画面越しに話す彼に知らず知らず見惚れていると、
「本日は、もう一人いらしていただいています。クーガのキャンペーンモデルの、AYAさんです」
紹介とともに、あのAYAさんが現れた──。
彼女は、一旦は不倫疑惑で評判を落としたが、真中氏の謝罪会見で再び息を吹き返し人気を取り戻していた。
「相変わらずきれいだな……」
ポツリと呟く。
彼女が彼のそばにいて、自分は画面の外にいることが、仕事だからとわかってはいてもどこかやるせなく感じられる。
AYAとさやかって、ちょっと音も似てるよね……。
似てるから、よけいに気になるとか、我ながらちょっと情けないかも……。
テレビの中のツーショットを見ていることに、なんとなくモヤモヤとしてきて、リモコンに手を伸ばし電源を落とした。
……貴仁さん、そろそろ早く帰って来てくれないかな。
でないと私、貴仁さん不足みたいです……。
悶々とする思いを抱えて、スマホの時計に目を落とした。
時刻は、夜の九時を回ろうとしていて、少し早いけど彼にも会えないしもう寝ちゃおうかなと思った……。
もう、貴仁さんのバカ……。
違う、貴仁さんは別にバカじゃなくて……。
仕事してるだけなんだもの、バカなわけなんかないのに、だけど……寂しい。
私だって、あなたといっしょにいたいのに。なのに、私じゃない彼女と、いっしょにいるなんて──。
やっぱり、貴仁さんのバカ……。
だから違うの、本当にバカなのは、きっとこんなことをうだうだと思っている自分で……。
そう、自分自身で……。取り止めもない思いに、いざ現実を突きつけられると、涙が滲みそうにもなってきて、ベッドの中でギュッと固く目を瞑ると、鼻まで毛布を引き上げて、無理やりにでも寝てしまおうとした。
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