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えまーじぇんしー、だ
えまーじぇんしー…emergencyとは緊急事態という意味らしい。グラサンをかけたアメリカがよく焦った時や困った時に「emergencyだ!!」と叫んでいるのでいつの間にか覚えてしまっていた。
そんなことはともかく、日帝もemergencyだった。
「…どうしよう」
日帝の手元には一本の検査薬。それは、確かに日帝の腹に身籠ってる小さな命の存在を教えていた。検査薬を右手に握ったまま、左手ですり、と自身の腹を撫でる。
まだ全然膨らみのない腹。何かの見間違えじゃないかともう一度見た手元には、くっきりと浮き出た二本線。それが何を示しているかなんて、説明書を読み込んだ日帝がわからないはずがなかった。そして、今までの吐き気や眠気も充分な証拠だった。兎にも角にも、相手____ナチスに伝えなければいけない。果たして彼は喜んでくれるだろうか。いや、そんな事を気にするよりも先に病院に行かなければ。必要なものをまとめ家を出た。
「うん、3ヶ月だね」
にこ、と安心させるような優しい笑みを浮かべた医者は、確かにそう言った。その言葉を聞いた瞬間、日帝は今までにないほどの幸福感に包まれた。気を付けないといけないこと、食事、過ごし方や今後について知りたいことは山ほどある。普段、相当大事な会議でしかきちんと話を聞かない日帝が、一言一句聞き逃さないようにしようとする真剣な表情を見たら誰も彼もが驚くだろうか。
「~~も気をつけてね」
医者からの注意事項などを聞き、こくりと頷く。
「じゃあ、次はリスクについて説明するね」
リスク____確かに出産というのは命懸けだ。母体に有り得ないほどの負担がかかる。その負担に耐えきれず母体だけ、もしくは両方命を落とすことは稀にあるのだ。真剣な顔をした医者に渡された説明書に目を通す。確かに命を落とすかもしれないと考えたら不安や恐怖はある。今は戦争が終わり平和と呼べる世界で、別に死に急いでないのだ。しかし、それでも産まないという選択肢は日帝の中には無かった。
「ただいま」
時刻は午後9時。仕事からナチスが帰ってきた。おかえりなさい、と玄関まで出迎えるといつもの様にちゅ、と優しい触れるだけのキスが降った。緊張が少しとけ、肩を下ろす。ナチスのスーツを受け取り、二人でリビングへ向かった。
ナチスも夜ご飯と風呂を終え、二人でまったりしていた。言わなければ。しかし、そう思うと緊張し、指が震えていた。もしかしたら、彼の告白に返事をする時より緊張しているかもしれない。しかし、これは大事なことで、ずっと緊張するからと隠すわけにもいかない。日帝は重々しく口を開いた。
「ナチスさん」
「どうした」
顔が見れず俯いたままだったが、彼の声色からして普段の優しい恋人だった。
「妊娠、したんです」
言ってしまった。ばくばくと心臓の音が鼓膜に鳴り響く。しかし、彼からの返事が一向になく不安になり顔を上げた。
「…」
彼に表情がなかった。あれ、もしかして聞こえなかったのか?と焦ってもう一度言おうとした時、ナチスの手が日帝の肩を掴んだ。
「産むつもりじゃないだろうな」
産むつもりじゃないだろうな これは確かに拒絶の言葉だった。微かに自分が期待してた言葉と全く違う言葉に戸惑った。
「産むな」
はっきり言われた瞬間、日帝はナチスの手を叩き落とし、勢いよく立ち上がった。
「~最低っ!!」
そう叫び家を飛び出した。
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