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観覧車に乗って、向かい合わせで座る。上昇し始めた観覧車で冬馬さんが言う。
「今日は楽しかったね」
「はい。楽しかったです。でも、動物園に行きたいって言ってた俺よりも冬馬さんの方がはしゃいでましたね」
「別に俺も動物好きだし。後、春人と初めてのデートだからテンション上がってたの」
「なんですかそれ。可愛いですね」
俺がそう言うと、冬馬さんの頬が赤く染まる。
「デート先が動物園っていう春人の方が可愛いと思うけどね」
「そうですか?」
「うん。可愛いよ」
冬馬さんはそう言って俺の頭を撫でる。
(かっこいい…)
俺がそう思って冬馬さんを見ていると、冬馬さんは満足そうな顔をして俺を見つめる。多分、俺の顔が赤くなっているのだろう。
そんな冬馬さんを見て、俺は思った事を口に出す。
「冬馬さん。俺達の関係ってなんなんですかね」
「えっ…と…」
冬馬さんはしばらく考えた後、姿勢を正し、俺を見る。
「…春人」
「なんですか?」
「俺みたいな遊び人の事なんて信用出来ないかもしれないけど、俺はもう他の人と寝たり遊んだりしないし、これから先ずっと春人といたいと思ってる。だから、俺と付き合ってくれませんか?」
冬馬さんはそう言って俺を見つめる。そんな冬馬さんの口に俺はキスをした。
「もちろんです。これからずっと一緒にいましょうね」
俺がそう言って微笑むと、冬馬さんは頬を赤く染める。
「俺達、今日から恋人だね」
頬を赤くしたままそう言う冬馬さんに俺は微笑んだ。
それから数日が経った頃。職場に出勤すると、なんだか社内が騒がしい。俺は不思議に思いながらも冬馬さんに挨拶をする。
「おはようございます。佐野さん」
「おはよう。柳くん」
冬馬さんはそう言ってニコっと笑う。
俺がイスに座ろうとすると、後ろのデスクに座る尾崎さんが手招きしながら小声で言う。
「ちょっと、柳くん」
俺が尾崎さんの元へ行くと、小声のままで言う。
「冬馬が遊び人やめたらしいよ」
「えっ。そうなんですね」
すでに知っていることだけど、知らないふりをしてそう言う。
「なんか、付き合ってる人がいるんだって。そのせいでもう社内大騒ぎ」
(この騒ぎ、冬馬さんの事だったのか…)
「そんなにおおごとなんですか?」
「おおごとだよ。イケメンだけど遊び人って他の部署の人達にも知られてるし。その冬馬が恋人出来たから遊び人辞めるなんて、そりゃあみんなその相手も気になるでしょ」
「そういうもんですかね?」
「そういうもんだよ。柳くんは気にならないの?」
「はい。別に」
「へぇ〜。変わってるね。誰でも気になる事なのに」
「まぁ、俺、人気者とかそういうの興味ないので」
「そうなんだ。だってよ〜!冬馬〜!」
(えっ)
俺が戸惑っていると、冬馬さんは不思議そうに振り向き、こっちに来る。
「なに?」
「お前に興味ないんだって。柳くん」
(なんでそんな言い方…!)
「ち、違います!誤解です!俺はただ、人気者とかに興味がないって言っただけで、冬馬さんに興味がないとかそう言う意味じゃないです」
俺が焦ってそう言うと、冬馬さんは俺の顔を覗き込む。
「へぇ〜。そう言えば柳くん、高校生の時もそう言ってたよね。でもさぁ…」
冬馬先輩はそこで言葉を止め、俺の耳元で囁く。
「今は俺の事大好きだよね」
その言葉で身体がボワッと熱くなる。
「そ、そうですね」
俺はそう言ってニコッと笑う。
人前だと人目を気にして強く出れないのが悔しい。冬馬さんは気にしてないから、俺が気にしなければ済む話だけど、どうしても高校生の時の事が頭に残り、人前では中々素直になれない。
そんな俺を見て、冬馬さんは満足そうな顔をして俺を見つめる。すると、その様子を見ていた尾崎さんが言う。
「なになに。なんて言ったの?」
「えっと…秘密です」
「秘密」
冬馬さんは俺に続いてそう言い、鼻に人差し指を当てる。
「何。お前らなんか怪しいんだけど」
「怪しくない怪しくない」
冬馬さんはそう言ってニコっと笑う。
「いや。怪しいな〜。あっ、さてはお前ら…」
(やばい。もしかしてバレた…?)
俺はそう思い、心臓がドキドキしながらも尾崎さんの言葉を待つ。
「高校の時から仲いいんだろ〜!」
それを聞いて俺は胸を撫で下ろす。
「バレちゃいました?」
(ここで否定したら付き合ってるのバレそうだし…)
「やっぱりな。じゃあ柳くん。今度高校で冬馬に何があったのか詳しく聞かせてね」
尾崎さんはそう言って俺の肩をポンッと叩いた。
「はい…」
それから数日が経った頃。俺は仕事終わり、冬馬さんの家に行くために冬馬さんと一緒に会社を出た。
そして少し歩いた時、目の前に一人の男性が立つ。その男性を見て、冬馬さんは驚いた顔をする。
「冬馬。久しぶり」
「…大和先輩。何しに来たんですか?」
「何って、俺が冬馬に会いに来たらする事は一つでしょ?」
大和先輩という人がそう言うと、冬馬さんは気まずそうな顔で言う。
「すみません。俺、もう遊び人とか辞める事にしたんです。だから大和先輩とそういう事はもう出来ません」
「遊び人やめた?何。もしかして恋人でも出来たの?」
大和先輩は馬鹿にしたようにそう言う。
「…そうです」
冬馬さんがそう言うと、大和先輩はハハッと笑う。
「なにそれ。恋人は作らないとか言ってなかったっけ?」
「言いましたけど…気が変わったんです」
「へぇ〜」
大和先輩はそう言った後、俺の方をチラッと見る。
「もしかして、その子?」
「違います。柳くんはただの後輩です」
「ただの後輩ね〜。まぁ、どうでもいいけど。本人近くにいないなら良いじゃん。行こうよ」
大和先輩はそう言って冬馬さんの腕を掴む。その瞬間、俺の胸がモヤっとする。
「ちょっと、離してください」
「バレなきゃ大丈夫だって。遊び人だったくせに何真面目ぶってんの。ほら、行くよ」
大和先輩はそう言って冬馬さんの腕を掴んだまま歩き出そうとする。
そんな大和先輩を見て、俺の心は黒いモヤに包まれる。
(冬馬さんが取られちゃう…)
俺は咄嗟に冬馬さんの腕を掴んだ。