テラーノベル
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土曜日。
玲は朝からスマホを眺めていた。
画面には、星乃セラの過去配信。
何度も再生する。
「……やっぱり」
声だけじゃない。
言葉の癖。
笑った後に少し息を吸う癖。
驚いたときの声。
全部。
星羅と同じだった。
玲は昨日のことを思い出す。
――「私を見つけて」
あの言葉。
配信中のセラが呟いた言葉。
偶然とは思えない。
そして。
決定的なものが一つあった。
玲は昨日、星羅と別れる直前に言った。
『明日の配信も見る』
そして昨夜のセラ。
『明日も来てくれる?』
同じ言葉。
「……」
玲はスマホを置く。
「間違いない」
天城星羅。
星乃セラ。
同一人物だ。
それでも。
玲は誰にも話さなかった。
本人にも。
なぜなら――。
星羅が自分から話すのを待ちたいと思ったから。
月曜日。
「おはよう、玲くん!」
「おはよう」
教室。
いつも通りの星羅。
玲は彼女を見る。
星羅も玲を見る。
「……?」
「……」
しばらく無言。
そして星羅が首を傾げる。
「どうしたの?」
「いや」
「変なの」
笑う。
その笑い方も。
やっぱりセラと同じ。
星羅は玲の視線に気づいていた。
――もしかして。
気づいた?
胸が高鳴る。
「玲くん」
「ん?」
「私の顔、何かついてる?」
「……いや」
「じゃあ、なんでそんなに見るの?」
「……」
玲は少し迷った。
そして。
「星羅」
「うん?」
「……セラに似てるな」
「……!」
星羅の心臓が大きく跳ねる。
「そ、そう?」
「ああ」
「どの辺が?」
「全部」
「……」
星羅は笑う。
「そんなに似てる?」
「ああ」
「じゃあ……」
星羅は少しだけ顔を近づける。
「もし私がセラだったら、どうする?」
玲の目が見開かれる。
「……」
星羅はその反応を見ていた。
そして。
小さく笑う。
「……なんてね♪」
「……」
玲は何も言わない。
星羅は笑顔を作っている。
けれど。
心臓は壊れそうなくらい速くなっていた。
――気づいてる。
絶対に。
でも。
玲くんは聞かない。
どうして?
私が言うのを待ってくれているの?
それとも――。
怖いの?
昼休み。
二人で弁当を食べる。
「玲くん」
「ん?」
「もし……」
星羅は箸を置く。
「好きな人が、ずっと大切にしてくれていた人だったら……どう思う?」
「……?」
「例えば」
星羅は玲を見る。
「昔、自分を救ってくれた人が……今、一番近くにいたら」
玲の動きが止まる。
「……それは」
少し考える。
「嬉しいと思う」
「……」
「かなり」
星羅の瞳が潤む。
「……そっか」
「でも」
「?」
「本人が言ってくれるまで待つ」
星羅は俯く。
「……ずるいよ」
「何が?」
「そんなこと言われたら……」
声が少し震える。
「言いたくなっちゃうじゃん」
玲は星羅を見る。
「……」
「……なんでもない」
星羅は笑った。
放課後。
二人きりの教室。
夕日が差し込む。
星羅は窓際に立っていた。
「玲くん」
「ん?」
「目、閉じて」
「なんで?」
「いいから」
「……分かった」
玲が目を閉じる。
星羅は玲の前に立つ。
あと少し。
このまま言えばいい。
――私が星乃セラだよ。
あなたを救ったのも。
あなたが毎晩見ていた配信も。
全部、私。
でも。
星羅は言えなかった。
「……」
代わりに。
玲の手を握る。
「……ありがとう」
「何が?」
「私を信じてくれて」
「……」
玲が目を開ける。
星羅は笑っていた。
「いつかちゃんと話すから」
「ああ」
「そのときは……」
「?」
「私のこと、嫌いにならないでね」
「……ならない」
その言葉を聞いた瞬間。
星羅の目から涙が落ちた。
「……約束だよ?」
「ああ」
星羅は涙を拭う。
そして笑う。
「じゃあ、もう少しだけ秘密にしてて」
「分かった」
二人だけの秘密。
まだ名前のついていない秘密。
その夜。
星羅は自室で配信を始める。
『こんばんは、星乃セラです』
いつもの笑顔。
いつもの声。
でも。
今日だけは違った。
『今日はね……』
星羅は少し照れながら笑う。
『私の大切な人に、少しだけ秘密を見破られそうになりました』
コメントが一気に流れる。
『誰!?』
『彼氏!?』
『気になる!』
星羅は笑う。
『秘密♪』
そして。
画面の向こうの玲を想いながら。
『でも、その人なら……』
一瞬だけ、目を細める。
『私の全部を知っても、きっと受け入れてくれると思う』
配信終了。
星羅は椅子に座ったまま、静かに呟く。
「……早く言いたい」
そして。
「私が、あのセラだって」
胸に手を当てる。
「玲くんがずっと大切にしてくれてた人は――」
小さく笑う。
「ずっと、玲くんの隣にいるよ♡」
コメント
1件
読んだ……! この焦れったくて甘い距離感、たまらんわ。 玲が「全部」って言ったときの星羅の心臓の音、こっちまで聞こえてきそうだった。ずっと待つってスタンスも「強さの理由」がちゃんとキャラに根づいてて好き。 配信で「大切な人」って言っちゃう星羅、もう完全に玲のこと好きやん。バレンタインにぴったりな、じんわりくるエピソードだった。続きが気になる!
#青春恋愛
める
48
夏希(なつき)
166
奇蹟あい
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