。」
優太 「まぁね。」
大飛はノートを開けながら言った。
大飛 「それに…」
優太 「…?」
大飛 「優太いるし。」
優太 「意味わかんない。」
大飛 「集中出来る。」
優太 「嘘つけ。」
そんな事を言いながらペンを走らせる。
大飛 「あ、そうだ。」
優太 「ん?」
大飛 「今日の。」
いつものように花を受け取る。
今日は小さくて紫色の花。
優太 「…なにこれ。」
大飛 「ムスカリ。」
優太 「へぇ。」
俺は花を見ながら言った。
優太 「…で?」
大飛 「花言葉?」
優太 「そ。」
大飛 「明るい未来。」
優太 「…未来、ね。」
大飛 「うん。」
優太 「俺の未来、1年しか無いんだけど。」
そう言うと、大飛はペンを止めた。
それから少し考えてから言った。
大飛 「じゃあさ、」
優太 「ん?」
大飛 「1年の未来明るくすればいいじゃん」
優太 「…え?」
大飛 「1年だって未来だろ。」
そう言ってまたノートに向かう。
大飛 「それに」
優太 「…?」
大飛 「まだ終わってないし。」
優太 「なにが?」
大飛は少しだけ笑った。
大飛 「優太の人生。」
そしてまた
病室にペンの音が響く。
優太 「…大飛」
大飛 「ん?」
優太 「なんでそんな普通なの…?」
大飛 「なにが?」
優太 「俺、あと1年なんだよ。」
大飛 「だからだろ。」
優太 「……え?」
大飛 「1年しかないなら」
大飛は当たり前みたいに言った。
大飛 「普通に過ごした方がいいじゃん。」
優太 「…」
大飛 「悲しい時間より楽しい時間が多い方が
いいだろ。」
優太 「…お前、ほんと変。」
大飛 「よく言われる。 」
そう言いながら、また勉強を始めた。
その横で、俺はムスカリの花を見た。
(明るい未来、か。)
窓の外を見る。
もしかしたら、
ほんの少しくらいなら。
あるのかもしれない。
しばらくして、病室のドアが開いた。
先生 「失礼します。」
先生 「佐藤さん、点滴しますね〜。」
優太 「…はーい。」
先生 「今日は少し強めのお薬なので、眠くなると思いますよ。」
優太 「わかりました。」
俺の腕に針が入り、
点滴がゆっくり落ちていく。
大飛 「優太、寝たら起こす?」
優太 「…いい。」
優太 「テスト勉強終わるまで、寝とく。」
大飛 「りょーかい。」
点滴のせいか、
少しずつ意識がぼんやりしてくる。
最後に見えたのは、
ノートに向かう大飛の横顔だった。
(来週はどんな花かな…。)
そんな事を思いながら、
俺はそのまま眠りに落ちた。
どれくらい時間が経ったのか分からない。
先生 「鈴木さん、でしたよね?」
大飛 「はい。」
先生 「佐藤さん、すっかり元気なんですよ」
大飛 「え?」
先生 「きっと、お見舞いに来てくれるから」
大飛 「お見舞い…。」
先生 「今まで、友達がお見舞いに来たこと一度も無かったんです。」
大飛 「そうですか…。」
先生 「病気の事知ったら、避ける人も多いですから。」
大飛 「そういう人もいますもんね、」
先生 「これからも来てあげてくださいね。」
そして、棚にある花を見て言った。
先生 「お花も、すごく喜んでました。」
大飛 「…俺の方が、」
先生 「…?」
大飛 「俺の方が救われているのかもしれないです。」
先生は驚いた顔をした。
そしてまた、大飛はノートを開いた。
カリカリとペンの音が、
静かな病室に響いていた。
コメント
4件

やっぱり書くの上手ですね!尊敬します🫡
更新待ってました! 二人の切ないけど、ちょっぴり甘い雰囲気が最高です。