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玄関の引き戸が開く音とともに、ネグとレイは静かに家へ戻った。
リビングには、すかー、夢魔、だぁが既に待っていた。
誰一人、声をかける様子はなく、ただ重苦しい空気がその場を支配している。
ネグはその空気を切り裂くように、小さく頭を下げた。
「……ごめん。」
しかし当然、すぐさま返ってくるのは鋭い声だった。
すかーが、座ったまま拳を膝に置きながら、目を細めて言い放つ。
「……許すわけねぇだろ。」
夢魔も腕を組んだまま、鋭い視線を送る。
「何回やってんだよ、お前は……もう笑えねぇぞ。」
だぁだけがいつもの柔らかい声で、しかし今だけは低く冷たく言った。
「ネグ……僕、怒ってるからね……?」
ネグは肩をすくめるように小さく息をついた。
「だってさ、床がさ……ツルツルなんだもん……わっ!!」
その瞬間、足元が滑った。
「うわぁぁ!!」
ネグはそのまま、だぁの方へ倒れ込む形で――
だぁがとっさにネグを受け止めるようにして下敷きになり、その上にネグ。
さらに夢魔とすかーは無言のまま、それを見下ろしていた。
だぁは一瞬息を詰め、薄く目を閉じていたが――
すぐに目を開け、下からじっとネグを見上げた。
「…………ネグ?」
その声に、ネグの背中を冷たい汗が伝う。
サーッと、血の気が引く感覚。
何も無ければ、ここで終わり――だが、そんな甘い話ではなかった。
ネグは慌てて立とうとして手をついた。
しかし、その手が――だぁの下半身を押し込む形で触れてしまう。
「……っ……ッ……」
だぁの眉が静かにひそめられ、喉の奥から低い呻きが漏れた。
「ネグ……そこ、やめて。」
だぁの声が今までで一番冷たかった。
ネグは何も言わずに手を退け、マモンが苦笑しながら手を貸してくれた。
「ネグ、大丈夫か。」
「うん。」
その瞬間、マモンの足がツルッ――。
「うわ、やっべ……!」
マモンがバランスを崩し、ネグも巻き添えで――
2人が倒れそうになったところを、夢魔とすかーが咄嗟に反応した。
「すかー!!」「夢魔!!」
2人がそれぞれネグとマモンを庇った。
――が。
夢魔はズボンだけがズルリと下がり、
すかーはまさかの完全モロ出し状態。
しかも夢魔もすかーも、変な姿勢のまま動けず、
立っているマモンとネグは思わず目を逸らしながら、苦笑い。
「いや、これ……」マモンが額に手を当てた。
「……今回は、俺もネグと同じことしたな……。」
ネグも「あはは……」と小さく声を出して笑った。
その瞬間、3人の視線がネグとマモンに向けられる。
ただならぬ怒気がその場を包む。
ネグは「やば……」と小声で呟き、マモンに目線を送った。
マモンが「逃げるか」と低く言い、ネグはこくんと頷いた。
──逃げ出そうとした、その瞬間。
「うっ……ッ!!」
2人の足元にあったすかーと夢魔――
ネグとマモンの蹴りが、見事に2人の下半身を直撃してしまった。
「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
すかーが、顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「ふざけんな……ッ!!今、完全にわざとだろッ!!」
夢魔も、顔を歪めて唇を噛み、地面に手をついて震えていた。
「クソッ……マジで……! 何回目だよ……ッ!」
ネグとマモンは2人の様子を横目に見ながら、
「あはは……」と乾いた笑い声を漏らしつつも、ダッシュで玄関へ向かう。
だが、マモンが途中で足を滑らせ――
「うわっ!!」
ネグが下敷きになる形で転倒。
「う、うわ……ご、ごめん!!」
マモンは咄嗟にネグを見下ろし、顔を赤らめた。
ネグは服が少し乱れたものの、落ち着いた様子で一言。
「……大丈夫。」
そのまま立とうとした瞬間――
背後から「……ッ!」という気配。
ネグが振り返った瞬間、だぁに真っ正面からぶつかってしまった。
「え。」
そのわずか一言の後――
「……ッぐぅぅぅ……ッッ!!」
だぁが呻き声を漏らし、静かに、しかし確実に腰を押さえたまま、
その場に膝をついてうずくまった。
だぁの声は低く、震えていた。
「……ネグ……本気で……怒るよ。」
その様子に、ネグとマモンは目を見合わせた。
マモンが低く、静かに言った。
「ガチで逃げるか。」
ネグは無言でまた頷き――2人はそのまま家を抜け出した。
──外へ出てからしばらくして。
ネグはスマホを取り出し、レイに連絡を入れた。
しばらくして、レイの声が電話越しに聞こえてきた。
『……今度は、2人かよ!』
その呆れた声に、ネグは「うん」とだけ答えた。
レイは小さくため息をついてから、笑い声混じりにこう言った。
『まあ……ほんま、程々にしとけや。』
その言葉にネグは小さく笑っただけで、また何も言わず歩き出した。