テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

あの日はそのまま阿部ちゃんに心配されながら家に帰り、泣き寝入りした。自分でも女々しいと思うけど、悲しいのだから仕方ない。来ると思っていたあたりまえの明日が何かの手違いで急に訪れなかったのだ。死ぬほど不条理だけど、どうしようもなかった。


失恋の痛手は、サウナと焼肉で癒やした。

幸せなことに、恋人がいなくなってしまった俺にも、友だちはいる。

毎夜毎夜、仕事が終わると、グループとは無関係な誰かしらを呼び出しては、サウナや飯に行って気を紛らわした。


相変わらず、こまめに照からはメッセージが届いていた。

応えようがなくて、考えたくなくて、ひたすら放置した。


そしてとうとう訪れたグループ仕事の日。

俺は普通に、現場へと行った。



💛「翔太」

💙「おぅ、おはよ」



俺たちが微妙な関係になっていることは、みんなにバレてる。

照は、俺を見るなり、すぐに近づいてきた。



💛「今日は逃げないで、ちゃんと話付き合ってよ」

💙「…………」



悲しそうな照の顔を見て、ちょっとは同情するけど、何とも思えない。

照の中にある、俺たちの記憶や思い出は俺にはないのだから。

それでも、やっぱり、同情は、する。

俺は頷いた。



💙「わかったよ。終わったらな」



照は心底ほっとしたような顔をした。

胸が痛む。

なんか、知らない男と話してるみたいだ。あー、キツイ。




💛「俺のこと、覚えてない?」

💙「うん、まあ、そうなんだよ」



俺は涼太や阿部ちゃんにした話をそのまんま、照に繰り返した。



💙「だから、お前のことそういうふうに見れねぇんだ」

💛「そんな…」



照の顔が絶望的なそれに変わる。

まるで悪い夢でも見てるみたいだろう?

わかるぞ、俺だってそうだった。



💙「俺も阿部ちゃんに振られてるし、照には悪いけど、俺のことは諦めてほしい」

💛「イヤだ」



そう言うと、照は速攻で抱きしめてきた。



💛「好きだ、翔太」



どきっ、とした。

久しぶりに人肌を感じたせいか、相手は好きでもない相手なのに心地よく感じてしまう。

でも、だめだ。

浮気とか。

この世界の阿部ちゃんはもう俺の恋人じゃないから、正確には浮気じゃないかもしれないけど、だめだ。



💙「だから、俺はお前が知ってる翔太じゃない…んっ…」



今度はキスをされて、頭の中が痺れる。舌が入ってくる…。包まれた腕はびくともしない。そりゃそうだ、体脂肪率が7%しかない筋肉マンの力に敵うわけなんか、ない。



💛「…っ、はぁ……コレでも、思い出さない?」

💙「いや、だから、そもそも、それ、俺じゃねぇんだって」



やっと腕の力が緩み、俺は解放された。


それにしても、照のことが大好きな俺はどこへいったんだろう。

まさか、同じ状況下で、阿部ちゃんのところにいるんだろうか。

俺のことが大好きな、俺も大好きな、あの、愛しい阿部ちゃんのところに。

だとしたら、あっちもあっちで大変なことに……


そこまで想像していたら、照の肩越しに、阿部ちゃんが現れた。



💙「阿部ちゃん…?」



ここは楽屋だった。

みんな気を利かせて帰って行ったから、てっきり阿部ちゃんも帰ったと思っていたけどまだいたのか。



💚「翔太!探したよ!!!」

💙「?」

💚「ああ、俺の翔太!可哀想に!」



そう言って、俺を抱きしめる阿部ちゃん。

俺は何が何だか分からず、抱かれるままにしてる。嬉しいけど……目黒はもういいの?



💛「阿部、どういうこと?」



照の咎めるような声がして、阿部ちゃんが優しくちょっと待ってね、と微笑むと、ゆっくりと身体が離れた。

離れがたくて、袖を掴む。

それに気づいた阿部ちゃんが、にっこり笑って、手を繋いでくれた。

この人は…。



💙「阿部ちゃん!」

💚「うん、翔太」

💙「阿部ちゃん!阿部ちゃん!」



俺はボロボロ泣いて、大好きな阿部ちゃんに抱きついた。

この作品はいかがでしたか?

481

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚