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とっても良い(≧∇≦)b (ෆ¯꒳¯ෆ) ˡºᵛᵉ❤⃛
エセ関西弁注意
口調迷子
誤字脱字チェック等、しておりません
肌寒い秋の夜だった。月明かりが柔らかく部屋を照らし、静けさの中に虫の音が響く。その部屋の中心には、布団の中でじっと横たわる初兎の姿があった。額には冷えピタが貼られ、顔色は普段の元気な姿とはほど遠い。彼は微かに唇をかみしめ、吐き気と戦っていた。
ドアがゆっくりと開き、Ifが静かに部屋へ入ってきた。手には小さなトレイがあり、その上には温かいお茶と胃を落ち着けるための軽いおかゆが置かれていた。
「しょにだ、大丈夫か?」
Ifはそっと声をかけ、トレイを机に置くと布団の横にしゃがみ込む。初兎は薄く目を開け、かすれた声で返事をした。
「…うん、多少はマシになった気ぃするねんな〜。でもまだ気持ちわるい。」
彼の声は弱々しく、普段の明るいトーンが完全に消え失せていた。
Ifは心配そうに眉を寄せ、そっと初兎の額に手を当てた。
「まだ熱あるみたいやな。無理せんくてええから、ちょっとでも食べられそやったら、これ食べてな?」
Ifは机からおかゆを取り、スプーンを手に取った。
「ありがと…でも…」
初兎はうつ伏せに顔を伏せた。
「いま食べたら吐くかも…」
Ifは静かに頷いた。
「そか、ほんまに無理せんでええから。やけど、水分だけはちゃんと摂りや。あとでちょっとだけでもお茶飲んでな。 」
初兎の体調が悪化したのは、その日の昼過ぎだった。朝は元気に歌の練習をしていたのに、突然「なんか気持ち悪いかも」と言い始めたのだ。最初は軽い胃の不調かと思い、休憩を挟んで様子を見ることにしたが、午後には顔色が青白くなり、ついには吐き気を訴え始めた。
「最近、ちょっと忙しすぎたんかな。」
Ifは昼間の出来事を思い出しながら、初兎の髪をそっと撫でた。
初兎は普段から一生懸命で、周りを笑顔にするために全力を尽くすタイプだ。だが、無理をしても「大丈夫」と笑い飛ばすことが多い。今日もそのパターンだったのだろう。
「本当、無理しすぎやな。」
Ifはぽつりと呟いた。
その声に気づいたのか、初兎が布団の中から小さく応じた。
「だって、リスナーさん全員を笑顔にしたいんやもん…」
「それはわかるけどさ、しょにだが倒れちゃったら本末転倒やない?」
Ifは優しいけれど、少しだけ厳しい口調で言った。
「しょにだが元気じゃないとみんなも心配しちゃうよ。まろだって今、すっごく心配してるんやから。 」
初兎は返事をせず、しばらく静かに目を閉じていたが、やがてぽつりと言った。
「ごめんな、まろちゃん。いつも迷惑かけちゃって。」
Ifは軽く首を振った。
「迷惑だなんて思ったことないよ。むしろ、しょにだがいつも頑張ってくれてるのを知ってるからこそ、こういうときはちゃんと休んでほしいだけ。」
その後、しばらく2人は黙っていた。Ifは部屋の隅に座り込み、静かに初兎の呼吸のリズムを聞いていた。部屋にはただ時計の秒針の音が響いている。
しばらくして、初兎が小さな声で言った。
「さっきより少しだけ良うなった気ぃする。」
Ifは驚いたように顔をあげた。
「ほんま?ちょっとでも良うなったんなら今んとこは安心やな。でもまだ無理したあかんで?」
「…ぅん、無理はせんよ。お茶、飲むわ。」
Ifは笑顔を浮かべ、机から湯呑みを手に取り、慎重に初兎へ手渡した。彼が少しだけ体を起こしてお茶を口に含むのを見守りながら、Ifは心のなかで安堵の息をついた。
「ありがと、まろちゃん。 」
初兎は再び布団に戻りながら、少しだけ笑顔を見せた。
「まろちゃんがおってくれると、まじで安心するんよな。」
「それはまろのセリフだよ。」
Ifは冗談めかして返した。
「ほら、しっかり休んで早よ元気になれよ。明日には、またしょにだの元気な声聞かせてくれよなっ。」
「うん、わかった。」
初兎は安心したように目を閉じた。そのまま眠りに落ちる彼の姿を見て、Ifはそっと部屋を出ていった。
月明かりが再び部屋を静かに包み込む。Ifはその夜、何度も部屋を覗き込みながら、初兎が少しでも楽になることを願い続けた。