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個室でカルロスが必死にルドルフ王太子殿下を抑えつけていた。
「フローラ様を愛しているのです。誰よりも彼女を大切にすると約束します。彼女に会わせてください」
彼は私とルイ王子が部屋に入るなり、ルイ王子に飛びかかりそうな勢いで訴えてくる。
「フローラ様はレオ国の次期国王であるルイス・レオの婚約者です。その彼女に手を出そうというのならば、レオ国を敵にまわすことになりますよ。我が国はアツ国の隣国であるサム国と同盟関係にあります。レオ国を敵に回すとサム国も敵に回すことになりますが、その覚悟はおありでしょうか? 」
ルイ王子は相変わらず微笑みながら淡々と語っている。
その微笑みが、逆に恐ろしさを増長している気がする。
「しかし、フローラ様も私を求めているのです」
必死にレオ王子にルドルフ王太子殿下が訴えている。
強制力によりフローラ様を想う気持ちと、次期国王として国を守る気持ちで戦っているのだろう。
来月国王になるのだから、国に対する責任感を感じているのだろう。
強制力が負けはじめているのか、先程よりも勢いがなく弱々しい。
「そのような事実はございません。一方的な片思いを両思いと勘違いして相手を追いかけ回す行為は、我がレオ国では犯罪になります。今、ルドルフ王太子殿下がいるのはレオ国です。次期アツ国王ではなく、犯罪者になりたいというのならばどうぞご勝手になさってください。次期国王になる予定の殿下の行動によりアツ国が混乱すれば、サム国はアツ国を侵略戦争を仕掛けると思います。アツ国も裕福なサム国を狙っていますが、サム国もアツ国の地下資源を狙っています。その際は、同盟関係にあるレオ国はサム国側につくでしょう」
ルイ王子は相変わらず、感情もないように淡々とこれから起こる事実をルドルフ王太子殿下に掲示している。
ルドルフ王太子殿下が少し震えていて、明らかにルイ王子を少し怖がっているのがわかる。
ルイ王子を怖いと思う気持ちは理解できる、見た目は子供なのに彼は子供に見えない時があるのだ。
「すぐに、アツ国に戻ることをおすすめします。ルドルフ王太子殿下の婚約者のご実家はスリ公爵家です。スリ公爵家といえばアツ国より長い歴史を持ち、アツ国で多大なる力を持っています。スリ公爵が一人娘のビアンカ様を大事になさっているのは有名な話です。先程の卒業式でルドルフ王太子殿下がした発言を公表いたしましょうか。おそらくルドルフ王太子殿下は廃嫡されるでしょう。妹君がいらっしゃいますから、女性が王位を継げるように法律を変えてから彼女が王位を継ぐのも面白いかもしれませんね」
ルイ王子はやはり惑星プリンスより出荷された、サイコパス王子だ。
目の前のルドルフ王太子殿下が恐怖で完全に沈黙してしまった。
「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。アツ国のルドルフ・アツ王太子殿下にイザベラ・バーグがお目にかかります。レオ国では先程の一件を明るみするつもりはなく、ルイス王太子殿下はこれを機にアツ国と交流を持つと言っていたので心配せず国にお帰りください。片道3週間かかりますよね、戴冠式と結婚式まで時間がないので今すぐアツ国に向かうことをおすすめします」
ルイ王子の口撃により、完全に死んだ目になっていた彼の目に少し光が戻ってきた。
「分かりました。でも、フローラ様は⋯⋯」
ルドルフ王太子殿下が言いかけると、すかさずルイ王子がカルロスにアイコンタクトをとる。
すると、カルロスは彼を部屋から連れ出した。
「あの、大丈夫でしょうか。これから長いこと強制力に苦しんだりしないでしょうか」
木星の重力より重い愛を珠子に持つ信者の念は相当なものだ。
世界を創造した上に、珠子の願いを叶えるために理不尽な強制力まで生み出している。
「さあ、どうでしょうね。彼が強制力に苦しみ、フローラ様を求めてレオ国にやってきたら応戦するのでご安心ください。僕が守りたいのはイザベラとレオ国です。正直に言わせてもらうと、ルドルフ・アツ王太子殿下がどうなろうとあまり興味はありません。僕は守りたいものを守るだけですから」
微笑みながら私を守りたいと言ってくれたルイ王子に嬉しくなって、思わず彼に飛びついた。
私は彼と毎日過ごすにつれ、彼が冷酷な面も持ち合わせた王子様だと気がついた。
しかし、優しいだけの男より冷たさを持っているところも素敵と思ってしまうくらい、私は既に彼に惚れ込んでいるのだ。