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「俺が好きなのは隼兄だけだ!」
思い出せる記憶で、1番ショックだった言葉。多分、一生忘れられないだろう。
幼い頃からそれなりにモテたし、勉強も運動もこなせた。双子の兄は人当たりが良く親切で、誠実。俺はというと…まぁ、誠実さには欠けるかもな。
隼とは違って、俺は色んな人と付き合ったし、関係を持った。みんな優しくするとすぐ俺を好きになる。簡単だと思った。
でも、簡単じゃないこともある。
隼は早いうちに彼女を作った。学校中がざわつくほどの出来事だった。みんな残念がっていた。
……あいつもその1人だった。
瑞樹。俺たちの幼馴染で、弟みたいな存在。
瑞樹が隼のことをそういう意味で好きなのは知っていた。叶わない想いを断ち切れない、不毛なやつ。
隼に彼女ができてから、瑞樹は明らか落ち込んでいる日が増えた。 鈍感な隼じゃなければ、すぐ気持ちに気づいてしまいそうなくらいに。
そんな姿が余計にいじらしくて、イライラした。だからいつも怒らせるような言葉をぶつけてしまう。
中学に上がってから、俺たちの仲はどんどん悪くなっていった。
…本当は、俺が瑞樹を好きなのに。
不毛なのはどっちだよ…。
一生隼に勝てない、すぐ近くにあるのに手に入らないもの。
こんな形で触れるつもりはなかったのに。
「はぁ…何してんだろ……」
ベッドですやすやと寝息を立てる瑞樹を見つめる。ほんと、どこで間違ったんだろうな。
頬にそっと触れてみる。
「ん……隼にぃ……」
夢まで隼のことかよ…、笑える。
隼のことなんか忘れて、俺でいっぱいになればいいのに。全部、ぐずぐずに甘やかして、教えて、俺なしじゃいられなくなればいいのに。
ドス黒い気持ちに蓋をするように深く深呼吸して、俺はそっと瑞樹から離れた。
#花園の語り部