夜。お互いに仕事が終わった後、阿部ちゃんと2日ぶりに会った。
たった2日会っていないだけで、いざ本人に会えた時はあやうく泣きそうになったけど、もとの阿部ちゃんじゃないから我慢した。
阿部ちゃんは困ったような優しい笑顔を浮かべて、今、目の前で俺を見ている。
阿部ちゃんの家。
物の配置や置いてある物がちょっとずつ違っていて、俺の知っている世界線と違うことを顕しているようで悲しかった。
💚「あの、翔太。どうしたの?」
💙「あの、あのね…」
なんて言ったらいいんだろう。
なんて言ったらわかってもらえるんだろう。
告白でもすればいいのか。
目黒とのこと聞いた方がいいのかな?
阿部ちゃんは昨日の電話の一件があるからだろう、なんとなく気まずそうにしている。
俺が黙っていると、阿部ちゃんの方から話を切り出した。
💚「デートしたいって、どういうこと?俺、今付き合ってる人いるし…」
💙「…………」
💚「電話……で、なんとなくわかってると思うけど」
だめだ。
俯いて黙ったままだと泣いてしまう。
俺は顔を上げて、言った。
💙「信じてもらえないかもしれないけど……」
💚「そうなんだ…」
阿部ちゃんの表情からは信じているのかいないのかわからなかった。
ただ、俺の真剣な話しぶりに、少しは心を打たれたようだ。
顔が、優しくなってる。
💙「俺と……付き合ってください…」
💚「…………」
阿部ちゃんは黙ったままだ。
無理だよ。
仕方ないよな。
💚「翔太の気持ちは嬉しいよ。でも、めめ以外とは考えられない」
だよね。
そういう世界にキチャッタ、んだから、俺はもう1人なんだ…。
涙がこぼれた。
夢と同じように。
あとからあとから涙が流れてきて、自分でもどうしようもなかった。
テーブルに突っ伏して、泣いて、震える背中を優しい阿部ちゃんが、『もう俺のことを好きでもなんでもない』阿部ちゃんがひたすら撫でてくれていた。
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