ナッキ、サニー、ヘロン、ドラゴの悪魔だけで無く、仲間の身を案じた幹部達全員で、ランプに案内されて辿り着いた森の中の沼で長老の話を聞く。
「では、悪魔として永遠の如き時を生きる、その覚悟があるというのじゃな?」
「そうです、そうすれば石化から仲間達を守れるんでしょ、だったら迷う必要なんて無いからね、早く成長出来る方法を教えて欲しいんだ!」
ナッキの声に頷いた長老は、周りにいるヒットやオーリ、カエルやモロコ、ティガを見回して彼らに語り掛ける。
「お前達も魔獣化する覚悟はある、それで良いんじゃな?」
どうやら他のメンバーも魔獣化出来る方法らしい。
全員が顔を見合わせた後、神妙な面持ちで頷き返したのを確認した長老は、視線をナッキに戻して言う。
「それならば教えてやらねばなるまいの、望みを叶える為にはの、お前たちの池『美しヶ池』にもう一つ、新たな仲間を迎え入れなければならないのじゃが…… 問題無いじゃろうか?」
なんとなく勿体ぶった雰囲気を醸し出し捲っていた長老の話し方に、少なく無い緊張を感じていたナッキは、一気に表情を緩めホッとした口調で長老に返す。
「何だ、そんなの余裕だよぉ! 今までだって僕にモロコ、カエルにギンブナ、ウグイ、それに鳥族とトンボ族、これからはランプ君たちザリガニだって仲間になるんだからね、余裕ぅー! どこの誰を迎えに行けばいいのぉ、早く言ってよ、余裕ぅー!」
「そうかそうか、ナッキ王はほんに広い心を持って居るのぉ、仲間にする種族を迎えに行く場所はな、この沼から水路に出た先、上流に遡上した場所にある集落じゃよ」
ナッキは思う。
――――あの不気味な気配が充満している水路の上流、か…… 正直な気持ち行きたく無いけどぉ…… でも、ヘロンの仲間たちを救う為、だもんな…… ううん、それだけじゃないな、いつ僕たち水生生物や両生類、ドラゴ達昆虫類だって同じ様に石化し始めるか判らないんだからな! 恐ろしい気配位なんだい! 僕は王様なんだっ! 皆の事は守ってみせるっ!
「判りました長老様! 僕が水路を遡上して新たな仲間を連れてきます! それで何と言う種族を仲間にすればいいんでしょうか? 教えてください」
長老は鷹揚(おうよう)に頷いてから静かな声で答える。
「うむ、お前達の望みを叶える為に、仲間にしなければならない種族、それはな、ニンゲンと言う種族じゃぞい」
「えっ! …………ニ、ニンゲン」
なんと、ナッキをはじめ、ギンブナ達が心の底から恐れているニンゲンが必要な仲間だったらしい。
悪魔として成長する為に、冷酷無比な虐殺者、別の意味で悪魔と誹(そし)った種族を迎え入れる事になろうとは……
ナッキ達ギンブナの武者震い(?)は沼の水面を大きく波打たせるのであった。
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