テラーノベル
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冷たい月光が古城の窓を貫き、大理石の床に銀の模様を刻む。公爵クレンは、葡萄酒色のローブを翻し、書斎の窓辺に立つ。そこへ、闇から現れたのは、漆黒の髪と紅の瞳を持つヴァンパイア、レオだった。「公爵クレン、夜分に失礼しますな。」レオの声は低く、まるで絹が肌を滑るようだ。彼は窓枠に片手をつき、クレンの前に優雅に降り立つ。「レオ…なぜここに?」クレンは眉をひそめつつも、胸の奥でざわめく熱を抑えきれなかった。レオの瞳は、まるで魂を吸い込む深淵のようだ。「あなたの血が、私を呼んだのですよ。」レオは一歩近づき、クレンの顎を指で軽く持ち上げる。「この甘い香り…我慢できると思うなよ、クレン。」クレンは息を呑み、レオの手を振り払う。「ふざけるな。私は公爵だ。貴様のような夜の獣に屈するものか。」「ふふ、強がりは嫌いじゃない。」レオの唇が、クレンの耳元をかすめる。「だが、君の心臓がこんなに速く鳴っているのを、隠せないよ。」クレンの頬が熱を帯びる。レオの冷たい指が首筋をなぞり、ゾクゾクとした感覚が全身を駆け巡る。「やめろ…レオ。」声は震え、抵抗はすでに形だけのものだった。「今夜はまだ、触れるだけにしておくよ。」レオは囁き、クレンの首筋に唇を寄せるが、牙は立てず、ただ冷たい吐息を残して闇に消えた。クレンはその場に膝をつき、荒い息をつく。「くそっ…何だ、この感覚は…。」