先に動いたのは雄大。短刀を手に持って無言で駆け出して陛下に迫る。陛下の拳が雄大の顔面を捉えたが、雄大は怯まず短刀を陛下の眼前に突き出した―― 次の瞬間、短刀はもう陛下の手の中にあった。だが思わず叫んでしまった。
「陛下、顔に傷が!」
返り血は顔にはかかっていなかった。今、陛下の頬に小さな傷ができて血がにじんでいるのは、雄大が突き出した短刀によるものに違いない。
陛下が指で頬をなぞると、指に血がついていたようだ。
完璧に見える陛下だがいくつか欠点もある。その一つは理性が足りないこと。魔王時代からすぐに殺すし、気に入らないと気が済むまで痛めつける。
ただでさえ少ない陛下の理性は自身の血が流されたことを知って完全に消し飛んだ。
「ぶっ殺す!」
陛下は奪った短刀を手に雄大に襲いかかった。陛下は満面の笑顔で雄大を切り刻む。あまりの恐怖に雄大の手下の誰もが止めに入ることができない。
雄大の処刑はほかの誰に対するものより凄惨だった。スマホ画面をのぞくと、慎司と徹也の姿ももうなかった。二人も吐き気を催してトイレに駆け込んだのだろう。
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