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森の中を太陽の様な髪の少女が
力強く大地を踏み込み、駆けてゆく。
荒くなった呼吸を整え、後ろを振り返ると
近場にあった木に手をかざす。
「たお…れろぉ…!」
少女が念じると木はミシミシと音を立て
少女と目の前の怪物を隔てるように倒れる。
「今だ!ジーク!」
そう言うと少女はばっと頭上の木を見上げる。
「よくやった、アリィ。」
木の上で弓を構えていた太陽に照らされた雪のような髪の少年は それだけ言うと落ち着いた
様子で 怪物の瞳を 射抜いた。
直後怪物の苦しげな呻き声が
森中に 響き渡る。
ジーク「アリィ、直ぐにここから離れよう。
異変を嗅ぎつけて、他の悪魔が
やってくるかもしれない。」
アリィ「合点承知!んでも…この悪魔
食べれたりしないかな…。 」
ジーク「見た目はグロテスクだけど
案外こいつら食えるんだよな…。
不味くはないが、美味くもないけど。」
アリィ「まっ、困った時の緊急策ってことで
全部は無理だけど一部 切り分けて
持ってくよ。」
ジーク「…はぁ、まともな肉が食いたい。」
アリィ「仕方がないでしょ。悪魔は
なんでも食べちゃうから、ここにいた
野生動物はとっくに全滅してるよ。 」
ジーク「それもそうか。」
悪魔と呼ばれる怪物を2人は
淡々と解体していく。
ジーク「よしっと…アリィ囮お疲れ様。 」
アリィ「どういたしまして!ジークも
とどめお疲れ様!」
ジーク「…ところで、前々から
気になってたんだがお前なんで魔法使うと、
瞳の模様変わるんだ?」
アリィ「さぁね。こっちが聞きたいよ。 」
ジーク「分からないなら仕方ないな。」
そう言い2人は森を後にした。
暗闇を照らす焚き火がぱちぱちと音を立てる。
アリィ「こいつ、美味しい…!!」
ジーク「こいつが食ったの多分
ほとんどが草食とか木の実だ!美味い…!! 」
アリィ「でもそう考えたらこの悪魔
人を食べ始めて間もないってことだよね。
人を食べないで生きてる悪魔もいるんだ、
どうして人を食べたんだろう…。」
ジーク「まあ、あいつらに聞かなきゃ
分かんないだろうな。あいつらに話し合い
という概念が存在するか どうかは
置いておいて…。」
アリィ「あはは…ん…?」
ジーク「?どうかしたか?」
アリィ「いや…なにか気配がして…」
ジーク「…悪魔か、はたまた俺達を
殺しに来た人か…。 」
アリィ「多分だけど違う、そういうの
じゃないんだ。ちょっと私、行ってくる。」
ジーク「あんまり遠くに行くなよ。 」
アリィ「もちろん。安心して。」
そう言い、少女は気配のする方へ
恐る恐る歩いてゆく。
アリィ「確かにここから
気配がするんだけど… 」
少女は足元の草をかき分け、懸命に
気配の正体を探る。
アリィ「いた…!ってなに…これ…?」
気配の正体は確かにこれであった。
しかし人とも悪魔とも呼べぬ存在だった。
目の前にいる存在は落書きで描かれたような
顔の張り付いた白い布の塊だった。
そう、それはまるで
アリィ「おばけ…?」
素っ頓狂な声が夜に静かに響いた。
ジーク「んで、ボロボロで 可哀想だったから
こっちに持ってきたと…。」
「いや、アホかお前!擬態型だったら
どうするんだ!このバカ!」
アリィ「だってぇ〜…。」
ジーク「だっても何も無い!元の場所に
返してきなさい。」
アリィ「そんな!せめて治療だけでも!
それにさっきから私この子抱っこしてるけど
襲ってこないよ!」
ジーク「腹減ってないだけじゃないか?」
アリィ「ぐっ…!手強い…!」
(こうなったら最終手段…)
アリィ「お願い…ジーク…。」
そう言ってアリィは目をうるうるさせ、
ジークを見上げる。
ジーク「ぐっ…お前…俺がその顔に弱いこと
知っててこんな所業卑怯だぞ…。」
アリィ「お願い…」
ジーク「くっ…!」
アリィ「だめ…?」
ジーク「うぐぐ…!」
ジーク「負けました…。」
アリィ「勝利ィ!!」
ジーク「はぁ、お前が面倒見るんだぞ。」
アリィ「分かってるって!」
ジーク「ところでもう 名前は
決まってるのか?」
アリィ「うん!ポルポル!」
ジーク「いや、言いづらっ! 」
アリィ「でも気に入ってるもんね?ポルポル」
ポルポル「ギー!」
アリィがポルポルに問いかけるも
ポルポルは嬉しそうにギーと鳴く。
ジーク「お前がそれでいいなら いいが…。」
ジークははっとし、ポルポルを治療している
アリィに問いかける。
ジーク「こいつ、何食べるんだ…?」
アリィ「え?はっ…!どうしよう…
全く分からない…!」
ジーク「おいこれどうすんだ…。」
アリィ「とりあえず荷物の中の食べもの
かたっぱしから試すか…。」
ジーク「おい、それ俺らの分ちゃんと
残しておけよ。」
アリィ「分かってる。」
「ポルポル、これはどう?」
ポルポル「ギー?」
アリィ「ダメか…じゃあこれは?」
ポルポル「ギ?」
アリィ「ダメと…これならどう?」
かれこれ続けること1時間…
アリィ「だめだぁ〜!」
ジーク「俺らの荷物にあるものは
全部食べないみたいだな…。お前、
一体何なら食べるんだ?」
ジークがポルポルに話しかけるとポルポルは
ふと遠くの地面に咲き誇った 1輪の花を
見つめていた。
ジーク「花…?蜂のような生き物なのか…?」
ジークがぶつぶつと言いながら分析している間に、ポルポルは花の方へとふわふわ 飛んでいく。
アリィ「?ポルポル?」
ポルポルが花に覆いかぶさり、数分
経った頃だろうか。ポルポルは満足気な
鳴き声を上げ、花から浮かびあがりジーク達の
元に帰ろうとする。先程まで見事に咲いていた
ソレは生気の欠片を感じないほどに枯れていた。
アリィ(これ、バレたらあかーーん!!)
思わずアリィは声にならない悲鳴をあげる。
ジーク「どうした?アリィ。」
アリィ「ナンデモゴザイマセン。」
ジーク「?ならいいが…」
アリィ「ポ、ポルポルの食べる物は私、 分かったから大丈夫だよ!今日は私が見張りをするから、ジークは休んでいて! 」
ジーク「お、おう…? 」
アリィ(これはまずい…。こちらに敵意は
無いけど、完全にやった…。)
アリィ(悪魔拾っちゃった〜…!)