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瀬南くんに’ダサい私服NG’と言われて、私服の少ない私は彼と会う日の前日に買い物をした。おばあちゃんが亡くなってから初めて自分の意思で外に出た気がする。私が服を買いたいと言ったらママも妹も喜んで買い物に付き合ってくれた。
どんな服を買えばいいのかすらも分からなくて色々調べて店員さんに意見をもらいながら選んだ淡い色のシャツワンピ。正直、私服なんて着れればいいと思って生きてきたから全然オシャレさとか気にしたことなかった。
大丈夫かな、他人のフリされないかな…
それにあの帰り道すごい雰囲気暗くしちゃったし今日こそは明るくしないと
駅に到着し、改札を出てどこで待っていようかと周りをキョロキョロしていると改札の隅の方で瀬南くんが端末に目を落としているのが見えた
私服オシャレだし、本人にちゃんと合ってる…’ダサい私服NG’と言ってくるのも頷ける
他人のフリされませんようにと心で祈りながら近寄ると瀬南くんが顔を上げた。
「おはよう」
笑顔で笑顔でと何度も自分に言い聞かせながら私が声をかけると彼はムスッとした顔をして、無言で私の額に軽いデコピンをしてきた
「いたっ」
「そんな強くやってないでしょ」
「会って早々でこぴんって」
「一緒に帰った時に言ったこともう忘れたわけ?」
額をさすりながら彼を見ると呆れた顔でこちらを見ている
「僕は君の家族でもないし、仲のいい友達ってわけでもないんだから、そんな人間に気遣う必要ないでしょ」
瀬南くんの目はどうなっているんだろう
家族にも顔に出やすいって言われるから私が分かりやすいだけなんだろうか。ありのままの自分でいればいいんだと少し肩の力が抜ける
「じゃあ今日は瀬南くんと友達になれるようにがんばる!」
「頑張らなくていい。変な気遣いしてくる友達なんていらない」
「じゃあ気遣いしない友達になる!」
「親しき仲にも礼儀ありって言葉知らないの?」
「えー、じゃあどうすれば瀬南くんと友達になれるの?!」
「自分で考えたら。それより、お昼食べたい物ある?」
スマホに目を落として指を滑らせる彼の横顔を見つめながら答える。
「何でもい…」
「何でもいいとか言ったら置いてくから」
「……ぱ、パスタが、食べたい、です」
「パスタね」
何度か画面に指を滑らせて表示画面を見ると、調べ終わったのかスマホをポケットにしまい、私と目を合わせて声をかける。
「行くよ」
「あ、服、大丈夫かな?」
「服?」
「ダサい服はダメって」
「そんなに他人のフリして欲しかったの?」
「違う!けど、これセーフなのかなって」
初めて着る服だから鏡で見ても浮いてるようにしか見えないし、ダサい服NGってことは服装に条件のある場所に行くかもしれない
「いちいち言葉にしないとダメなの?」
「合格かな?」
「他人のフリしてないんだからそれが答えでしょ、及第点だけど」
再び’行くよ’と声をかけてきた彼は私が歩き出すのに合わせて歩いてくれる。
「よかった…昨日散々悩んで買ったから、これで門前払いされたらどうしようかと」
「よっぽど変な組み合わせしなければ、ダサい服装にはならないでしょ」
「変な組み合わせと良い組み合わせの違いが分からないんだけど」
「…冗談だよね?」
瀬南くんと こうやってちゃんと喋るのはまだ2回目なのに余計なことを考えずに会話が出来ている。’作った顔をするな”気遣う必要ない’そうやって言ってくれたからなのかな、すごく話しやすい。
道に迷うことも、スマホに目を向ける事もなく、まるで通い慣れている道のように歩き進める瀬南くんについていくとパスタ屋さんへと到着した。