テラーノベル
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私達は、生者しか愛さない。死者の復活などありえない。
死者には沈黙こそ相応しいのだ。
生き返ったとしてもそれは別人であって、もはや私達の仲間ではない。
墓標の下には誰もいない。
墓守すら必要なくなるだろう。
死霊術師とは、墓荒らしにすぎない。
死肉を食らう怪物なのだ。
死は救済である。
安らぎを得る方法はひとつしかない。
死を受け入れることだけだ。
死ねば救われる。だから殺してくれ。
墓標の下は何もない。
魂の残骸が散らばっているだけである。
墓守は死体を掘り返す。
土にまみれて腐っていく肉体を、 虫けらの餌にするために。
墓守が掘り起こしたのは、死者ではなく生者だった。
墓荒らしなんてとんでもない! 土の中に埋まっているのは、死体じゃなくて魂なのだよ。
死人が甦ったのだ。
その証拠に、今や彼こそが新たな墓の主となったのだから。
さあ、共に生きようではないか。
これからはずっと一緒だよ。
君は私のものだし、私もまた君のものだ。
二人きりの世界で、永遠の愛を誓おうじゃないか。
「私が死んだ時は、あなたも一緒に死んでください」
約束ですよ。
墓主は、土の中のものを掘らずにはいられなかった。
それは、墓穴の底で眠り続ける誰かの声を聞いたからだ。
墓荒しなんてとんでもない! 掘り起こされたものは、死体なんかじゃないんだ。
墓の中にあったのは、生者の想いそのものなんだ
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