テラーノベル
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はるちゃぁん、と眠そうな声が聞こえて、僕は咄嗟に振り返った。びしょ濡れの癖っ毛をかき回し、薄着でリビングに入ってこようとする義兄を見て慌てて立ち上がる。シャワーを浴びて濡れた髪のまま来てしまったらしい。
「義兄さん義兄さん、ダメですって、そんな格好では風邪をひきます!」
「ねむい……」
言いながら半分眠っている彼をなんとかソファに座らせ、タオルを肩にかけて、僕は洗面所にドライヤーをとりに走った。
全くあの人は自分の見た目にも体調にも全く頓着しないから困る。
洗面所の鏡越しにうっすら微笑む自分自身を横目に、僕はドライヤーとブラシを手にリビングへ駆け戻った。
八割がた寝ている義兄の色の抜けた茶色の髪をブラシで梳きながらドライヤーの熱風を当てていく。
「ねむいー……」
「ねむいのは分かりましたから、動かないでください」
頭が揺れ始める義兄と僕の攻防戦。この人髪の毛の質も含めて猫みたいだ。全くじっとしていてくれない。
「ねえはるちゃん、ドライヤー使い終わるのいつになりそう? 俺風邪ひいちゃいそう」
背後から聞こえてきた声に、僕は思わず振り返った。ドライヤーを止めてみれば、ずぶ濡れの髪をくしゃくしゃかき回しながら僕の方を見ている義兄。
「——あれ?」
ソファを見れば誰もいなかった。
そんな。じゃあ今まで僕が格闘していたのは——
「はるちゃんっていじりがいあるから」
そう言って凍りついた僕の手からドライヤーを掠め取った義兄は、僕の頭をポンポンと撫でた。
コメント
1件
第4話、めちゃくちゃ好き…!義兄さんのぽやぽやした感じと、それを世話焼こうとする「僕」のギャップがたまらない。特に、ドライヤーかけてる最中に実はソファに誰もいなかったオチ、完全にやられた。義兄さん、計算してやってるのか天然なのか絶妙で、にやにえが止まらなかった。2人の距離感がじわじわ縮まってるのも良いな。続きが気になる〜!