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俺は、目の前の光景に圧倒されていた。

「万里の長城かな?」

口に出すつもりはなかったが…つい、口に出してしまった。

「ホントだね。どこまで続いているんだろうね」

良かった。俺だけじゃなかったようだ。

「見てください!凄い行列ですよ!」

遠くに門っぽいモノが見える。そこに向かうように入門待ちの長い行列があった。

ただ、俺達は日本で渋滞や行列は見飽きてるからなぁ。

ミランの驚きには共感出来なかったから、

「そうだな。入るのに時間が掛かりそうだな」

それくらいのことしか言えなかった。

「でも、普通に進んでいるからすぐじゃないかな?」

もっと共感出来ない奴がいた……

そういえばテーマパークでも、嬉々として行列に並んでいたもんな。




入り口の列に並んでから、30分程で順番が来た。

これなら確かに聖奈さんの言う通りだな。

「冒険者か。馬車の中を検めるぞ」

門にいた兵士にそう告げられたので、馬車の中を見せた。

「荷物が少ないくらいだな。通ってよし」

王都なのにいい加減だな……

それだけ治安や治世がいいんだろうな。この国は江戸幕府くらい続いているし。

「ここが王都サクシードですか…」

ミランは感慨深そうだったが、正直にいうと街の入り口だから他の大きな街と大差はない。

「建物の感じは変わらないね!とりあえず宿を探そっか!」

「そうだな。長期間泊まれるところがいいな」

俺達は宿を探すため、道行く人に聞いて回った。




「ここが一番声が上がったところだな」

目の前の建物は、正面は総石造りで後は木造の綺麗な建物だった。

「小さなお城みたいだね。空いてるといいんだけど」

「かなり広そうなので空いているのではないでしょうか?」

聖奈さんとミランが降りて、宿の人に聞いて来てくれることになった。


暫く待つと2人が出てきた。

「どうだった?」

「空いてたよ!料金はみんなで一泊35,000ギルだったけど、いいよね?」

いや、どうせもう返事してるんだろ?何故聞く……

「任せてるからいいぞ。馬車は奥か?」

「はい。馬車は裏に回してと言われました。店の馬番がおられるそうなので、そのまま渡せばいいと」

俺達は馬車を預け、荷物を持って部屋へと移動した。



「この後は?」

聖奈さんの言葉に、少し考えて口を開いた。

「冒険者組合に納品しに行くくらいかな?」

「じゃあその後は外でぶらぶらしない???」

このじゃじゃ馬を俺には止められそうにないから、頷くことしか出来なかった。




宿を出た俺達は、馬車で冒険者組合ギルドを目指した。

宿の人に組合の場所を聞いているから、道には迷わないだろう。

王都のメイン通りは石畳みだが、まるでタイルのように綺麗にカットされていた。

魔改造のお陰で元々少なかった馬車の振動が、日本の電車と変わらないくらい静かなモノになった。

まぁ、人が多くてノロノロ運転だけどな。

道幅はメイン通り以外は5メートル程で、馬車がすれ違えるギリギリだったが、メイン通りは倍以上の広さで、まるで歩行者天国のように人で溢れていた。





「あれが冒険者組合ではないでしょうか?」

目の良いミランが見つけた建物には、ゴブリンに剣を突き立てる絵が描かれた看板が付いている。

「そういや、あんな看板だったな」

他の街でも見ていたが、絵が汚くて覚えていなかった。

「やっぱり王都は冒険者組合も綺麗だね!」

冒険者組合の建物は3階建てで、木の枠組みに漆喰の様な白い壁で造られていた。

窓は2階以上がガラス窓だ。

「裏手に馬車を停めよう。メイン通りここだと邪魔になるからな」

「うん。じゃあ向かうね」

組合の裏に馬車を向かわせた。




裏手に回った俺達は、職員と思われる人に声を掛ける。

「すみません。組合に素材の納品に来たので停めてもいいですか?」

「もちろんです。納品物は何ですか?良ければ運びますよ?」

おお。助かる。オーク肉はかなりの量があるからな。

「助かります。オーク肉とオーガの討伐証明部位です」

オーガと聞いて少し驚いた顔をされた。

確かにこんなヒョロそうな男と、痩せ型の女性、少女の三人組で、オーガを討伐出来るとは思わないよな。

職員に後を任せて、割符を受け取った俺達は建物の中へと入っていく。



なかも綺麗だね。人も思っていたほどいないし」

「多分時間帯のせいではないでしょうか?王都の冒険者の数が、この国では一番多いですからね」

そんな雑談を暫くしていると、割符に書かれていた番号を呼ばれた。



「お待たせしました。こちらが報酬になります。

それと、オーガを討伐されていましたので、Dランクにランクアップ出来ますが、今されますか?」

「「「お願いします」」」

声を揃えてカードを提出した。

やはり格上を討伐すると、ランクが早く上がるようだ。

ミラン曰く、Dランクは普通の冒険者が最後に辿り着くランクなのだとか。

異世界この世界の殆どの人達は剣や槍・弓で戦う。

オーガを倒せるのは一握りの剣豪か、魔法使いがいるパーティくらいだ。ただの弓では擦り傷さえつけられないだろう。

例外は魔道具を使うことだ。俺達には安価な銃火器があるから調べていなかったが、この世界の兵器は魔法が付与された武器、又は魔法が込められた道具だ。

ミランに手榴弾くらいの威力の魔道具の値段を聞いたら、使い捨てで500,000ギルはするのでは?とのことだった。

俺達が買った手榴弾は闇取引だったためか、一つ数千円だったが、実際に戦地で使われている手榴弾は、モノによるが数百円程度のモノらしい。

魔道具を今のところ買うことは無さそうだな……

納品を済ませ、ランクアップした俺達は、馬車を宿に戻してから街に出た。







「結構歩いたね!」

「そうですね。少しお腹が空きました」

「よし。何処かの店に入って、夕食にしよう」

目についた食堂に入り、料理を注文した。

「なんか一箇所に固まってると言うよりも、沢山の街が入ってる感じだったね」

聖奈さんが言う通り、住宅街、商店街、職人街という風に分かれているのではなくて、リゴルドー地区、ウィンダスター地区のように、いくつかの街を足していったような街の作りをしていた。

「組合もいくつかあるみたいだしな」

これは寄った店の人に教えてもらったことだ。

「例の商会の場所も分かりましたしね」

家具を大量に売っているだけあって、大きな店だった。

俺達の当面の目的でもあるため、すぐに見つけられたのは良かった。

「名前は確か…メイブル・ウィンクルでしたね」

どうしてこの名前をつけたのか気になるが……

調べればわかることか。

「もう!2人とも!今日はランクアップ祝いなんだから仕事の話はなしだよ!」

そうだったのか……

てっきり王都を散策しているだけだと思っていたわ。

楽しく飲み食いした後は、いつもの輸送をして、眠りへと就いた。






翌朝。朝食を宿で食べた後、部屋へと戻り話し合いをすることに。

「それで作戦というのは?」

ミランが聖奈さんに向けて言葉を発した。

「これを使おうと思うの」

昨晩会社から持ってきた小包だ。

「何が入っているんだ?」

俺も気になっていた。

ガサガサ

「これだよ」

黒い小さなプラスチックが、箱から出てきた。

「盗聴器?って書いてあるな」

「うん!私がされそうだったから、知識を高めて防犯に繋がるように買ってたんだ!」

うん。暗い話を明るく話すのはやめような。よくわからんくなるから。

「じゃあこれを仕掛けてメイブル・ウィンクルを調べるんだな?」

「そういうこと!これなら異世界この世界だと何かわかんないもんね!

成功率爆上がりだよ!」

問題は……

「それが音を伝える道具だと言うのは分かりましたが、どこに仕掛けるのですか?」

そう。そして、どうやって仕掛けるのかも問題だな。

「それだよね…私達がお客さんになって店内に仕掛けても、そこだとロクな話が聞けないよね。

忍び込めたら良いけど…流石に難しいかな」

俺達はDランク冒険者だけど、実際の身体能力はあってもEランクだもんな……

「私が忍び込みます」

はぁ。言うと思った……

「ダメだ。例えどんな理由があってもな」

中途半端な言葉だと言い負けるから、完全に拒絶しておく。

「っ…」

「ミランちゃん。セイくんの言う通りだよ。そんなことはさせられない。

そんなことを覚悟するくらいなら、良い案を考えよう?」

「…すみません」

まあ、ミランがこの件については、俺達に負い目を感じていても不思議じゃないからな。


「安心しろ。俺に良い考えがある」

「「えっ!?」」

いや、そんなに驚かなくてよくない!?


俺は腑に落ちない気持ちを隠して、2人に作戦を伝える。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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