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シュートの両親および紅実の父親の解雇処分が決定されたことが中里大企業の身内で公表(花宮蓮についてはネットにも公開)された翌日。中里大企業…その会長がいる本社ビルにて、朝の定例会議が行われていた。
この会議に出席する者は皆、中里大企業の上役社員…上層部の人間である。
会議に出席している社員は皆、最後に入室してきた男に気圧されている。その男が昨日から不機嫌であることが大きく関係している。
「では、会議を進めてくれ…副会長君」
その男…中里大企業の代表取締役会長である中里雅史は、不機嫌さを隠すことなく隣の席にいる大企業の副会長に会議を進めるよう促す。
この男こそが中里優太の父であり、中里大企業のトップに君臨する者であり、今年で53才になる彼からはピリピリとした雰囲気が伝わってくる。白髪が混じった黒髪で、高価な眼鏡越しから見える双眸は獰猛な草食獣のようにぎらついている。体つきも昔相当鍛えていたらしくそこそこがっちりしており、50前半の年齢でありながらその見た目は40才と言っても信じてしまう程である。
そんな雅史に視線を向けられた副会長(同じく五十代)は一瞬たじろぐがすぐに改まった態度で会議を進めていく。傘下の会社が大きくなろうとしている、成長が見込めないから統合させよう、あの会社に海外事業をやらせよう、などといった一般的な内容の会議を粛々と進める。
そういった内容が終わり、雅史が何か意見はあるかと皆に問いかけたところで、一人の社員が挙手して雅史に尋ねる。
「昨日……花宮蓮の解雇処分を公表した件についてですが……。その、よろしかったのですか?彼は優秀で、この中里大企業の発展にそれなりに貢献していました。今後のさらなる発展にも彼は貢献してくれる人材であると、私は思うのですが……。か、彼を今切り捨てるのは、尚早過ぎたのでは……?」
見た目40代半ばの社員は言いにくそうに意見する。数秒沈黙が訪れる。その間誰もが緊張のあまりに固唾を飲んだ。
「………君たちも、そう思うのか?」
沈黙を破ったのが雅史による一言で、その問いに社員たちは肯定とも否定ともとれない反応を見せる。
「君……確か橋本君と言ったね。橋本君には子どもがいるかね?妻でも良いが」
「え……あ、はい!息子と娘がそれぞれ一人ずつ…」
「ふむ、良い家庭を築いているようだな。そんな君なら分かるのではないか?
――自分の子どもがあんな無惨な目に遭ったことに対する、私の堪え難い怒り・憎しみが……っ」
「~~~っ!?」
雅史の怒気が孕んだ呟きに、橋本を始めとする社員たちが畏怖する。
「親にとって子は宝だ。金などには代えがたい唯一の宝だ。それを傷つけたことに対する報復をしようとすることは間違っているか?
三ツ木夫妻を問答無用で解雇させたことは私怨であることは認めよう。だがそれは当然の報いと言えよう。彼らの子どもが、我が子を害したのだから。この大企業の会長である私に牙を向けたも同然のことと見なして、手始めに彼らを解雇処分するところから始めた。
それをあの男…花宮は間違っていると指摘しおった。不当で理不尽であると、正面からこの私に向かって異を唱えおった。正義感の強い男であるとは知っていたが、噛みつく相手は選ぶべきだったな」
そこまで言ったところで一息ついて、続きを話す。
「そもそもあの男は前から目障りだった。企業の方針を決めるにあたって、私の考えに対していつも異を唱えてきたのがあの男だった。従業員の扱いが粗末だの何だのと、時にはモラルを説くこともあったな。まだ40にも満たない若造が、日本の経済を支えているこの私にしきりに反発するのが鬱陶しかった。
ここいらであの男を切るのは丁度良かったのだ。この大企業を…日本の経済をさらに発展させるには、個を気に掛けてばかりはいられない。あの男の甘い考えが我らの発展を妨げていたのだ。故に、あの男を我が企業から追い出した。
私の采配に異を唱える者はいるかね?」
再度の問いかけに全社員は閉口して俯いている。誰も雅史に意見しようとする気は起こさなかった。
「も…申し訳ございません!家族を…お子様を傷つけられたことへの会長のお怒りはごもっともです!会長は相応の処罰をなされただけで、それを間違いだと指摘した花宮には非が、ありました……」
冷や汗をかいて自らの非礼を詫びる橋本に雅史が小さく笑う。
「分かってくれればいい。橋本君はあの男とは親しい仲であったな。君にとって親しい彼を解雇してしまったことには申し訳なく思うよ。
その代わりとして、あの男には家族全員がしばらく食っていけるだけの失業手当を補填させておくとしよう。いちおう我が企業には大きく貢献していたことだしな」
雅史の提案に橋本はありがとうございますと力無く告げて引き下がる。それ以降誰も口を開く様子がないと判断した雅史は定例会議をお開きにする。社員たちが次々と退席していき、最後は雅史と副会長、秘書だけが残った。三人だけになったところで雅史は今までのきりっとした態度を崩して、言動も粗野が目立つものとなっていく。
「三ツ木…柊人。優太(息子)も通っている天成中学校では、奴を優太が虐めていたそうだな。奴はその復讐として、優太に過激な仕返しをした…」
雅史は不機嫌を露にして机に拳を落とす。
「ふん、虐められる側に問題があっただけだろうに。この世は弱肉強食の世界。弱い者が虐げられるのは世の常、道理というものだ。まぁ、優太が犯罪行為になりかねない虐め行為をしていたのは思いもよらなかったが。こないだの大炎上のようなことが起こらないよう、今後は学校での虐めは控えるよう言い聞かせておくか。我が企業にこれ以上の傷はつけられん。
それよりも今は、三ツ木柊人への報復が最優先だ……」
雅史は怒りの形相をしていながらも昏い笑みを浮かべている。
「虐めに対する復讐だろうが関係ない。優太に重傷を負わせた…奴は許されないことをした。我が子を大いに傷つけたことはこの私にも牙を向けたも同然、そうしたことを後悔させながら存分に苦しめてやる…!」
「そ、その為に、三ツ木夫妻をリストラへ追いやったのですね?」
雅史の怒りに怯みつつ副会長が話しかける。
「その通りだ。まずはお前の両親に経済的圧力をかける。会社を立ち上げるとかどうとか言っていたが、奴らの事業を我が企業の力で悉く失敗させて地獄に突き落としてやる。貧乏人となって存分に苦しむといい。
そして三ツ木柊人本人には、優太がやられた分の倍痛い目に遭ってもらう。いや、今後まともな人生を送れなくしてやる。国のトップに君臨する大企業である以上、私には様々な繋がりをもっている。当然、反社会的勢力ともな。奴らを使ってあのガキを地獄に落としてやろう」
つらつらと今後の報復内容を並べては嗜虐的な笑みを浮かべる雅史に、副会長も秘書も畏れをなしていた。同時に彼の怒りを買った三ツ木柊人という少年に対して馬鹿なことをしたものだ、と呆れてもいた。
三人とも会議室から出て仕事に移ろうとしたその時、雅史の携帯電話に着信が入る。画面を見ると非通知となっていて相手が分からない。誰かのいたずらか間違いかと予想する雅史だが、これまで自分の携帯にそのような着信がきたことなど無かっただけに不審に思い、電話に出ることにした。
『初めましてー。あんたが中里大企業の会長、中里雅史だな?
こちら、三ツ木柊人って言いまーす!』
通話越しに少年の声が響いた。
コメント
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おお…中里会長の執念が怖すぎる…「親として当然」って自分に言い聞かせてるのがリアルというか、悪役の正当化あるあるでゾッとしたわ。 でも最後、柊人が直接電話してきて「初めましてー」って名乗るシーン、めっちゃ痺れた🔥 まさか報復される側が先手打ってくるとは…ここからどう動くのか気になりすぎる!次話が待ち远しいわ!
カイガ
1,432
#魔道具職人
こはる
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