テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#三角関係
霞花怜
1,066
#イラスト部屋
寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
695
夕暮れ時のアパートの扉がガチャリと開き、「ただいま戻りました、柊吾さん……っ!」と、残業を終えて猛スピードで駆けつけてきた瑞樹がリビングに飛び込んできた。
「おかえりなさい。黒瀬さん、お疲れ様……わわっ!?」
言葉を最後まで言い終える前に、勢いよく飛び込んできた瑞樹の大きな体にぎゅうっと強く抱きすくめられ、そのままソファへと押し倒される。
耳元に押し付けられた瑞樹の広い胸からは、トクトクと早い心音と、心地よい汗の匂いが伝わってくる。
「ふう……やっと終わりましたよ……。早く柊吾さんに会いたくて、午後からの仕事、気もそぞろでした」
大型犬が飼い主に甘えるように、瑞樹は柊吾の首筋にぐりぐりと顔をうずめ、大きな体をもてあますようにすり寄ってくる。
そんな愛おしい姿に、柊吾はふっと頬を緩ませ、その少し汗ばんだ濡れた髪を優しく撫でた。
「そっか、お疲れ様。最後までちゃんとお仕事頑張ったんだよね? えらいえらい」
柊吾がまるで子供をあやすように頭をポンポンと叩けば、瑞樹は不満そうにわずかに眉を寄せた。
「子ども扱いしないで下さい」
「ご、ごめん……。なんだか可愛いなって思ってつい……」
照れくさそうに目を伏せた柊吾を見上げて、瑞樹はふっと柔らかく、けれどどこか熱を孕んだ笑みを浮かべる。
「可愛いのは柊吾さんの方ですよ。……今日のステージ、凄くよかったです。あまりにも可愛すぎて、あの場で我慢できずに襲ってしまいそうでした」
真面目な顔でサラリととんでもないことを口走りながら、瑞樹は柊吾の腰に回していた腕の力をさらにぐっと強める。
「はっ!? なっ、なっ……ばかっ……!」
耳まで真っ赤に染め上げ、慌てて瑞樹の肩を両手で押し返そうとする柊吾。しかし、愛おしそうな熱を帯びた瑞樹の瞳は、逃がす気など微塵もないようにじっと彼を捉えて離さない。
「ふふ、冗談ですよ。……まあ、でも本音でもありますけど。エッチな柊吾さんを知ってるのは俺だけで充分なんで……。他の人間になんて、絶対誰にも見せたくないです」
涼しい顔でそう告げる瑞樹に、柊吾はカッと思い切り頬を膨らませた。
「えっちって……僕、そんなんじゃ……ないも……んっ」
否定しきれないまま言葉を濁す柊吾を、瑞樹は意地悪く見つめ返す。
「違うんですか? 俺がいない時、一人で毎晩僕の事思い出して玩具使ってシてたくせに?」
「うっ……そ、そんな恥ずかしい昔の話、今持ち出さなくてもっ……!」
図星を突かれた上に耳元でそんな甘い暴露を囁かれ、柊吾は顔から湯気が出るほど真っ赤になり、バタバタと両手で瑞樹の胸元を押しやった。けれど、余裕綽々な笑みを浮かべた瑞樹には全く効いていない。
「事実じゃないですか。……ほら、今日頑張ったご褒美の続き、たっぷり可愛がってあげます」
そう言って瑞樹の顔がゆっくりと近づいてくる。
甘い熱に当てられ、柊吾は自然と目を閉じかけながら、そっと瑞樹の広い背中へ腕を回した。触れ合う吐息の距離、あと数センチで唇が重なる――そのはずだった。
「――そういえば」
瑞樹の動きが、ぴたりと止まった。
「……え?」
薄目を開けた柊吾は、唇のすぐ手前で静止したままの瑞樹の顔と、間近で正気に戻ったような真剣な瞳に気づいて、ぱちりとまばたきをする。
キスされる、と身構えていた分、肩透かしを食らったような気恥ずかしさに、頬がじわりと熱くなった。
コメント
1件
うわあ、この2人ほんとにもう……! 残業終わりに駆けつけて抱き着く瑞樹の大型犬感と、それを受け止めて撫でる柊吾のあたたかさ、どちらもあまりに愛おしいですね。「可愛いのは柊吾さんの方ですよ」なんてさらっと言える瑞樹の執着っぷり、たまらない。そしてあの最後の「そういえば」で寸止めされるところ、完全に読者の私も肩透かし食らった気分になりましたよ(笑)。また続きが気になる終わり方……!