テラーノベル
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今、僕の目の前にいる本当に人間なのか疑いたくなるほど美しいその人は、息を切らして僕の腕を強く掴んでいる。
僕が見とれていると凄い力で僕のことを引き上げるので、美形なだけでなく力まであるとか絶対モテるだろうなこの人。だなんていう現実逃避をしたのは許して欲しい。
本当にこの人は青い瞳が綺麗で髪も白黒の世界の中で金色に光を放ち…青い?金色?
「…この大馬鹿野郎が!!!!」
その瞬間、僕がとある異変に気がつくと同時にとんでもない怒りを乗せた声が僕の耳に響いた。
あまりに唐突だったし、僕の視界に映っているものがありえないものである事も相まってか、僕は一言も喋れずに固まってしまった。
そんな僕に目もくれず目の前の規格外の人は言葉を続ける。
「なんでお前はこんな高い所から飛び降りなんてしたんだ!!こんな所から飛び降りたら普通死ぬだろうが!!そんな事もわかんねえのかよ!馬鹿!!俺がどれだけ焦ったと思ってんだよ!!このボンクラ!!」
最後の一言には流石に僕も頭にきたからか、さっきまで固まっていたとは思えない速さで僕自身も喋りだす。
「だ、誰がボンクラだ!!僕はボンクラなんかじゃ無いですし!!そもそも貴方は誰なんですか!!なんにも関係ない癖に!邪魔しないでくださいよ!!」
「邪魔するだろ!普通!誰かが飛び降りなんがしてるのに、邪魔しないような奴いたら、それこそ頭可笑しいだろ!!」
「その通りですけど…なんで貴方は色がついていて、それでいて顔が見えるんですか…なんで瞳が青くて綺麗なんですか?なんで髪が金色に輝いてるんですか?なんで肌がほんのり赤いんですか?なんで、なんでなんです?教えて下さいよ…」
「はぁ?何言ってんだよ?普通にお前だって色はついてるし、周りだって色はついてる。顔だって見えるだろ?」
「違うんです。僕、自分以外の人の顔に靄がかかって見えるんです。色も白黒だから分からないし…最初はこんなんじゃなかったんですよ?なのにいつの間にかこんなになって…教えて下さい。僕にとって、貴方は何なんですか?なんで貴方は、他の人と違うんですか?」
勢いのまま話してしまったせいで言うつもりのなかった変な事を言った挙句、変な事を聞いてしまった。最悪だ。多分相手も困っているだろう。そう思っていた矢先、思ってもいないほど優しい声で目の前の彼が喋った。
「…知らねえよ、そんなの。まぁ自己紹介がまだだったのは悪かった。俺の名前は佐野命。百鬼学園って言う所で教師をしてるんだ。今日は偶々ここに用があったから来たんだよ。お前が大変なのは、大体知ってる。だから大丈夫だ…って言っても、何が大丈夫かなんて俺もよくわかってねえけど。
後、どうでもいいかもだけどお前、ずっと敬語だけどタメ口でいいから。」
「教師…」
「そう。教師…って言っても、なりたいような教師にはなれてないんだけどな。」
「えっと、こんなこと聞いたら迷惑かもだけど、佐野さんがなりたかった教師ってどんな教師なの?」
自分がなりたかった職業についての質問をついしてしまう。
「佐野さんじゃないくていい、後、質問は全然迷惑じゃないから大丈夫。」
「…!ありがとう!じゃあ命君で!」
「…は?」
嫌がらせてしまっただろうかと咄嗟に声を出す。多分僕は、自分が思っている以上に、最初から、この人の事が好きだったのだろう。だから少しだけ、馴れ馴れしくなってしまった。反省だ。
「えっ、いや、だった?」
「いや、全然大丈夫だ。ちょっと驚いただけだから」
「そっか!良かった!」
「あー…なりたかった教師が、どんな教師かって質問だったよな?」
命君が話を元に戻してくれる。
「うん!あってるよ!」
「良かった。俺がなりたかった教師は…俺の恩師みたいな教師かな」
「命君の恩師?どんな人なの」
「あー…難しいな…」
「難しいなら大丈夫だよ!無理に答えて貰う必要ないし」
「いや大丈夫だ。俺の恩師は…そうだな。簡単に言えば、馬鹿でヘタレで変態のお人好しだな。」
「ブッ…ふふふ…何それ!言い過ぎじゃない?」
つい笑ってしまったが、これは命君が悪いだろう。いくら何でもこれは酷過ぎる。と、同時に疑問や気になる点が出てくる
「命君は、どうしてその人の事を恩師だと思うの?」
こんなにボロクソに言っているのに恩師だなんて、と思ったので言ったが、少し考えればわかったかもしれない。
話す時の声の弾み方。彼の表情の緩み。キツイ言葉に聞こえるが、そんな風に言えるくらいには信頼しているということ…これはまぁ普通に嫌いでも言えるかもだが、ならお人好しとは言わないだろう。
「うーん…まあ色々あるけど、俺の抱えてるもん全部吹っ飛ばして、グイグイ人の中に入って来るのに、急に俺なら大丈夫だーとか、俺が俺を信じられないなら、自分が信じるーとかそんなこと言ってきてさ、馬鹿らしいって思うけど、あいつの言うことなら全部信用出来て、全部、安心出来るんだよ。」
「……凄いねその人」
あまりに凄いその人に驚いたが、何より驚いたのは、彼がそんな凄い人になりたいと思って、それで教師になって、今も頑張っている事だった。だって僕にはきっとできっこないから。だから、彼への尊敬の意味も込めて、彼を見つめた。
「だろ?すげぇんだよ。そいつ」
「うん!それでいて命君は、その人の事が凄く大切なんだね」
「なっ…そういうんじゃねぇし…」
「え〜!うっそだぁー!だってその人の話してる時の命君、凄く愛おしい物を思い浮かべるような表情で、優しい声して話してたもん!」
「マジかよ…俺そんな顔してたのか…」
「ふふ、命君はそれに気付かないくらいには、楽しく話してたんだね!なんだか子どもみたい!」
「………は、……!あっ、いや…こ、子ども扱いしてんじゃねえよ!」
何故かは分からないが、彼が凄く動揺したように見えた。怒ったからかな?
「ごめんね。とゆうか命君はここに用があったんじゃないの?こんなに僕と話してて大丈夫そ?」
「嗚呼、そうだったな。つい忘れてた。」
「僕が案内とかしようか?手伝うよ?」
「いや、大丈夫だ。俺はお前…晴明に用があってここに来たからな。」
「へ?」
「単刀直入に言う。晴明。俺と同じ職場…百鬼学園で、働かないか?」
続く
コメント
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第2話、一気に世界観に入り込めました!白黒の世界で唯一カラフルに見える命君の存在、すごく象徴的で惹かれました。「ボンクラ」とか言い合いながらも、命君の恩師の話をするときの優しい声と表情のギャップにきゅんとしました。続きが気になります✨
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