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「っあーー! いい! 最高! 見たかよ、あの子トナカイ!? お尻のしっぽ触っていーのー!?」
横でクソみたいな声がして、見るまでもなく隼人のものだとわかるから。大袈裟にため息をついて答えてやる。
「うるさいって、気になるなら声かけてこいよ。他の奴らも散り散り誘いに行ってるだろ」
「はえーな! あいつら! 飢えてるわ!」
「お前もね」
隼人の他にいた数人は、既に女に声をかけたり、アレンジされたクリスマスソングで踊っていたりと、その行動の早いこと。
一方、隼人がたった今熱視線を送っていたトナカイの女は、尻に股間を押し付けられて。楽しそうにキャーキャーと、フロアで音と男を楽しみ出してしまった。
くだらないなぁ、とフロアに背を向ける。
「あ、俺のトナカイちゃん……」と残念そうな声の後、隼人はカウンターに肘をついた坪井の肩に手を回して来た。
「何? 気持ち悪い。早く女引っ掛けてこいよ」
「気持ち悪いとか! ひっでぇな!」
全く涙は出ていないが、泣くそぶりを見せて坪井を非難した後、隼人はキリッと表情を引き締め、真面目な声へと変化させた。
「つーかお前さぁ、らしくねーって! 座ってるだけでも女寄ってくるんだからさ、涼太なら。その武器へこんでる時にこそ使うもんだぞ」
「は?」
「俺らは持ち帰んのに苦労するけど、お前は選び放題だろが昔から! 自分を振った女に何の義理立てが必要なんだ?」
音楽でかき消されそうな声を何とか聞き取る。どうやら隼人は、これでも坪井を励まそうとしているらしく、反応に困った。
「……別に、そんな大袈裟なもんじゃないよ」
「だったら! 尚更よお、しょげてねぇで美女ハメてけって。お前も言ってたじゃねーか、セックスは最高のストレス解消だってさぁ」
「はは、言ったっけ?」
(立花が聞いたら、引かれるじゃん。絶対隼人には会わせらんないね)
……こうして、すぐに真衣香に繋げる癖を何とかしたい。眉間のあたりを押さえて小さくうめき声を上げた。何度自分にダメージをくらわせれば気が済むんだろうか?
隼人に会わせる機会など、有りはしないのに。都合のいい妄想だ。
そんなふうに、男2人でコソコソ話すさまは異様だったのだろう。「おにーさんたち、逆ナン待ち?」と、背後からやたらテンションの高い声がして振り返る。
肘をついてる状態の、目線の先に、たわわに揺れる谷間が見えた。