コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
翌日、グリーンリレイアの村で薬を売り終えたアリス。
リオンも、村の人々にキョウナのことを尋ねたが、知っている者はいなかった。
次なる目的地、リーブルシティへと向かう。
ここからリーブルシティへは少々時間がかかる。
数日はかかるだろう。
道中で食べる食料などを買いだめしておく。
そして、出発しようとしたその時…
「ま、待ってください!」
誰かの声が聞こえた。
振り向くと、そこには一人の少女がいた。
年齢は十三歳ほどだろうか。
小柄で、栗色の髪の少女である。
可愛らしい顔立ちをしており、美少女と言っていいだろう。
彼女は息を切らしながらこちらに向かって走ってきた。
「どうしたの?」
「あの…少しだけ、話を聞いてくれ…あ、いや…」
「えっと…」
「は、話を聞いていただいてもいい…あ、いや、よろしいでしょう…か?」
突然の出来事に戸惑うアリス。
助けを求めるようにリオンの方を見たが、リオンも困った顔をするばかりである。
たどたどしい敬語で話すその少女。
少なくとも悪人ではなさそうだ。
「大丈夫だよ。落ち着いて、ゆっくりで構わないから」
とりあえず、リオンは少女の話を聞くことにした。
「はい。あの、あたしはエリシアと言います。リーブルシティを目指して旅をしているんですけど、その途中で魔物に襲われて…」
怪我をして動けなくなってしまったところを、この村で助けてもらった。
怪我の方はもう治ったが、足を痛めてしまい、まだうまく歩けないという。
「それは大変だったね」
「はい。そこでお願いなのですが…」
「私達と一緒に行きたいということ?」
「はい。もちろん、ご迷惑でなければですが…」
不安げに尋ねるエリシア。
リオンとアリスは考える。
正直、自分達は急いでいるわけではない。
ここで出会ったのも何かの縁だ。
一緒に行くのも良いかもしれない。
「別にいいですよ。私達も急いでいるわけじゃないので」
「本当ですか!?」
「あぁ」
「ありがとうございます!!」
嬉しそうに頭を下げるエリシア。
「よろしくお願いします!」
「こちらこそ。あと、自然体でいいよ」
「じゃあそうする!」
こうして、リオン達は新たに一人仲間を加え、三人となったのであった。
そしてリーブルシティへ向かう道の途中。
リオン達は休憩を取っていた。
この辺りは草原地帯となっている。
見晴らしが良く、奇襲を受けにくい地形と言える。
また、周囲には魔物の姿もない。
絶好の休息日和というヤツであろう。
そんな場所で、アリスは昼食の準備をしていた。
リオンが護衛につき、エリシアは木陰に座って休んでいる。
「よし、完成です」
小さな鍋で作った野菜スープ。
バスケットから取り出したパン。
それを見て、エリシアは目を輝かせた。
「美味しそうだね」
「ふふん。パンはグリーンリレイアの村で買ったばかり、スープは自慢の一品です」
得意気に言うアリス。
彼女の作る料理はどれも美味しい。
特にスープ系は最高なのだ。
「では、食べましょうか」
「うん」
「いただきます」
「いただきます」
三人とも手を合わせると、食事を始めた。
まずはスープを一口。
「ん~!美味しい!」
「ありがとう」
「アリスちゃんは良いお嫁さんになるよ」
「あはは、ありがとう」
照れくさそうにするアリス。
そんな二人を見てエリシアは言った。
「そういえば、二人は恋人同士なの?」
「ちっ違いますよ!」
「そっか。じゃあ、まだ結婚とかしていないんだ」
「けけっ…!」
「こ、ここここ!」
言葉にならない声を上げるアリス。
そして、顔が真っ赤になる。
ニヤニヤとした笑みを浮かべるエリシア。
そんな二人を見た彼女はさらに言う。
「おやおや?どうしたんだい?」
「な、何でもありません!」
「隠さなくてもいいんだよ?」
「だから違うってばー!」
必死に否定するアリス。
そんな二人のやり取りを微笑ましく見るリオン。
賑やかな時間が流れるのだった。
食事を済ませ、後片付けをする。
と、その時…
「ん?」
「どうしたんだエリシア?」
「あそこ、馬車が襲われてる!」
エリシアは指を差す。
確かに、一台の馬車が盗賊と思われる集団に襲われているようだ。
一人の騎士が抵抗しているが、多勢に無勢。
しかも、あまり手慣れでは無いらしい。
「助けないと…」
そう言い残し、エリシアは走り出す。
リオンとアリスも後に続く。
「おい待てエリシア!危ないぞ!」
「大丈夫、私にはこれがあるから」
「そうじゃなくて!」
エリシアが手に取ったのは、一本の小剣。
それを握り締めると、彼女はスピードを上げた。
そして、瞬く間に現場にたどり着く。
「そこまでだよ!」
「何だテメェは!?」
「通りすがりの冒険者だよ」
「冒険者だとぉ?」
「へぇ、ガキにしちゃ上玉じゃねぇか」
下卑た笑い声を上げる男達。
しかし今、彼女は怪我をしている。
治ったとは言っていたものの、戦いに出すわけにはいかない。
エリシアの剣を借り、リオンが前に出る。
「ここは俺に任せてくれ」
「でも…」
心配そうな顔をするエリシアだが、「大丈夫だって」と言うリオンの言葉に渋々引き下がる。
リオンは一歩前に踏み出し、剣を構える。
「テメェ一人でやるつもりかい?」
「まぁね」
「舐めてくれるぜ…」
「かかってこいよ」
リオンが挑発すると、男は激昂して斬りかかる。
リオンはそれを難なくかわすと、カウンター気味に男の顔面に一撃を入れた。
鼻血を出しながら倒れる男。
借りた剣を使うまでも無かった。
「次は誰が相手だ?」
リオンはそう言って周囲を見回す。
既に残りは四人となっていた。
その誰もが武器を構えており、油断はできない状況である。
リオンは警戒しながら、周囲を見回していた。
「(一人だけ強そうなヤツがいるな…)」
先程、エリシアに叫んだ男。
他の連中より明らかに鍛え方が違う。
おそらく、この男がリーダーだろう。
どこかで訓練を積んだ、何らかの実戦経験のある人物と見た。
「おいお前ら、あのクソ生意気な野郎からやれ!」
リーダー格の男の命令に従い、一斉に襲い掛かってくる。
三人が同時に攻撃してくる。
それに対し、リオンは冷静に対応する。
まずは右側からの攻撃を避け、左側の攻撃を小剣で防ぐ。
そして、反撃として相手の足を払う。
体勢を崩した敵に対し、首筋に刃を当て牽制。
そのまま押し、弾き飛ばす。
更に、後ろから迫る敵に回し蹴りを食らわせ、吹き飛ばす。
残ったのはリーダー格の男のみとなった。
「チッ、仕方ねぇ。お前ら、撤退だ!!」
「お、おおお…」
リーダー格の男の指示に従い、盗賊達はその場を離れる。
それを見てリオンはホッと息をつく。
「…クソッ!覚えてろよ!」
捨て台詞を残し、逃げていった。
護衛の薄い馬車を襲うつもりが、面倒な相手と出会ってしまった。
そう考えたのだろう。
リオンは深追いはしなかった。
この状況ではしても意味が無い。
それよりも、襲われていた馬車だ。
「怪我はないですか?」
エリシアは馬車に向かって駆け寄る。
「あぁ、大丈夫だ。ありがとう」
御者が礼を言う。
その後、エリシアはリオン達のもとへ戻った。
「二人とも強いね」
「いや、あの程度の奴らなら余裕だよ。それより…」
リオンは視線を向ける。
そこには先ほどまで居なかった少女の姿があった。
どうやら馬車の中に隠れていたらしい。
高貴な姿をした、貴族の娘のようだ。
「えっと、君は?」
リオンが尋ねると、少女は答えた。
「私は『リリア・ブルーローズ』と言います」
「ブルーローズ…?」
その名前を聞いて驚くアリス。
「どうかしたか?」
「う、うん…この子、リーブルシティの貴族さまみたい」
「ええっ!?」
「ふふん、よろしくお願いしますね」
リリアと名乗った少女は笑みを浮かべるのだった。
アリスが言った通り、本当に貴族の娘であったらしい。