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凪は終始ドアの方を向きながら体を洗った。前回は、背中を取られて捕まったのだ。正面からならまだ抵抗はできるはず。顔にシャワーをかけて怯んだ隙に逃げれば……そんなことを考えながら磨りガラスの向こう側をじっとみていた。

しかし千紘が入ってくる気配はなく、凪は気にしていることに段々と疲れを感じた。それでも警戒心は拭えない。

しっかりと体を洗って後は出るだけ。そんな時にふと思う。


試すってことは……後ろも触るんだよな。


そんな疑問を抱く。そもそもそれを確かめるために千紘に声をかけたのだから、触れてもらわねば証明もできない。

凪はぐっと下唇を噛んでボディーソープを少し手に取ると、しっかりと泡立ててから後口に触れた。


一応、エチケットとしてちゃんと洗わなければ……。そんな配慮までしている自分が情けなくなった。けれど、不潔だと思われるのも羞恥心が邪魔をする。


結局自分で洗浄しつつ、刺激を与えてしまったせいか、下半身の前面はしっかり反応してしまっていた。


何でだ……。何をやってんだ、俺は。自分で勃たせてどうする。


盛大に落ち込んだ凪は、結局それが落ち着くまで浴室にこもり、千紘が入ってくるか来ないか警戒することもすっかり忘れて暫く自分の下半身を見つめていた。


「凪ー? 大丈夫?」


凪がはっと顔を上げた時には、脱衣場から千紘の声が聞こえた。シャワーを浴びるだけにしてはあまりにも長く時間がかかったものだから、考えごとでもしながらのぼせているんじゃないかと千紘が心配したのだ。


「だ、大丈夫! もう出るからあっち行ってろ!」


慌ててそう言った凪の声を確認した千紘は「大丈夫ならいいけど」なんていいながら脱衣場を後にした。

気配が遠ざかって行くのを確認してからようやく凪は安心して浴室のドアを開けた。


冷えた脱衣場の鏡が、ぶわっと一瞬で曇った。シャワーを浴びただけでこれなのだから、自分でも長いこと浴室に湯気を立ち込めていたのだと理解する。


しょうがねぇじゃんか……おさまんなかったんだから。


今ではすっかりしょぼくれた下半身を見ながら凪は体の水滴を拭った。


バスローブを羽織った凪はドアを開けて顔だけ出した。バチッと千紘と目が合って、にっこりと微笑まれた。


「おかえり。ほんとに大丈夫だった?」


「大丈夫に決まってんだろ……」


「もしかして俺が入ってくるまで待って」


「そんなわけあるか! さ、さっさと行ってこいよ!」


凪は千紘の声を遮ってそう言った。ソファーから立ち上がった千紘は、ゆっくり凪に近付いた。


「すぐ出てくるよ。ベッドの中にいていいよ」


そう言いながら千紘は、凪が覗くドアに手をかけた。凪よりも高い位置から凪を見下ろし、濡れた首筋に目を向けた。

凪に気付かれないよう舌なめずりした千紘は、香るボディーソープと凪から発する蒸気に興奮する。

下半身の血流がよくなるのを感じながら、凪の腹に腕を回したいのをぐっと我慢した。


「い、いい! まだ暑いし!」


ささっと千紘の横をすり抜けて、凪は入れ替わるようにしてソファーへと走った。平然を装うとしても、その緊張はしっかりと千紘へと伝わる。

恐怖も後悔もひしひしと伝わってきて、それでも帰ると言わない凪が可愛くて仕方がなかった。


あー……もうちょっとで手に入る。でも、我慢我慢。ここでガッツいたら、今まで待っていた努力が水の泡になる。

凪の信用を得られるなら、少しの我慢くらいなんでもない。


そう思いながら走る凪の背中を見つめた。バスローブの裾から足が覗く。セラピストとして清潔感を気にしているからか、足はツルリとしていてムダ毛など一切なかった。


前も思ったけど、凪って全身ツルツルなんだよね。もちろん、アッチも。あー……ぶち犯してぇ……。


凪を抱いた日のことを思いだし、千紘はゾクゾクと欲望が湧き上がるのを感じた。それを感じさせないよう脱衣場のドアを閉める。

凪が視界から消えた瞬間、千紘の頭の中は涎を垂らして千紘を求める凪の姿を想像した。


ご馳走まであと少し。千紘の中でカウントダウンが始まった。


体を洗って浴室から出た千紘は、逸る気持ちを抑えながら体を拭く。手に取ったバスローブは女性用だった。

そういえば凪が既に着ていたっけ。そう思いながら広げてしまったバスローブをそのまま洗面所横に置いた。

必ずしも男女が利用するとは限らないのだから、男女兼用かいくつかサイズを用意してほしいものだと千紘は思う。


千紘が長身とはいえ、凪もそこそこ身長があるのだ。メンズもののバスローブでなければ入らないのは間違いない。こっちを着て、綺麗な足がしっかり見えるのも悪くないなぁとチラリと置いたバスローブを見た千紘だったが、それを凪が着てくれるとは到底思えないため諦めた。


その代わりにバスタオルを腰に巻き付けてドアを開けた。上半身裸の千紘にギョッとして体を跳ね上がらせた凪。小動物のようなその仕草に千紘は思わず笑いそうになった。


「バスローブ1着しかないんだよ。あれじゃあ、さすがに入んないよ」


千紘が後ろを指さして言えば、凪は自分のバスローブを確認するように胸元の生地を掴んでそれを見つめた。

そっか、と納得した様子の凪が丸い目で千紘を見た。その時にはぐっと千紘との距離が近付いていて、目の前でにっこりと千紘が笑う。


「っ……」


凪は驚いて背中をどっと背もたれに押し付けた。ギシッとソファーが音を立てる。


「暑いの平気?」


「もう……よくなった」


「そう? さて、どうする? ベッド行く? それとも俺が怖いなら暫く雑談でもする?」


凪の視線に合わせるように前屈みの姿勢をとった千紘。凪はその言葉にギリッと奥歯を噛んだ。普段の自分ならもっと余裕を持って女性に接するのに。このまま自然な流れで施術に入れるのに。

そんな性感のプロがこの後どうするかに戸惑い、「俺が怖いなら」なんて言われている。凪はその事実にかあっと頭に血が上る。


「べ、別に怖くなんかねぇよ! 言い出したのは俺なんだから! 言っとくけど、俺主導で試すんだからな!」


凪は怒鳴るようにそう言い放つ。千紘は涼しい顔をして「はいはい」なんて返事をするが、凪をベッドへ誘導するのには成功したと口角を上げた。

ほら、もう諦めて俺のモノになりなよ

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