コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
月見草
今日の午後3時ごろだろうか?卓也から「夕方ひま?」とLINEが来たのだ。
「18時からなら空いてるよ」ととりあえず返信しといた。
「 なら18半ぐらいにあそぼー」と相変わらず
軽いノリで返信がきた。
とりあえず「どこで会う?」と返信し、しばらく返信を待った。
「渋谷」
「おっけ」と送ったが、私はこの世で渋谷という街が苦手だ、 なんで渋谷ぁーかなぁーー、とつい枕に顔を埋めながら叫んだ…。
自分とは真逆のキラキラした明るい社交性の高い人間があつまり、ファッションに敏感な人達の集団なんかに、自分が歩いてたら、浮いちゃう…と焦りながらクローゼットから必死に服を漁った。
色々と服を選んでいるうちに、時刻は午後4時半を差した。
結局迷って選んだ服はビンテージ物のスタジャンに無地の白のロングTシャツにスキニージーンズだ。
とりあえずそれらを身に纏い、準備して家を出た。
慌てて小走りで、本八幡駅に続く細い通りを、ひたすら歩き、駅に着いた頃には黒髪が乱れ、汗をかいていた。
駅構内のトイレの鏡で髪を整えてから電車に乗り、耳にAirPodsを挿し、鈴木雅之&菊池桃子の「渋谷で5時」を聴きながら電車に揺られた。
渋谷駅に着いたのは結局19時だ。
ハチ公前は人集り溢れ、スクランブル交差点のビル群のモニターの爆音が鳴り響いていた。
後ろから肩を叩かれ、振り向いたら卓也がいた。
「おそーい、いつまで待たせるんだよー」と言い、「とりあえず喫煙所行こーぜ」と言い、俺達は喫煙所に向かった。
卓也はIQOSのミントを吸いながら、「お前まだ紙タバコかよー、しかもキャメル吸ってるなんておっさんみてぇじゃん」とホワイトニングされた真っ白な歯を剥き出しながらニヤニヤ笑ってる。
「いいの、これが一番安くてタバコ感あるから」と私はツンとした感じで言い放った。
卓也は「ふーん」と口をとがらせながら、バカにしたような顔でこちらを見た。
卓也は灰皿に吸い終わったタバコを捨て、一息をつき、「とりあえず服でもみに行こー」と言い、服屋に向かった。
渋谷のガラス張りの大型店舗の中に沢山並んだ服、どれも俺が着ないような派手な個性的なデザインな服ばかりだった。
卓也は、「これ可愛いじゃんと!」色々な服を重ねて試していたのだ。
俺は服にそこまで興味なかったから適当に、「あー、可愛いね。似合うんじゃない?」と適当に返事する。
その後も卓也の服選びは時間かかったが、結局一枚も買わずに店を出た。
二人で居酒屋に立ち寄り、卓也はビールと手羽先を頼み、俺はハイボールを注文した。
卓也は運ばれてきたビールをクビクビと音をたてて飲んだ。
「おまえ、手羽先の食い方下手だなぁ」と笑いながら卓也はビールを口に運んだ。
「じゃあどうやって食べるの?」
俺が聞いたら卓也は手羽先にしゃぶりつき、骨を引っ張り出したのだ。
確かに綺麗に食べれるが、なんか気持ち悪いと思った。
「好きに食べるからいい」と言い、私はチマチマ食べた。
二人で何杯か酒を飲み、居酒屋飯を堪能し、お会計を済まし店を出た。
渋谷は相変わらず、街は明るく、治安の悪い酔っ払いや、大声で奇声をあげる若者が溢れていた。
「このあと家に来る?」と卓也が聞いた。
「今日はこのまま帰る、明日色々とやる事あるし」と言い、卓也が「えー寂しいなー」と、不満気に言った。
「でもまたすぐ会えるし、近いうちまた!」と卓也は言い放ち、京王井の頭線の渋谷駅に向かった。
俺も駅に向かい、1人帰宅する事にした。
渋谷のごみごみとした忙しない街でも、ビル群の隙間から満月が一際美しい覗いている。
本八幡駅に着いたのは夜の12時半頃だろうか、あたりは真っ暗で駅前も人が少なくなっていた。
歩いて帰宅し、帰る途中の空き地に沢山の黄色い花色の月見草がいつのまにか、 咲き誇っていたのだ。
帰宅してから、風呂上がりに切子のロックグラスに氷を入れジンとトニックウォーター注ぎ、1人掛けソファーに座りながら、中森明菜の「ON NO,OH YES!」流し、ジントニックを飲みながら、今日の出来事に思いに浸ったのだ。