コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
催眠
桃×黒
二次創作。本人様には関係ありません。
「あにき大好き!!!」
「もっとぎゅーしよ!!」
そんなこと言う彼は1日限りだってわかっている。
いつもは言わない言葉を俺が言わせてるってことぐらいわかってる。
あぁ、罪悪感しかないな。
でも、一日くらい許してください。
記憶は残らないはず。きっと大丈夫。
「ごめんな、ないこ…。」
涙がこぼれそうになった気がした。
ちょっと前のこと。
とある広告が流れてきた。
『これを見せるだけであなたも催眠術師!!』
そんな馬鹿馬鹿しい広告が表示された。
普通だったら詐欺広告だと思ってスルーするだろう。
今だったら勿論そうすると思う。
でもなぜかその時の俺はそのサイトに飛んでしまった。
今思うと本当に馬鹿だ。一瞬の感情に流されてしまっていた。
「…好きな人に見せると両想いに…。」
そのサイトにはそう書いてあった。
別に好きな人がいるわけではない。
でも、愛されたかった。
抱きしめて、壊れるほどに愛して欲しかった。
「大好き」って、「愛してる」って言って欲しかった。
そんな思いが俺を突き動かした。
まあどうせ嘘だろう。
そう思って冗談でないこに画面を見せた、つもりだったのに。
「あにき愛してる!!」
「…うん。俺もやで。」
「大丈夫?元気ない?」
「…ううん、大丈夫。ありがとな。」
本当にないこは催眠術にかかってしまった。
催眠術の効果は3日らしい。
今すぐ逃げ出したい。
3日目だけど、あと少しだけど、催眠にかかっている姿を見ることがつらい。
自分でやっておいてなんだけど、よく2日も耐えれたな、なんて思う。
「愛してる」「大好き」って言葉も薄っぺらく感じて耳を突き抜けていく。
言わせてる、それだけが心を支配する。
一緒にご飯を食べても、お風呂に入っても抱きしめられても、何も満たされなかった。
増えたのは空白だけだ。
君から離れたい。
君をこんなふうにしてしまった俺を君の記憶から消してほしい。
やっぱりここにはいられない、俺がいてはいけない。
俺がこうしてしまったんだから、俺はないこの前から消えるしかない。
「…ごめんないこ、帰るわ。」
「えー帰るん!?」
「用事できたねんごめん、。」
「じゃあ仕方ないか…。また来てね!大好き!!」
「おん…またな。」
ごめん、ごめんなさい。
本当にごめんなさい。
俺がやったことなのに逃げてごめんなさい。
抱きしめられた嘘のぬくもりが未だに忘れられない。
催眠がとけたらきっと記憶も消える。
でも俺の記憶は消えない。やったことは一生俺の記憶に残る。
取り返しのつかないばかなことを何でしたのだろう。
「…ごめんな、ないこ。本当にごめん…。」
本当に俺はばかだ。
「ははっ…ばかがよっ…。」
言っておいて涙が出そうになる。
ねえあにき、催眠なんてあるわけないじゃん。
かかったふりして言った言葉、全部俺の本心だったのに。